超訳『資本論』 (祥伝社新書 111)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396111113

作品紹介・あらすじ

教育を受けた若者が、定職もなく街にあふれ、庶民のなけなしの預金は減る一方。景気が伸びても、給料は上がらず、物価だけ上がった。悲しいかな、これが、資本主義の本当の顔である。『資本論』をいったん遠くに放り投げた日本人は、いま再び拾い上げ、ページを開く必要に迫られている。この書には、剥き出しの資本主義が、驚くべき洞察で描かれている。資本主義の実態は、二一世紀になっても何ら変わっていない。今回、待望の『資本論』第1巻の超訳をお届けする。どうか、大著のエッセンスを味わってほしい。

感想・レビュー・書評

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  • 正直「資本論」は読んだことがなくて、でもどっかの時点で読まねぱならんという気がしていたところ、こういう便利な本があった。
    あの大著を新書1冊にしたという触れ込みであり、内容も資本論の一部抜粋と著者による要約から成り立っていることを思えば、「超訳」というよりは「超約」と言った方がぴったりくる。

    でもおかげで、資本論のストーリーはなんとなくわかった。(ま、ストーリーだけならWikipediaでも読めばもっと簡単なわけだけど)

    しかしなあ。資本論は難しいと言われているけど、なぜ難しいかというと各訳者の生硬な日本語使いにあるのではないか。もっと言えば、みんな芯からマルクスを理解してるんだろうか。こなれた日本語にできないのはそのせいではないのか。
    と、「Sweating System」の訳語として「苦汗制度」という言葉が出て来たところで思った。

    著者は、この本を踏み台として資本論を読もう!と言っているけど、もうわかったからいいや(←ぉぃ)。

  • 著者に「人類への温かい贈り物である」とまで言わせた『資本論』の第1巻(のとくに後半)の超訳。入門的解説書。

  • 思索

  • 『資本論』を読むための要約書。

    <blockquote>『資本論』は資本主義社会で苦労している圧倒的多くの方たちの救いと導きの書である(はしがき)。</blockquote>

    <blockquote>「死んだものがいきているものを支配する」という言葉(フランス語)は、実は『資本論』全体のテーマでもあります。生きているわれわれは、過去の労働である資本にれいじゅうせざるをえないという意味で何度もでてきます。(P.38)</blockquote>

    <blockquote>昔はひとかったが今はいい、という歴史の見方は実は嘘である。
    歴史からならば気づくのですが、近代初め人々はあまり働いては無かった。なおかつ、植えてもなかったと言う事実です。(P.158)</blockquote>

    <blockquote>労働者は、まずは水らの労働力の価値、すなわち賃金部分を消費し、自らの労働力の資本家のために消費し、より多くの剰余労働を生産します。こうして、労働者は自らの労働者としての地位も、同じように再選産するわけです。(P.265)</blockquote>

    <blockquote>資本の本源的蓄積とは何か。それは畢竟、直接生産者――自己労働に基づく私有――のかいたいそのものだということです。
    ここで直接生産者と言う概念が重要です。なぜならこの生産者こそ自由な個性の発展と結びついているからです。しかし、こうした世界はいつか崩壊するしかない。すなわち資本主義的な意味での破壊は、起こるべきして起こる。だからこの収奪が資本主義の全市になると言うのも当然です。(P.335)</blockquote>

  • 資本論の解説本。
    しかし、原本が難しいこともあり、この本も難しい。

    資本主義に対する批判本
    資本主義の残酷さを目の当たりにしどきっとさせられた。

    <メモ>
    全体のテーマ
    死んだものが生きているものを支配する

    使用価値
    素材のもつ他人の欲望を充足するもののこと

    交換価値
    交換されるときに偶然決まる価値
    →根源は人間の労働
    →具体的形態が消える、抽象的な人間労働
    重要なのは有用な労働ではなく、価値を作る労働

    価値形成過程
    価値増殖過程ー剰余価値
    機械・原料は転移された価値のみ
    新たな価値は生まない
    機械などは過去の労働である
    機械=人間より安くないとつかわない

    P.217
    工場労働を強いられる児童は、工場では単純な機械、学校ではいい加減な教育を受けることで、後年工場から追い出されざるを得ない無教養の持ち主になるわけですから。
    今では大学もこうなっています。インターンと称して、本当の教育は労働から生まれると主張し、ちゃっかりと大学の中に労働訓練の場を作り、10年と持たない労働者としてもたない労働者として教育するわけです。

    余剰資金→資本
    ↑     ↓
    資本←余剰資金

  • プケティと併せて読むと面白い。マルクスが解くのは歴史的な側面も踏まえて、個別的な所有から民主的な所有(つまりは資本家による大多数の所有)が加速すれば、いずれ反発が起きることによってお別的な所有に移っていくということ。中身が難解であるため、もう一度本書を読んだ後に実物を読もうと思う。

  • 『資本論』第1巻に何が書いてあるかを、各章各節をとばすことなく順に解説している。『資本論』がどんな書物であるか、そのイメージをつかむのに便利な本である。

  • 『資本論』は現代の労働者の問題を理解するために読み直されるべきという問題意識の下に執筆された『資本論』第1巻のエッセンスを解説した『資本論』入門書。
    原文(日本語訳)も適宜引用しながら、噛み砕いて説明されており、確かに『資本論』はどういうことを言っているのかを掴むには良い本だと感じた。
    しかし、個人的には、『資本論』の根底にある労働価値説に納得がいかなかったので、全体として『資本論』の内容は腑に落ちなかった。洞察として役立つ部分はあるかもしれないが、著者の言うように『資本論』が現代の労働者の問題を理解するよすがになるとはあまり思えなかった。

  • 「超訳」といううたい文句に興味をそそられて手に取った。が、この本は少なくとも超訳ではないなと思った。が、結果的には労少なくマルクスの大著を概観できたような気がしたので良しとする。私はマルクスの理論には与しないと改めて感じた。全てを労働価値として解釈して割り切ってしまう「科学的」姿勢にはいささかの魅力も感じないし、それが真実をとらえているとも思えない。ただ、一旦資本主義ゲームのプレーヤーになってしまえば、取り付かれたように利潤を追求しなければすまなくなる性質はよく言い表されている。それは何も資本主義のメカニズムというよりも、いまだにこの世の中は腕力が支配されているという事実を表しているだけだとも思った。

  • マルクス『資本論』第1巻の解説書です。タイトルに「超訳」とありますが、『資本論』の翻訳そのものではなく、各章ごとの内容を簡潔に要約した本です。

    章ごとに内容が分かれてしまっており、『資本論』という書物全体の中でそれぞれの議論がどのような位置を占めているのかということが、少し分かりにくくなっているように感じました。その意味では、まったくの初心者向けの入門書としては少し不親切ではないかという気もしますが、各章ごとの内容が簡潔に説明されているという点では、優れた解説書だと思います。

  • アタマを良くする努力をしることは、より良く生きること。その想いを強くした。
    私は会社で組合員として働いている労働者である。もちろん労働組合に属しており、その恩恵を受けている。しかし、何だかよく分からない、面倒臭いなどとあまり関わってこなかったし、考えたりもしていなかった。
    世の中に構造問題と時に騒がれその解決を叫ぶ人がいるが、そもそも自分も資本主義社会という装置の中に歯車として組み込まれており、その全体の構造に思いをはせることなく流されてきた。その思いを強くした。
    不正、表に出ずに水面下で勝手に決めることは言うにおよばず、公益を無視した不作為にも目を向け声を出すべきだと思った。
    先日の選挙である政党が大勝すること、明らかに依存症者を増やし、考える能力を減らす、ソーシャル・ゲームやギャンブリング、そして、考えるチカラを持たず、コンピュータの融通が利かない部分を埋めるだけの大学生の生産。
    身分制度という不条理よりは多少マシとは言え、構図事態は変わっていないということは明らかである。多少なりともそれに抗するチカラを我々は持つべきであると思った。

  • YouTubeに投稿して年間一億?なんてことになってる現在、資本家、労働者なんて言ってもリアリティーがない。でも、製品が存在し購入して使って暮らしている以上、資本主義は成立している。さて、どうやったら資本家になれるんだろか?本書で分かったのは、労働者は搾取され、労働対価と製品価値はイコールでは無いことだった。

  • 080731

  • わかりやすいし、各章ごと一つ一つを要約していく形のおかげで資本論の構成や章の順序もわかってよかった。マルクスの先見性と分析力にただただ驚嘆。著者も述べていたがやはり資本論を少しずつ読まねばならぬと感じた。

  • 読み助2012年5月8日(火)を参照のこと。 http://yomisuke.tea-nifty.com/yomisuke/2012/05/post-4a78.html

  • 非常に簡潔にわかりやすく、全体の構成がわかるように解説されている。

  • これから、原点である資本論を読もうという人にとっては、よき助けになる本だとは思う。しかしながら、資本論のエッセンスを知りたいだけであれば、池上彰氏の「高校生からわかる「資本論」」の方がお勧めです。

    本書は、資本論の小節ごとにエッセンスと、それを理解するための必要な語句の説明がありますが、本の内容のエッセンスではなく、あくまで資本論を読むためのサポートという趣旨が強いので、わかりにくいです。

    ちょっとこの本の編集企画のままで、2巻、3巻を読むことは私は控えようと思いました。

  • 一回で理解するのは難しい。貨幣や商品など、マルクス経済的な概念が理解できていないと特に。でも何回でもトライしたい!!

  • ■全体として何に関する本か
     マルクスの「資本論」を現代の言葉に置き換えて分かりやすく解説した本である。資本論の中でも特に重要な第1巻の後半部分に重点を絞って解説している。難解と言われる資本論の考え方を現代の問題を例に取り上げて解説しており、理解しやすい。


    ■何がどのように詳しく述べられているか
     「商品と貨幣」「剰余価値と搾取」の2つのテーマについて詳しく説明されている。
     資本主義社会では商品W(Ware)と貨幣G(Gold)の流通が当たり前のように行われているが、我々はこのことに何の疑問も抱かない。しかし、この商品Wと貨幣Gの存在があるからこそ資本主義社会が自然と成り立つのだとマルクスは言う。
     本来、貨幣Gは商品Wと商品W’の交換のために作られたものであり、
    「商品W→貨幣G→商品W’」
    の交換関係が成り立つはずであるが、資本主義社会では
    「貨幣G→商品W→貨幣G’」
    の関係になっている。つまり、商品Wと商品W’を交換するために貨幣Gが存在するのではなく、貨幣Gを商品Wに交換して、そこから新たな貨幣G’を得るというのが資本主義社会の構造である。(資本を機材などに投資して、新たな利益を得ようとすることをいう。)
     これは結局、貨幣Gを新たな貨幣G’に交換していることになり、このGとG’が同じ価値であれば交換する者は誰もいない。よって得られる貨幣G’の価値は元の貨幣Gの価値よりも必ず高くならねばならない(G’>G)。
     この差分の余剰価値は資本家が労働者から搾取することで得られるのであり、これが資本主義社会の構造で、資本家が労働者から搾取するのは必然だという過激な考え方が本書には書かれている。


    ■その本は全体として真実か、どんな意義があるのか
     我々労働者は資本家から気がつかない間に搾取されているのだと警鐘を鳴らしているのが資本論であるが、これは今の時代に必ずしも当てはまるとは思わない。
     資本論とは経済論というよりも、資本家は敵だとする一種の「思想」だと本書を読んでいて感じる。それでも、一昔前の労働運動が起きる以前の過酷な労働条件を考えれば、それらの非人道的な搾取や酷使は許されるわけもなく、労働運動を活性化させ労働者の権利を考えるきっかけを与えた本として、マルクスの資本論が重要な一冊であることは間違いない。


    ■一番面白かったのはどこか、なぜ自分は面白かったのか
     本書は、現代で問題になっているワーキングプアや失業者、フリーターの人々を励ますための本だと著者自身が言っているが、私はこの本を読んでいてあまり共感はできなかった。
     豊かな者は貧しい者が見えないと著者は言う。たしかにその通りで、資本家は過酷な労働条件で搾取されている労働者の気持ちを完全には理解できないであろう。
     それと同じで、私が今いる労働環境は世間一般を見ても非常に恵まれており、むしろ恵まれすぎているというのが私の正直な考えである。今の職場で資本家に搾取されていると感じる者は周りを見渡しても誰一人いないのではないかと思う。
     しかし、世の中にはまだまだ問題は多く存在している。そういった世の中の問題が見えないようでは駄目だと本書を読んで感じる。今自分がいる環境だけではなく、常に広い視野を持って世の中を見るようにしていきたい。
     資本論は資本主義社会を強く否定する内容であるが、私は、資本主義やビジネスの新たな可能性に魅力を感じている。

  • 難しかった。。。。 古典を読み返そうとしたが、半分も理解できたかどうか甚だ疑問。 説明はAmazonで、、

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著者プロフィール

的場昭弘(まとば・あきひろ)1952年宮崎県生まれ。マルクス学研究者。1984年、慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。一橋大学社会科学古典資料センター助手、東京造形大学助教授を経て現在、神奈川大学教授。マルクス学の提唱者。マルクスの時代を再現し、マルクス理論の真の意味を問い続ける。原資料を使って書いた作品『トリーアの社会史』(未來社、1986年)、『パリの中のマルクス』(御茶の水書房、1995年)、『フランスの中のドイツ人』(御茶の水書房、1995年)をはじめとして、研究書から啓蒙書などさまざまな書物がある。本書には、著者による現在までのマルクス学の成果がすべて込められている。

「2018年 『新装版 新訳 共産党宣言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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