創造性とは何か(祥伝社新書213)

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  • / ISBN・EAN: 9784396112134

感想・レビュー・書評

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  • 川喜田二郎と言えばKJ法。KJ法といえば川喜田二郎という発想が出てきてもおかしくはないだろう(KJ =KawakitaJiro)。

    そのKJ氏が書く「創造性とは何か?」は創造性を生み出すためとか、KJ法のやり方、アイデアについて、の本かと思いきやもうすこし土俵の大きなお話であった。

    創造性とはどのような性質のもので、それが人間という存在とどんな関係があるのか、あるいは社会と創造性はどのような関係であるべきか、というようなお話。

    プロジェクトや組織についてのお話(移動大学)もあり、そのあたりも興味深かったが、発想法を求めている人に得るところは少ないだろう一冊。

    この本の内容に、現代のソーシャルというものを加えて再構築してみるのも面白そうな試みである¥、と思う。

  • 言葉を大事にするひとだね。

  • 主体性の見解が自分の考えていたものと違った
    創造性と保守性は対立しつつ循環する
    一筋縄でいかないところに苛立ちを覚えるがそれがないとないでそれはまたつまらなくなるのかなあ

  • 創造的であることは常識から離れていること。
    既存の仕事や考えを効率化していくシステム化していくのは保守。保守の中にあたらしいアイディアが生まれ,壊していく。それがまた保守化していく。繰り返し。長いスパンで物事を見れば,対立矛盾する物や概念も調和していることに気づく。

    「絶対的な受け身から真の主体性が生まれる」
    「辛いことは嫌なこと,楽なことは好きで楽しいことというくだらない常識」

    ひと仕事をする=創造的な仕事
    自発的に問題解決をする,既存の手本がない,それをする切実さ+継続的な実践における繰り返し

  • KJ法は知っていたけど、それを生み出した川喜田二郎氏がどんなことをやって来たか知らなかったので、そこが一番興味深かった。

    創造性と保守性(伝統)は対立しつつ循環する。創造性とは問題解決能力のことである。

  • 創造とはどのようなことか、創造のプロセスはどのようなものか、創造の秘訣などについて、文献から学んでください。特に、物語をつくるときに、先が見えないなかで時間展開を追いながら書いて/描いていくという「つくり方」について意識的に読んでみてください。

  • 311から二年目の弥生の朔におすすめする一冊は、KJ法の考案者と
    して著名な川喜田二郎氏の『創造性とは何か』です。

    KJ法は、ビジネスの現場でも広く取り入れられていますが、その考
    案者である川喜田二郎氏のことはそれほど知られていないかもしれ
    ません。文化人類学、人文地理学が専門ですが、学問の領域を超え
    た多彩な活動をされた方です。

    本書は、1993年、著者73歳の時の著作『創造と伝統』の第一章を
    新書化したものです。400頁近くの大著の一部なので、これから!
    というところで終わってしまう物足りなさはありますが、それでも
    著者の独創的な思想世界を知るには充分な内容の一冊です。

    著者の思想の特徴は、その強い問題解決志向にあります。「創造と
    は問題解決なり」「創造性とはひと仕事やってのける能力を持つこ
    と」という定義は、非常にシンプルですが、説得力に富みます。

    問題解決のためには、解決すべき問題がなければいけませんが、そ
    れは「渾沌」=「何が問題で、何が悩みの種かすら漠然としていて
    掴めない」状態としてやってくると言います。

    このような渾沌の一部として生きる中で、主体としての関心や意識
    が芽生えてくる。関心が芽生えると出会いがあり、出会いの中で矛
    盾葛藤が起きてくる。この矛盾葛藤を何とかしなければともがく中
    で、うまく事が運べば解決に至るのですが、解決した暁に振り返っ
    てみると、それは本来そうあるべきところに納まっているようにみ
    える(この状態を本来的に自然という意味で「本然」と名付けます)。
    つまり、「渾沌→矛盾葛藤→本然」というのが創造における問題解
    決のプロセスであり、人の内面世界が辿る道だと言うのです。

    このような創造のプロセスは、客体(創造物)を生むと同時に、主
    体(自我)を脱皮変容させます。同時に、創造が行われた場所をも
    変えます。創造の累積した場所は、その人にとって特別な存在、ふ
    るさと的存在になるのです。

    創造を通じて、自らを変容させ、自らの生きる場所をふるさと化す
    る。創造とは、自分が変容するだけでなく、自分が生きる場所が自
    分にとって懐かしい場所になるプロセスなのです。

    これは凄いことですよね。創造的である限り、人は随所をふるさと
    にしながら生きることができるということだからです。幸せに生き
    るための秘訣がここにはあると思います。

    そして、創造的に生きるために著者が重視するのが、「没我」つま
    り「われを忘れて」という姿勢と、「世界を悩む」という態度です。
    これにも唸らされました。

    創造の秘密やプロセスについて書かれた本は多いですが、生き方の
    問題として創造性を捉えようとする点で、本書は希有な一冊です。
    壮大で爽快な気分になる一冊ですので、是非、読んでみてください。

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    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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    私は、人間には「世界を悩む」という精神が必要だと思っている。

    創造とは何かを、観念的でなくとらえれば、それは「ひと仕事やっ
    てのける」ということで、創造性とは「ひと仕事やってのける能力
    を持つこと」であると言える。

    保守性と創造性は、人間が生きているということに、必然的に随伴
    する根本的な原理と言ってよいものである。

    生きるとはどういうことかというと、保守と創造の対立と循環関係
    によって成り立っていることがわかる。

    創造的な行為であるための三ケ条
    第一条 自発性
    第二条 モデルのなさ
    第三条 切実性

    創造というものは、本来、実践を離れてはあり得ない。

    人間が自分の知恵や技巧に自信を持ち過ぎて、何もかも計画・計算
    ずくで事を為そうとする、そういうビジョンというものは、たいし
    たことはないので、そういう「計らい」の外に出て行く何かこそ、
    現代にもっとも大事なことではないかということである。

    創造的行為というものは、自分でも犯すことのできない、何か畏敬
    の念を抱かざるをえないようなものを、そこから生まれ出たものに
    対してさえ感じるものであって、同時に、深い愛を抱くものである、
    と私は思うのである。
    言葉を換えれば、自分が生み出したものとの間に強い連帯感を抱く
    ものであり、それによって自分自身が変わっていくのを感ずるので
    ある。

    「天命を感じる」というのは、人が受け身ではなく、もっと積極的
    に状況全体への価値の創造への寄与という方向で考え行動していっ
    たときに起こるものだと思う。だから、天命を感じている人という
    のは必ず、自分を取り巻いている全体状況、これをたいへん感受性
    豊かに受けとめている人だということになる。

    主体性については、よく人に強いられてやるのは主体的ではないと
    言われるが、それは一般論であって、本当は全体状況が自分にやれ
    と迫るから、やらざるをえないというほうが、じつは真に主体的だ
    と私は思うのである。

    人は何か価値を生み出す「ひと仕事」によって自分を変容させてい
    くべきで、それを何らの「ひと仕事」もせずに悟り澄まして、自ら
    を変えていけると思っていることは、結局は逃げていることだと思
    う。

    「ふるさと」とは、子どもから大人になる途中で、子どもながらに
    全力傾注で創造的行為を行い、それをいくつか達成した、そういう
    達成経験が累積した場所だから、「ふるさと」になったということ
    である。

    人間というものは、自分が最も創造的に行動したそこ――そこで何
    かビューティフルなことを達成したときには、そこが第二のふるさ
    とになるということである。さらに同じような達成経験があれば、
    そこも第三のふるさになる。(…)クリエイティブな人生を送るな
    らば、ふるさとは何カ所できても、ちっとも不思議はないというこ
    とである。

    創造的行為は、まずその対象となるもの、つまり「客体」を創造す
    るが、同時に、その創造を行うことによって自らをも脱皮変容させ
    る。つまり「主体」も創造されるのであって、一方的に対象を作り
    出すだけというのは、本当の創造的行為ではないのである。

    しかも、主体と客体が創造されるだけではなく、その創造が行われ
    た「場」も、また新たな価値を付加されて生み出されるのである。
    したがって、一つの創造的行為が達成された場合、そこには「主体」
    と「客体」と「場」の三つが生み出されるということで、その「場」
    というものが、第二の、そして第三の「ふるさと」となるというこ
    とである。

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    ●[2]編集後記

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    今週はいよいよ引っ越しです。6年ぶりの引っ越しのため、あるわ
    あるわ、とにかく荷物の量が半端ではないです。

    今度の家は収納が少ないため、この際だからと、思いっきり荷物を
    整理しています。本だけでも千冊以上を処分しました。タンスの底
    に眠っていた服、二度と使わないだろうけれど思い出や記念のため
    にとってきたもの、形見の品や過去の書類等々…。あれもこれも、
    ばっさばさと捨てています。

    本当に色んなものを背負って生きてきたんだなあと痛感します。勿
    論、過去は大切にしたいけれど、それは心の中にしまっておいて、
    できるだけ身軽になろうじゃないかと思ったら、捨てるのにも躊躇
    がなくなりました。むしろ、過去へのとらわれから自分がどんどん
    自由になるようで、荷物がなくなるたび心が軽くなるようです。

    捨てるものも多いですが、使えそうなものは家の前に置いておくと
    誰かが持っていってくれます。結構な量をそうやってさばきました。
    ゴミにすると罪悪感がありますが、誰かがどこかで使ってくれると
    思うと、物達に新しい命を与えることができたとほっとします。

    過去を捨ててしまった一抹の寂しさはありますが、それ以上に未来
    に向けて希望が湧いてくるのを実感しています。とっても気持ちよ
    いので、引っ越し予定のない方も、断捨離、いかがですか?

  • 人は城人は石垣人は堀情けは味方仇【あだ】は敵なり
      武田信玄

     「創造性とは問題解決の能力である」と説いたのは、「KJ法」創始者の川喜田二郎。自身のイニシャルでもあるKJ法とは、カードを使ってデータをまとめる問題解決技法である。先入観を排して状況を構造化できる、体系化された方法という。
     1920年、三重県に生まれた川喜田は、みずからを「戦中派」と称していた。京大卒業後に陸軍歩兵となり、軍隊経験のなかでチームワークの基本を体得した。それは、私心を離れた「パブリック・マインド」こそ、他人を動かす力になるということだった。
     他方、登山を通して、危険防止はチームより個人の問題であることを痛感。そして、問題解決には、チームワークで処理できるものと、個人で処理するものの二つがあるという認識のもと、KJ法を考案したのだった。
     その後、69年から20年近く、KJ法とフィールドワークを通して問題解決法を学ぶ「移動大学」を開催。2週間限定で開催された移動大学では、創造的行為に燃えあがる強力なチームが生まれたという。それを例えたのが、掲出歌。江戸初期の軍学書「甲陽軍鑑」に、武田信玄の言葉として紹介されたものである。
     勝敗を決めるのは、堅固な城ではなく、「人」の力。人々の個性や才能を把握し、それを十分に発揮させるようなチーム作りこそ、問題解決の糸口となるのだろう。「戦中派」の発想に学ぶところは多い。
     川喜田は2009年没。享年89。

    (2012年2月5日掲載)

  • 梅棹忠夫氏の「知的生産の技術」の中に著者(川喜田二郎氏)の紹介(KJ法等)について書かれていたため、それに触発され、図書館から借りてきて読んだ本。
    正直、抽象的すぎて今の自分にはよく分からないというのが実感。知りたかったKJ法自体についてはあまり書かれていない。
    ゴルバチョフ氏のことを21世紀の偉人と書いていたが、自分の無知さでその良さがあまり分からない。もっと、歴史を勉強しないといけないかな。
    つい最近(9月4日)、たまたま養老孟司氏の講演を聴く機会に恵まれたが、戦争を体験され、その前後で自分の生き方を真剣に考えた方の意見・主張は、賛否両論あるのだろうけど、なにか力強い気がする(終戦時:養老氏は7歳くらい、川喜田氏は25歳)。これは自身の経験からくるものだから、考え方にブレがない、芯がしっかりしている、ということなのだろう。現代では、ものを書く人、主張をする人は終戦時と比較にならないくらい増えているはずだが、皆、コピーアンドペーストのごとく、他人の考えを、さも自分の考えのように扱う人が多い気がする。
    「知的生産の技術」において、梅棹氏は読後の書評には自分が面白いと思ったり、そこで触発されてでたアイデアだけを書く、とあった。なぜなら、本の紹介のようなことを書くのでは、その本に書いてあるのだから、また、そのページをめくればいい、ということらしい。ごもっともである。本を読んで理解することも大事だが、それを触媒にしていかに自分の考えをふくらませていけるか(創造していけるか)が大事な気がする。
    本書の中で一番共感できたのは、デカルトとの違い(90ページ~104ページ)あたりだった。「われ思う故にわれ有り」の言葉を残したデカルトの考え方の出発点は「我」であり、我という自我意識=「心」がないものはすべて「物」に分ける「物心二元論」を、最初に提唱したとされている(本書から引用)。物心二元論の出発点が「我」に対し、著者は「はじめに混沌ありき」という認識らしい。最近NHKの番組「100分で分かる名著」でパスカルを取り扱っていた。「人間は考える葦である」といったパスカルとの思想とデカルトの思想は相反するものであり、現代社会のように混沌とした問題を解決するには、デカルト的思想(川喜田氏曰く世界外的認識)には限界があり、パスカルの考え方が見直されるべきだ、みたいなことをいっていた。川喜田氏が取り組んだ世界内的認識とパスカルの思想がどう繋がっているのか、はたして関連性はないのか等じっくりと考えるとおもしろいのかもしれない(なかなか時間がないけど)。
    最後に著者が実践した「移動大学」についても調べないと本書の理解は難しそうな気がした。

  • P74「創造性とは問題解決の能力である」
    ・保守と創造は非合理的であるが、循環するものであり、絶対矛盾的自己同一を実現する。ブレイクスルーは一見循環せず、破壊に見えるが、径が大きいことを理解すべきである。
    →保守は組織の中で必然的に大きくなりやすい。「自発性」「モデルのなさ」「切実性」ろいう3点を質高く備えた課題を解決する仕事は創造性が高くなるという論に共感する。組織が創造性を保つには、失敗を恐れずに新しいことをやりたくなる環境が必要。
    P47「チームワークの基礎はパブリックマインド」
    ・自分の立場を考えるご都合主義や保身ではなく、私心を離れた真実に邁進しているものにはついていける。
    →論の是非だけではないということだし、その気持ちをいかに伝えるかも重要。せめてサブリーダーとしての自分がそうありたいと感じる。
    P69「課題を明確にして任せてくれる人」がリーダー
    ・箸の上げ下ろしまで監督者面し、作業のやり方まで立ち入って干渉し、課題をはっきり伝えないうえに罵るだけではリーダーについていけない。
    →課題を示し、任せればモチベーションは上がる。その上で、いかにチームのメンバーの質を高めるか。思考させるだけでは人は育たないのでは。既存モデルのない活動の指針をある程度一緒に考えた上で、思考+試行させることが重要ではないか。
    P102「生命燃ゆ」
    ・エネルギーが無さ過ぎたら「燃える」状態はこないかもしれないが、エネルギーがあったら「燃える」のかといったらそんなことはない
    →バイタリティとか、活力とか、うまい言葉を探しているがぴったりくるものがなかなかない。子どものうちにいかにこの「燃える」状態を体験させたり、大人になっても「燃える」ことが他のことにも転移できるようにできるかが、教育や総合が目指す一つの事柄だと思う。大人のチームでもこの状態をいかに多くのメンバーが到達したり維持したりするかが重要か。
    全体を考え、思考したり試行させたりするチームやリーダーが使命感を持てる新しいことをやってみたいと思える環境を整えることは一つの要因に成り得るか。

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著者プロフィール

1920年(大正9年),三重県生まれ.1943年,京都大学文学部地理学科卒業.大阪市立大学助教授,中部大学教授などを経て,KJ法本部川喜田研究所理事長,元社団法人日本ネパール協会会長,ヒマラヤ保全協会会長.理学博士.昭和53年度秩父宮記念学術賞,マグサイサイ賞,経営技術開発賞,福岡アジア文化賞受賞.著書に『続・発想法』『野外科学の方法』『KJ法』ほか

「2019年 『まんがでわかる 発想法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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