日本の鯨食文化――世界に誇るべき“究極の創意工夫”(祥伝社新書233)

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396112332

作品紹介・あらすじ

学校給食から「クジラの竜田揚げ」が消えて久しい。鯨肉の供給量は、反捕鯨勢力の圧力で激減し、すっかり高嶺の花となった。一度も食べたことがないという日本人が増えている。私たちは古来、食べることを前提にクジラを捕ってきた。皮も内臓も軟骨も、一頭を余すところなく食べる。江戸時代に、八〇種以上の部位を解説した料理本が書かれていたほどだ。なにより愛着と敬意をもってクジラに接してきた。こんな優れた食肉文化は、世界を見渡しても他にないだろう。固有の食文化こそが、民族性の基本である-。途絶えさせることなく、後世に伝えなくてはならない。

感想・レビュー・書評

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  • この本によると、今鯨の肉を食べたことのない世代がいる。という記述には衝撃を隠せませんでした。「固有の食文化こそが、民族性の基本である―。」作者のこの主張には僕も激しく同意します。

    僕も鯨の肉は竜田揚げや鯨のベーコンや刺身などで、数えるほどしか食したことはございませんが、滋味あふれる味だったことを覚えています。この本は農林水産省出身の元官僚で、現在では大学で教鞭をとっていらしている方がお書きになったものです。鯨を取る漁のやり方に始まって、江戸時代に編纂されたというなんと 八〇種以上の部位を解説した料理本の紹介や、現在の鯨漁やその生態系に関する話が懇切丁寧に記されてあって、鯨食を推進する一人としては非常に楽しく読むことができました。

    そのなかで僕もこの本を読んで知ったのですが、調査捕鯨で取った鯨が何を食べているかということについて書かれた箇所で、彼らがスケトウダラやスルメイカ。カタクチイワシなどをそれこそ人間の3~5倍もの海洋資源を消費するということ。そして、その影響がもろに出たのは北海道釧路市をはじめとする漁で栄えた港町で、1980年代には120万トンもの水揚げ量を誇りながら、2000年以降の現在ではその10分の1である12万トンほどまでに落ち込んでいるという記述を見て、適切に海洋資源を保つためにはある程度商業的に捕鯨をせにゃあいかんだろうな、という思いを深めた所存でありました。

    そして、この本を読んでいてもっともショックだったことは札幌はすすきのにある有名な鯨料理店である「おばんざい くじら亭」という鯨料理専門の店が諸般の事情により、閉店すると女将から
    筆者のほうに連絡が行ったということでした。僕はこの記述を読んで、一瞬、目の前が真っ暗になりました。この店は10年以上前にテレビで特集されたのを見たのがきっかけで、いつか行ってみたいなと思っていた店だったので、これを書いている今でも、ものすごくショックです。

    鯨を食することは日本の食文化です。鯨を一匹捨てるところなく利用しつくして来たのは先人の知恵と技術の結晶であることが改めてよくわかりました。この本を見て土佐のハチキン女でおなじみの漫画家・西原理恵子さんが好きな男は?という質問に『日ごろはぐうたらでも鯨が沖で発見されたときにはいの一番に船に乗って漁に出て鯨に銛を突き立てる男がいい』と言っていたのがよくわかるような気がいたしました。

  • ふむ

  • 捕鯨に関するSyntopicリーディングの7冊中の一冊。
    鯨の食文化に注目した本。著者は国は鯨食文化を守る気がないと憤慨している。例えば2010年前後に起きた欧米の捕鯨反対運動からの襲撃により調査捕鯨から撤退し、国際委員会で捕鯨数を減らす提案を出したことなど。他の本には載っていない新しい記事。政府は捕鯨に対してどういう見方なのか、自民党になったらまた変わるかもしれないが、参考になる。
    しかしながら著者は日本の鯨食文化は素晴らしいものであると、熱烈に紹介。

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    鯨食文化というアプローチに魅かれて。

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著者プロフィール

農学博士。独立行政法人水産総合研究センター理事。
東北大学卒。77年農林省入省。米国エール大学院卒。農学博士(東京大学)。
IWC日本政府代表代理、FAO水産委員会議長、水産庁漁場資源課長等を経て、05年より現職。
[主要著書]
さかなはいつまで食べられる

「2007年 『さかなはいつまで食べられる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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