韓国が漢字を復活できない理由(祥伝社新書282)

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著者 : 豊田有恒
  • 祥伝社 (2012年7月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396112820

韓国が漢字を復活できない理由(祥伝社新書282)の感想・レビュー・書評

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  •  韓国の歴史・文化に造詣が深く、日韓ワールドカップの遙か前から一貫して韓国を批判してきた著者の最新刊。
    (念のために言っておくと、著者の本業はSF小説家)
     本書では、韓国が漢字を廃止した理由と、その結果どのようなことが起こったかをふんだんに事例を挙げて説明している。

     実は、本書を読む際は、高島俊男『漢字と日本人』を読んでおくと理解が全然違うので、先に同書を読まれることを強くオススメする。

     明治維新の頃、日本は西洋から入ってきた学問の用語を片っ端から漢語に置き換えて翻訳していった。「社会」「恋愛」「自由」など、我々が当然のように使っている漢字の熟語は、そのほとんどが明治期に作られたものなのである。
     さて、日韓併合(元々は「日韓合邦」と言っていたのがこうなり、最近では「韓国併合」というようになっている。日本の侵略色を強めた言い換えがなされ続けている。これは余談)により、日本語の強制がなされた…のではなく、それまで諺文(オンムン)と蔑まれてきたハングルと漢字の「漢字ハングル交じり文」が推奨された。このとき、大量の日本産漢語が朝鮮半島に輸出されたわけである。ちなみに、明治期に日本で作られた漢字の熟語(術語)は、中国にも輸出されている。漢字文化圏が母語で西洋の学問を学べるのは、明治期の日本人(福沢諭吉や西周ら)のお陰である。別にそれを殊更有り難がれというつもりはないが、歴史的事実を知った上で、先人の努力にしかるべき経緯を払うことは人として大事なことだと私は思う。
     が、戦後の韓国は、漢字使用は日帝の悪しき残滓として、漢字廃止に踏み切ってしまった。日本産漢語の内、音読みしていたものはそのまま韓国語の読みを残してハングル表記に、訓読みしていたものについてはわざわざ韓国語の音読みに直してハングル表記にしたわけである。

     で、どうなったか。
     実は日本語でも漢字廃止の勢力は根強くあった(カナモジカイなど)。なお、著者はこの点、日本の状況をかなり楽天的に捉えていたが、決してそんなことはなかったのである(高島・前掲書参照)。
     だが、明治の先人は、西洋概念を漢字に置き換える際に表意文字としての機能を優先したため、大量の同音異義語が発生してしまった。例えば、「コウセイ」と言われた時に、それは文章を「構成」するのか「校正」するのか、不良少年を「更生」するのか、など。だから、熟語としての漢字を学んでいなければ言葉の意味がわからなくなってしまった。日本が漢字を廃止するのに躊躇した一つの原因はこれであろうと思われる。

     日本では新漢字と新仮名遣いという暴挙が戦後のどさくさに行われてしまったが、逆に言えばそれだけで済んだとも言える。
     が、韓国では漢字を廃止してしまったせいで、大量の同音異義語を抱えることとなってしまった。
     耳で聞いて判別できないというのは、日常生活では大変に不便である。日本では漢字の熟語の知識があれば文脈で判断できるが、韓国では漢字まで廃止してしまったので、それに頼ることもできない。
     そこで、一部の言葉は韓国語の固有語(日本で言う「やまとことば」)で言い直すこととなった。ただ、集団を「ひとのあつまり」などという言葉を作って言い直すので、どうしても冗長になる。
     が、実はこれ、すでに本居宣長がやっているのである。漢字によって日本語や日本文化・価値観が中国文化に影響を受けているとした本居宣長が「からごころ」として漢字を排し、やまとことばだけで文章をしたためたところ、読みにくい上に言いたいことが言えなくなって挫折した、という話がある(長谷川三千子『からごころ』参照)。
     これは仕方の無いことで、やまとことば段階の日本語および日本人の観念には抽象概念を表すことばがなかった。それは当時の日本人がそこまでの段階に達していなかったということであるが、近隣に文明の進んだ大国があると、それが輸入される形で補われてしまい、やまとことばで抽象概念を作る芽は絶たれてしまった。
     韓国も事情は同じで、日本から西洋学問の術語漢語が輸入されたため、同じことになった。それはもうそういうものとして諦めればいいのに、日本に対する被害者意識にくわえ、小中華思想(中国が文化の父で、中国により近い韓国が兄、日本は弟。弟の日本から兄たる韓国に何かを教授するなどあってはならない!という甚だめんどくさい思想。詳しくは古田博司さんの著作参照のこと)から、漢字を排することになったわけである。

     話を戻すと、漢語を廃止したことで、韓国語はそれまでの韓国語と断絶してしまった。それは新字・新かなを用いた日本の比ではない。日本人はまだ高校の古文の参考書を買ってくるなどして勉強すればまだ古文が読めるが、韓国人はそれ用の勉強をしない限り先人と対話することが非常に困難となったのである。
     ま、韓国では、自分達に不都合な(歴史的)事実は見ないことにしたり、歴史はより好ましいものに作り替える(!)という価値観があるそうだから(おそらく半島という地政学的な位置から歴史的に異民族の侵略を受け続けた屈辱から生まれたものであろう。ネットで散々揶揄されている「韓国発祥(コリエイト)」もその文脈で発生している現象だと個人的には思っている)、それでもいいのかもしれないが…って、やっぱだめでしょ(笑)。本書では韓国人留学生が自国の歴史書『三国史記』を知らなかったのに驚いたとあったが、さもありなん、なのかもしれない。

     長々と書いてきたが、そういうわけで本書は「もし日本が漢字仮名交じり文を廃止していたら…」を見る上で非常に参考になる(というより他山の石とすべき)話がてんこ盛りである。が、本書はメインテーマを「韓国は日本語発祥の漢字を使ってることを隠すなよ」という点に重点が置かれているため、これだけだと全体的な問題が見えてきにくい。なので、高島俊男『漢字と日本人』など日本語と漢字に関する本と一緒に読むことを強くオススメする。

    (なお、著者は本書の中で、ハングルが「おんな文字」などと蔑まれて用いられてこなかったことを盛んに指摘するが、程度の差はあれ、日本でもかな文字は長らく下に見られていた事実は事実として認識しておきたい。この点、橋本治『これで古文がよくわかる』が非常に参考になる。平安時代の公文書(男文字)は日本でも漢文だった。
     ただ、日本がヘンテコで面白いなぁと思うのは、紀貫之がかな文字を使いたいあまりに日本初のネカマとなって『土佐日記』をしたためた、というところだろうw。私はこういうHentai、Cool Japanなところに愛国心をかき立てられてならないのだが…おかしいですか?)

  • 韓国語を勉強していると、文法だけでなく、単語も日本語にそっくりなものが多いことに気づく。それが何故なのかこの本を読んでよく分かった。漢字語は中国由来かと思っていたが、何故か日本語にそっくり。中国由来ではなく、日本由来だったんですね。

  • 『韓国が漢字を復活できない理由』 韓国人の欠点は「歴史資料や基礎研究、分析や論理的思考ができない」
    - 株式日記と経済展望
    URL : http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/137c3318c0a0b154eed2d6bfdb013b96?fm=rss

  • 〈韓国はもともと漢字の国だった。中国への従属関係 から公文書はすべて漢文であり、世宗(セジョン)王(ウン)が創製したハングルは蔑(さげす)まれ、知識階級が使うことはなかった。日本統治時代、日本製の漢語が大量に流入する。韓国で使われた漢字熟語の七、八割は和製漢語なのである〉 (「まえがき」より) なぜ、韓国は、漢字を廃止したのか。その後、復活論がわき起こるたびに潰されてきたのはなぜか。韓国研究 で名高い著者が、その深い謎に迫ります。

    韓国では時代によって漢字を教えたり教えなかったりで、漢字世代がまだらのように存在しています。韓国には、漢字派とハングル派の対立が根深くあるのです。 漢字を使用したほうが便利に決まっているのに、なぜ事はそう簡単に運ばないのでしょうか。 漢字の問題を通して、韓国の行きすぎたナショナリズムを考えます。

  • 韓国語を学ばないネトウヨが喜びそうな本。
    ただ実際よりも極端な例が多い。
    37ページに欧米の外来語を避ける傾向にあるというが、そんなことはない。使いまくっているので、中国式・日本式の漢語を撲滅しようとする運動とは比較できない。
    美容院などで、新宿や原宿などの地名を持つ店も多い。うどん、おでん、これらはなくならないだろう。
    目くじらを立てているのは、国語審議会の人たちだけだろう。それは日本の乱れを嘆く人がいるのと同じ。丸谷才一の追随者の韓国版みたいなものである。
    45ページ、去来先(コレソン)の意味が分からないという。去来(거래)は、韓国では取引を意味する。取引先を去来先とした。だから韓国製日本語だったのだろう。それさえ撲滅しようとしている。たいへんな作業である。
    88-89ページ。ハングルで○、□はあるが、△はないという。確かにそうだが、素人としては、스(ス)は△に近いというのを言ってほしいのである。
    102ページ。面白い発言。李氏朝の後、高句麗の王建一族は発見しだい皆殺し。個人的にはこの指摘、大統領選、地方選における前政権の批判に通じるので面白い。

    つらつらと読みながら、翻訳でもいいから、韓国の漢字廃止論の本格的な研究書が出てもいいなと思った。日本の国語審議委員会と似たような、奇天烈な話も出てきて、さぞ楽しい本になるだろう。

  • 長くても1/4程度の分量が適当な話をふくらませていると感じる。とくに意外な事実は出てこなかった。

  •  韓国は日本と同様、漢字を多用した言語を持って「いた」。これがハングルに統一されたため、元の意味が失われ、ハングルの「音」だけでは意味が伝わらないケースが多い、と指摘する。

     江戸から明治大正期にかけて欧米の言葉を漢字で意訳した日本産の熟語が多く韓国語に取り入れられているため、克日を国是とする韓国としては漢字を使うわけにはいかないのだろう、と。(経済、物理、など。韓国が純化と称して使用しない政策をとっているが中国語はその多くを受け入れている)

     もともと漢字を使っていた国なので音だけで判別するには前後の文脈から判断せざるを得ず、語源や正しい意味がどんどん失われている、とします。例えば弥勒菩薩像、のような長い単語をハングルで聞いてもぱっと意味を取るのが難しいが、漢字とハングル混ぜることで意味が伝わる、韓国人のみならず、中国人、日本人にも意味がとれる。

     この本には出てきていませんが、韓国で古い法律を改正しようにも同音異義語が多すぎてハングルだけの表記では対応できない、と聞いたことがあります。

  • 先日の『日本語の奇跡』に続いてJ長からレンタル。これまた大ヒット。おかげさまでハングルを読むことができるので、その知識も併せて読んでいくと、実にいろいろな謎が解けた。たとえば、本書によれば、現代韓国語は和製漢語をハングル読みしたものが圧倒的に多いということ。確かに、ハングルを読むと対応する漢字が連想できて意味がすぐにわかるというケースがよくある。さらにそれは、逆に言うと、ハングルは漢字について「一字一音」が原則なので、同音異義語の識別を難しくしている。政治的な思惑もあるし、筆者も言うとおり、言語政策に口を突っ込むのは内政干渉なので、どこまで働きかけるかは議論が分かれるところだけど、日本語の漢字仮名交じり文と同じように、漢字ハングル交じり文にして、音はハングルのまま、というアイデアは採用されてもよいように個人的には思う。また、そうなると日本語も省みて、漢語と和語、和製漢語の区別という点にも目が向いたので、中国語を勉強してみたくなった。
    懐古的なロマン主義ではなく、東アジアのリベラルアーツとして、自国語の良さを残しつつ、漢語の共通言語有用性は見なおされてもよいと考える。それはまた、無用なナショナリズムや子どものけんかのような領土問題を少しでも建設的に解決する糸口になるかもしれないし、相互理解を進めて懸け橋になる人材を生むかもしれないし、文化的にみても、現在実質的に唯一のLingua francaである英語への、カウンターとして、ある種の強制的なグローバリゼーションへの逆ベクトルとして作用するかもしれない。

  • 多くの和製漢語が韓国語に取り込まれていることに終始している印象しか残らなかった。
    韓国は日本文化を受け入れたくないがために、漢字を廃止してハングル表記を徹底していると。

    多角的な分析を期待して読むと、いまいち物足りない。

    韓国語に興味があり、ある程度勉強した方には面白い本だと思う。

  • 読了。

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韓国はもともと漢字の国だった。中国への従属関係から公文書はすべて漢文であり、世宗王が創製したハングルは蔑まれ、知識階級が使うことはなかった。日本統治時代、日本製の漢語が大量に流入する。韓国で使われた漢字熟語の七、八割は和製漢語なのである。なぜ、韓国は、漢字を廃止したのか。その後、復活論がわき起こるたびに潰されてきたのはなぜか。韓国研究で名高い著者が、その深い謎に迫る。

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