梅干と日本刀 日本人の知恵と独創の歴史(祥伝社新書)

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396113698

感想・レビュー・書評

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  • 日本人が気がついていない、日本の素晴らしさについて述べる本。周囲を囲む海、湿気の高い環境、自然を克服するのではなく順応することで独自の文化や技術を培ってきた古き良き日本の再評価です。
    とかく、自分が住んでいる国や街については、案外知らないことが多いもので、その殆どは根拠希薄なパブリックイメージに左右されていることがほとんど。
    例えば、一見、栄養など殆どなく、ただお腹を満たすためだけのように見える「日の丸弁当」が、酸性食品(米)、アルカリ性食品(梅干し)の組み合わせによる、極めて合理的なエネルギー補給を促す食事である等という話は学校で教わることもなく、通常、知りようもありません。タイトルにもなっている「梅干し」については、そんな形で本書にて紹介されています。
    当たり前に存在する道具、衣服、言葉、風習には、それを生み出し、育んだ先人たちの知恵が隠されていることが多いですが、一方で、その背後にある物語が語られることは少なく、よって、下手をすると自国の文化に敬意を払うことを忘れがちになります。したがって、この本で紹介される数々の、日本文化に関するエピソードは知的好奇心を刺激すると共に、自国に対する自信と誇りを換気させてくれる効果があると高く評価されています。

  • 昭和49年に発行された比較文化論の復刻。
    著者自身がまえがきに「一片のノートも参考書も手許になく話しているので、あるいは誤りもあるかもしれないが、ご教示を願いたい」と書いているので正確性には言及しないでいただきたい。
    著者が考古学者ということもあって、その手の話が結構でてくる。
    正確性をぬきにしても、面白く読めたし、あらゆるところに目を向けている感受性には驚く。
    褒めすぎだろう、そこは偶然だろう――と思うところもあるが、逆にそれらが事実どういう経緯をたどって現在に至ったかに興味が出てくる。

    まったくの蛇足ですが、途中、女紋について言及されていたが、あれは関西の風習だと聞く。
    実際、私の住むところでは女紋は使われていない。

  • 2017.09.06 あゆみ書店で見つけて気になった。

  • 考古学者により、日本人の知恵と独創性を紹介した本。明治以降、優れたものとして西欧文明を積極的に取り入れ、日本社会や伝統を時代遅れの恥ずべきものとの認識が浸透していったのは誤りだとの視点に立って、様々なことを簡潔に説明している。面白く読めたが、根拠がわからないものもあり、学術的とは言えない。
    「(刀)日本には(エネルギーとして)木炭しかなかった。(石炭ではなく)木炭という低温燃料しかないという不利さが、逆に「鍛えて焼きを入れる」という知恵を生んで、世界一の利器を作ったのである」p41
    「日本人は、世界中の人が食べてきた、すべての食品を食べている。というより、さらにそれに輪をかけた多種のものを食べている」p45
    「フグやウルシの新芽まで、日本人は危険の一歩手前まで食べる」p46
    「奈良県の大神神社という酒の神様を祀る神社は、杉の新芽で作った玉を売っている」p68
    「大阪人に限らず日本人は「あいつは義理堅い奴だ」というと、少々、とぼけた人でも尊敬するし、「人情もろい人だ」というと、社会の転落者であっても大事にする」p206
    「女性は結婚しても、紋付の紋は実家の紋を付けている」p210
    「性の問題というものは、放っておけば、自然に人間が知恵を出して処理していくのであって、いくら制限しても、要求があれば、いくらでも潜在的に拡がっていくのである。私は、性については、古代人のようにおおらかに考えた方が、健康的な人間関係を送っていけるのではないかと思う」p240
    「ヨーロッパの近代思想が、日本に持ち込んだ個人主義というものは、しばしばエゴイズムの形をとってあらわれる」p243

  • やたらと日本文化偏向のきらいがあるように感じられましたが、
    著書が書かれたのは、敗戦後、日本文化よりも欧米文化を優れていると信じ、「日本嫌いの日本人」になっていた人が多かったというバックグラウンドがあったと知り、
    著者が必死に主張しようとしている日本文化の良さがストンと落ちてきます。

    現代の科学に当てはめて、本当に正しいかは別として、
    筆者なりに仮説を立て、色々調べたことなどが書かれているので内容は興味深いです。

    ただ、著書では頻繁に”日本の科学性”と出てきて困惑しますが、いわゆる西洋の科学(=総合的な経験を分析して公式化すること)とは区別して読み進める必要があります。

    また、著者が紹介する日本文化は衣食住農業等々、多岐に渡り、
    混在している感もあるので、「衣」「食」「住」などカテゴリ分けして書いてくれた方がより理解できた気がします。

  • 日本人の柔軟性、工夫や研究熱心なことを改め
    が印象に残ったて知らされた。米食における梅やみその効能、コークスがない中での日本刀の製錬技術、そして何より西洋四味、中国五味、日本は六味が印象に残った。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:210.04||H
    資料ID:95160084

    地震があっても、なぜ城の石垣は崩れない?世界の酒で、なぜ日本酒だけが温めて飲むのか?
    日本人の知恵と独創的な発明や工夫が紹介されています。近年復刊された素晴らしい本です。
    (生化学研究室 大塚正人先生推薦)

  • かなり日本を持ち上げていますが書かれた時代を思えばそれも必要だったかも知れない、と思われる本でした。

    海外から入った技術や文化を換骨奪胎する日本人の器用さ、連綿と続く測量等の技術は確かに素晴らしいとは思います。
    しかし、現在では一歩間違えばナショナリズムに利用されそうな怖さもありました。

  • 今の日本人は少なからず外国にコンプレックスを持っているのではないだろうか。特に欧米に対して。今の世界が欧米の価値基準に支配されているから仕方ないかもしれない。しかし、樋口清之は日本人が欧米人に劣らず素晴らしい知恵を持って生活していたかを一つ一つ紐解いていく。読んでいてとても楽しい。600こちら情報部で子供の質問に答えてるみたいに、とても優しく日本人を語っている。

  • 考古学者として有名な樋口清之氏の名著である。
    本書は、欧米的な価値観(いわゆる合理主義や科学至上主義)にのみ価値を見いだし、日本文化に対する自虐的否定的な物の見方に警鐘をならすことを意図して書かれている。

    樋口氏は日本文化について、一見すると不合理で非科学的なものに見えるが、実は厳しい自然条件に柔軟に対応した合理的科学的なものであったとし、「不合理の合理」と紹介している。

    日本文化は日本の風土に合わして進化・改良したものであり、欧米の風土の中で培われた文化に偏重するのは如何なものか、という氏のメッセージは現代社会においても未だに重要な示唆に富むものだ。

    くれぐれも本書を読んで、偏ったナショナリズムに陥らないよう注意してもらいたい。それは著者の意図に反したものなので。

  • ずいぶん日本を持ち上げるなぁ……もっと淡々と書いてくれたらいいのに、と思ったが、後書きまで読むと最初にこの本が出版されたときはそれが必要な時代背景だったのかもしれない、と思った。

  • 20141215読了。
    私が生まれるよりも前に書かれた日本文化論だが、全く古さを感じさせず、今に通じるものがあった。
    最近の「おもてなし」ブームにより、クールジャパンを発信しよう、外国のお客様に日本の良さを伝えよう、日本は素晴らしい!という風潮から復刊されたと思われるのだが、日本の食文化をはじめ、様々な文化について、自分が見ていた視点とは違う高さや角度から見ることができた。
    すべてにおいて日本はこんなに素晴らしい、日本人であることを誇りに思おうということが多いため若干辟易する面もあるが、発刊された時代から考えると納得できる面もある。

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著者プロフィール

國學院大學名誉教授

「2015年 『子育て日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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