思いがけない日本美術史(祥伝社新書) (祥伝社新書 413)

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396114138

感想・レビュー・書評

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  • 以前読んだ「謎解き 伴大納言絵巻」の人と思い込んでたのが、読了後に確認したら黒田違い、別の人だったので冷や汗。「謎解き」の著者は黒田日出男さんという歴史学者で、こちらの黒田泰三さんは出光美術館の理事を務めていた方です。そのためか出光美術館の主な収蔵品である仙厓にも触れているのですが、本人関心なさそうなのがはっきりわかります。思い入れがあるのは長谷川等伯と狩野光信のようで、筆致が熱いです。
    永徳と探幽に挟まれた光信は二人と違って穏やかな作風で、ライバルである長谷川派の画風にも惹かれ、影響を受けています。評価は低く位置付けられていますが、それは長谷川派を排除しようとした狩野派の主流派が意図的に操作したものかもしれません。等伯の絵を室町時代のものと嘘の詞書を書いた探幽が等伯を意図的に世間から消そうとしたという話は大変にスリリングです。今私が夢中の「彦根屏風」を描いたのは、光信の手ほどきを受けた狩野長信と推理していて、俄然、光信への注目が上がりました。サントリー美術館で以前、狩野派の特集展を観ましたが、御用絵師の地位を築いていった狩野派と、そこに割って入ろうとした長谷川等伯の話はもっと知りたいと思いました。
    長谷川等伯「松林図屏風」の章が一番感動を覚えます。狩野派を押しのけて掴み取った秀吉の祥雲寺障壁画制作という大仕事へのプレッシャー、ちょうど息子を失った時期でもあり、そうした男としての思いが故郷能登の松林を原風景として表現されている、そしてそれは中国から入ってきた水墨画が借り物ではなく、日本のものとして表現された作品となった、みたいなことが書かれており、「松林図屏風」がどうして名作とされるのかがしみじみ伝わってきます。画家の思いや当時の世情を想像して鑑賞するのも面白い見方だなと感じました。

  • 何度も読み返したくなるし、本物を見に美術館を訪ねたくなる。

  • 取り上げる美術品が筆者の職場である出光美術館の収蔵品。出光美術館に行きたくなる^^

  • 難しい

  •  休日、ふとした気持ちで図書館から借りてきました。伴大納言絵巻の表情の多様さと、真犯人の表現をするためにあえて伴大納言の逮捕場面や放火場面を作者が描いていないところ。藤原良房の服と連行される伴大納言の服が同じという指摘。
     ほかに、田能村竹田の、梅花書屋図にある頼山陽への追悼。彦根屏風の作者と推測さえる狩野長信の長谷川等伯一派から影響を受けていて、そのため、狩野派と長谷川派の対立に巻き込まれ、画家人生の無常さが絵に表現されていること。そして長谷川等伯がつい最近まで美術史から消されていたこと。狩野派が体制のための絵を描いていく流れ。牧谿(もっけい)の絵観音猿鶴図の影響。江戸名所図屏風にある、ありのままを描く自然主義的な方法。いろいろと勉強になった。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  人間を描く ~「伴大納言絵巻」「彦根屏風」「老人六歌仙画賛」
    第2章  動・植物を描く~「竹鶴図屏風」「竹虎図屏風」「勧学院客殿一之間障壁画」
    第3章  風景を描く ~「江戸名所図屏風」「梅花書屋図」
    第4章  目に見えないモノを描く~「松林図屏風」「十王地獄図」「当麻曼荼羅」「僧形八幡神影向図」 

    <内容>
    東京の出光美術館の学芸部長による日本絵画の紹介本。有名な作品が多いけど、絵の書かれた背景を割と丁寧に紐解き、推理を重ねて分析している。そう言う点が面白かった。 

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著者プロフィール

明治神宮ミュージアム館長

「2023年 『明治神宮100年の森で未来を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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