使える語学力 7カ国語をモノにした実践法(祥伝社新書) (祥伝社新書 426)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396114268

感想・レビュー・書評

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  • 著者の経験談と、専門家や多言語学習者の知見がバランスよく記載されていて、最終章以外は納得して読み進めることが出来た。文法がいわば方便であるという説明は、非常に納得する。私が英語学習に躓いた最大の原因は、方便だとわからず、悩んでしまった点にあったからだ。英語の語感が身に付いてくると、話したい内容を積み木のように積み上げるだけで話せることに気づくのだが、学校ではただの方便を絶対的なルールとして教え込んでしまっているせいで、一生英語を話せない人間を量産している。最終章は明確な論拠の示されない主張が多く、視点は面白いと感じても納得感はない。ESL研究の書籍を読んだことがあれば、真新しい情報は少ないかもしれないが、学習のポイントがコンパクトにまとまっていて、全体的には良書である。

    <1.初級からの学習法>

    外国語を使えるようになるには、3つの大原則がある。

    1.音声を覚える
    2.言葉の使われる状況を覚える
    3.能動的に学習する

    入門書は、初級文法と発音の規則を網羅しているものを選ぶ。音声付のもの(大原則1)で特定の状況での会話例の載っているもの(大原則2)がよい。

    能動的学習をするためには、内的動機付けが必要になる。親や社会から押し付けられるような外的動機付けでは、動機の対象がなくなった途端に学習をやめてしまったり、内容を忘れてしまう(テスト、受験目的の学習の弊害)といった現象が起こる。まずは具体的な動機(目的)を探すことが重要である。外国人の日本語学習者にはアニメをオリジナルの言語で楽しみたいという目的を持つ人が少なくない。

    ロンブ・カトー氏いわく、週に10~12時間は学習しないと上達はしないという。これぐらいの学習を数ヶ月続けていれば、大きな進歩を実感できるだろうと著者の橋本氏も考えているようだ。

    <2.会話力をつける>

    マルチリンガルの人は2つ目、3つ目以降の外国語からは初級の段階から話すことができる。「外国語で話す」というのがどういうことか理解しているからである。実際に話せるようになるためには、話す感覚を養うことが大切で、学校の英語学習に足りないのはそれである。大原則の3つ目である、能動的な学習が出来ない点に問題がある。会話は能動的に質問したり、相手の言葉に対応したり、話題を展開することで成り立つが、学校の英語学習では、そのような術を学べない。最初からすらすら話せるわけではなく、話すことで言葉の使い方がわかってくるのであって、知識を蓄え、「完璧話せるようになってから」話そうというのでは、いつまで経っても話せるようにはならない。ネイティブと直に話すことによって、彼らのよく使う表現を知ることが出来るのである。会話では、ネイティブでも関係代名詞を使うような複雑な文章を好まない。つまり複文は単文にして分けて話すのがよい。

    <3.リーディングについて>

    書き言葉に用いる構文は話し言葉より複雑で、語彙も豊富になる。リーディングによる学習では、書き言葉のリズムと語彙の習得を目的とする。地の文と会話文の両方が出現することから、小説による学習を行うのがよい。ラジオ講座を半年行なった程度の文法理解でも、本を読み始めることは可能である。どうしても意味がわからなければ、後で調べる。語彙は電子辞書で調べ、重要度の高いものは覚える。市販の単語帳は捨て、自分の単語帳を作る。英英辞典から引用したり、自分で文章を作り、それらを書き込んでいく。自分で文章を作るのは、アウトプットする行為であり、外国語学習で重要といわれるリハーサル訓練である。

    <4.文法について>

    言葉が先にあって文法はそれを合理的に説明しようとしているにすぎない(帰納的文法観)。学校で教えられている関係代名詞の説明(2つの文章を組み立てなおす)はいわば方便であり、実際には日本語と同様、頭から順番どおり語を並べているだけである。仮定法は高級な文法ではなく、よく使われるものである。Ifの後が「can」であれば直接法で、単なる仮定である。「could」であれば、非現実の仮定であると話し手は考えていることになる。suggest、require、recommendなどの提案する意味を持つときのthat節の後ろの動詞が原形をとるのは、shouldが省略されていると考えるからである。

    我々は母語の論理に従って考えているため、母語がいつも論理的で、他の言語を非論理的と捉えてしまう。英語にはアジア系言語にある類別詞がない。だからといって我々の言語の方が優位かというと、問題点もあり、例えば「○ヶ国語」という言葉の意味するところは、日本人が1つの国に1つの言語しか存在しないと捉えているということであり、我々の認識と表現の幅の狭さを示している。

  • 語学の本は目に止まったものを何でも読むことにしているが、そのなかでも特に興味深かった。単語帳は英和ではなく英英で作るなど。何度でも読みたい一冊。

  • 同じものを沢山観て聴いてを繰り返そうと思った。

  • 時々こういう語学の上達法のような本を手に取ってしまう。たいてい目からウロコのような方法はなく、「そうだよね。確かにこれを実行すれば上達するよね」という納得のもので、そしてわかっていながら実行しないという……。
    この本もそんな一冊になってしまいそう。著者は、帰国子女とかでなく独学で習得したり、学校の先生をやっているせいか、わりと素直に読めるし無理なくできる方法が書かれている感じ。
    ノウハウが大半だけど、終章やところどころで日本人の語学に対する意識や外国語観に釘を刺すような指摘もあり、そうしたところを認識して外国語習得に臨むことも大切だと思った。ほんと、1つの国のなかでいろんな言語がある国だってあるし、言い換えれば一地域の一言語というとらえ方もできるのに、日本人は「外国語」といい、「○カ国語ができる」なんていうんだよね。「○言語できる」というのがこの理にかなった言い方かな。

  • どうやって外国語を習得するかが、わかりやすく書かれています。 それ以上に大事なことも書かれているのです。 外国語を学ぶことによって、実際どのようにに視野が変わるかなどです。 
    フランス語を学ぶのに、ネイティブ並みの発音は言わないのに、なぜ英語ばかりネイティブ音を目指してしまうのか。 そんな問題にも答えてくれる本です。

  • 正しさよりもふさわしさが重要。
    音を意識して勉強しよう。
    学校ができないなら塾だけでもちゃんと英語を教えたい。

  • 『7カ国語をモノにした人の勉強法』の続編に当たる本です.
    上記の本と同様,とても読みやすく,また,今回も極めて正論が展開されている印象が強かったです.

    書かれている具体的な勉強方法は,大変参考になります.
    また,数ある外国語の中でも,英語に対してだけは日本人が“特別視”している風な雰囲気があるとの指摘も,非常に説得力のあるものでした.

    “英語が出来ない教師を英語教育の現場から排除していく必要がある”,“しかし,そもそもそこまで英語の教育にのみ力を注ぐ必要があるのか”…僕自身そのように感じていますが,似たような意見が最終章に記されていました.古文・漢文ももっと学ぶべきという意見にも賛同です.

    読み手によっては,少し過激な意見が一部含まれているように思えるかもしれませんが,僕自身は,本書の内容は(実践法も含め)当を得たことであると感じました.
    読んで良かったです.

  • 外国語を習得するステップを紹介した指南書。
    日本人は「外国語をモノにする」と判断する基準が「ネイティブとまったく同じ」という幻想を持ちがちだと言う。外国語を習得するのはセンスではなく、あくまでも努力の延長線上にあるもので、近道はない。
    それぞれの地域で訛りがあるように、《日本人の英語でいい》という考え方に安心と自信を覚えた。

    3つの大原則
    Ⅰ.「音声」を覚える。
    Ⅱ.その言葉が使われている「状況」(いつ、どこで、どのように)を覚える
    Ⅲ.「能動的学習」を追加する

  • よーく考えたら当たり前のこと?!・・・必死にやらないと身に付かないよ、と思わされる内容でした。読みやすかったです。

  • 「使える外国語」にするための3つの大原則
    ・音声を覚える
    ・その言葉が使われている状況を覚える
    ・能動的学習を追加する
    NHKのラジオ講座がもっともすぐれている
    ・半年コースを2回
    ・スキットを読んで文法事項を確認→スキットの文字を追いながら音声を何度も繰り返し聞きながら意味を理解
    ・シャドーイングの最中は絶対に文字を見ない
    リスニング教材として海外ドラマがお勧め
    ・音声を聞いてドラマの場面の中で出てきた単語は驚くほど頭の中に定着する。
    市販の単語帳の暗記はダメ
    どのくらい勉強するか
    ・週に10~12時間もやれば数か月で大きな効果が実感できる。3日で30時間やれば相当な力がつく。

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著者プロフィール

1982年、埼玉県生まれ。慶應義塾志木高等学校卒、慶應義塾大学大学院文学研究科中国文学専攻博士課程修了。博士(文学)。慶應義塾志木高等学校講師(国語科)等を経て、現在、お茶の水女子大学基幹研究院助教。専門は中国語を中心とした文体論、比較詩学。著書に『7力国語をモノにした人の勉強法』(祥伝社文庫)『物語における時間と話法の比較詩学』(水声社)『物語論 基礎と応用』(講談社選書メチエ)『日本語の謎を解く』(新潮選書)『ノーベル文学賞を読む』(角川選書)などがある。

「2019年 『使える!「国語」の考え方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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