会いたかった人: 傑作サスペンス小説 (ノン・ポシェット こ 6-2)

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 289
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396322380

感想・レビュー・書評

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  •  表題作含め6編を収めた短編集。
     いずれの作品も人間の思い込みというか固定観念というか、そういった深層心理を巧みに利用した作品。表題作のように、なんとなく展開が読める作品はあるが、ストーリー展開以上に心理的に追い詰められた人間の心理描写が面白い。むしろ、そうした心理変化を追っていくことが面白いように思う。追い詰められた時の人間の脆さのようなものが垣間見られる作品集。好みの問題はあるが、どれも甲乙つけがたい作品がそろっているといった印象を受ける。

  • 心がささくれ気味な時には小池真理子のサイコサスペンス。さすがの安定感で一気に読ませてもらいました。
    でも、今回については被害者(?)が本当に何も悪く無い人だったりして、ちょっと可哀想とも思ったり。いつもわりと「ざまぁw」みたいに思わせてもらって楽しむので(性悪!)。

  • 大学の助教授で心理学を教えている小夜子。夫は優しく子煩悩。姑は自分の仕事を理解してくれ、忙しく働く彼女を惜しみなくサポートしてくれる。小夜子は順風満帆な人生の幸せを日々実感している。
     ある日、小夜子はテレビのトーク番組に出演。それをきっかけに、音信不通になっていた中学時代の親友と再会できることになった。成績も人気もクラスで1位2位を争うほどだった二人。どんな立派な女性になっているのだろうと思いめぐらしていのだが、目の前に現れたのは、気の触れた老婆のような姿の女だった。そしてその日から、小夜子の安定した幸せは揺らぎ始め、恐怖へと変わっていく。

     というのが「会いたかった人」のお話。他にも、自分の結婚式に自殺した元カノの母親が来て怯える新郎の話や、仲の良かった娘と結婚した相手の男に嫉妬を募らす母親の話など6編が入った短編集。
    ミステリー小説ってやつだけど、平山夢明みたいにグロさは無いし、誰にもわかりやすくきちんと書かれているので読んでいて疲れない。どれもわりと途中でオチがよめるんだけど、それが正解なのか確認したくて読み進めちゃったというのもある。なにより、作家生活何十年、安定感がある。結果、面白く読める本。
     長旅の時、車内や機内に持ち込んで読むにはちょうどいい本かな。

  • Kindle Unlimited(14冊目)

    全体的に小粒だけど良くできた短編集だと思います。

    【ストーリー】
    表題作「会いたかった人」
    小夜子は学生時代に音信不通になった親友の良美に会いたいとテレビで呼びかける。
    良美だと名乗る女が現れ、話し方や話題から本人だと思うが、容貌はすっかり変わっていた。
    →うーん、ホラー。良く分かんない人からもらったものは食べちゃいけない…

    「結婚式の客」
    津村明弘は自分の結婚パーティーの中に見知らぬ老婆がいることに気づく。あれはかつて捨てて自殺した大場浩子の母親に違いないと疑心暗鬼に駆られ順風満帆だった人生に汚点をつけることになる。
    →自業自得ホラー。婆さんひとり、気にすることないのにね。罪悪感が身を滅ぼすってことで、不安対策は大事。

    「寄生虫」
    娘の聡子が結婚した石山久幸が気に入らない良江。ある日、石山が聡子と見合いする直前に捨てられた菊池美奈子が訪ねてくる。その後美奈子が自殺し、石山に不審死の嫌疑がかけられた。
    →お母さんが怖いってお話。娘は結婚後、母親と過ごした2人の時間を思い出しもしない訳だから(笑)そして娘が男を見る目がないのか、娘の選ぶ男は誰でも低評価なのか微妙なところ。

    「木陰の墓」
    姉の別荘で仮暮らしをしていた純一は、隣の西園寺家で夫妻が真夜中に穴を掘っているのを目撃する。その家の運転手をしていた吉田に借りていたビデオを返しに行くと、吉田は急に仕事を辞めたと言って、姿を消していた。
    →これが1番面白かった。
    登場人物としてなんで犬が2匹だったのかが分かると怖い。

    「運の問題」
    義父と妻に頭の上がらない工藤は、女性の財布を盗むことを隠れた趣味としていた。ある日公園に置き忘れられたバッグから赤い財布を盗むが、犯人として工藤の顔をはっきり見たはずの持ち主の女は見逃してくれて…。
    →運の良い工藤。少年との再会の話のところ、むしろ感動すらしたんだけどなー、やっぱりイヤミスで終わる。運を使い切ったというオチかな。

    「甘いキスの果て」
    独身の佐藤純子は7年間不倫関係にあった加藤洋一に別れ話を切り出すと、代理人と名乗る古田照男から200万円を要求される。
    →アンジャッシュ・イヤミス。笑えないやつ。

  • 6作品収録のミステリー短編集。28年ほど前の小池さんの作品なんですね。どの作品も毒があって小池さんらしい。ドラマになっても面白そうです。

  • 会いたかった人
    結婚式の客
    寄生虫
    木陰の墓
    運の問題
    甘いキスの果て


     在りがちな、どこかで読んだことのあるような展開と結末。でも、娯楽としてはとても楽しめる話ばかり。
     平易な描写表現、テンポのいい展開。おもしろくて、楽しめる話ばかりだった。
     『会いたかった人』、『結婚式の客』、『甘いキスの果て』、どこかでその思い詰め過ぎるサイクルを止められれば、そのような結末は起こらなかったのに。人間は、一人で思い詰めて一人でそこから抜け出そうとして、どこか間違った方向に出てしまう傾向があるのかな、と思った。
     何か教訓を得る、とか、知らない世界を垣間見る、とか、あまりそういうタイプではない、娯楽としてはとても楽しい本でした。

  • 「結婚式の客」と「寄生虫」が面白かった。「甘いキスの果て」は自業自得というか。女も自律しなきゃいけないね、という教訓。

  • 「いやだ。わからない?そんなに私、変わった?」良美はそう聞きながら、走り寄って来た。少夜子はやっとの思いで笑顔を作った。これがあの、魅力的だった結城良美であるとはとても信じられなかった。花形心理学者・諸井小夜子は、中学時代の無二の親友と25年ぶりに再会した。が、喜びも束の間、直後から恐怖に悩まされ始めた…。(BOOKデータベース)

  • まずはなんといっても読みやすい!話の展開が早くって興味深いから、早く先が知りたくなっちゃう。
    自分の身の回りに起こらなさそうで起こりそうな身近なお話ばかりの短編集。だけど、最後はぞぞっとさせてくれるのです。
    この発想、よく考え付くよね~。

    ・陰気で成績も悪く、クラスの中でも目立たぬ存在。中学時代のクラスメートが思わぬ方法で自分の前に現れた。
    ・母一人娘一人、仲良く暮らしていたのに…娘が結婚したと同時に楽しかった二人の生活が奪われた。仲のいい婿に嫉妬するあまり、婿を陥れる言動を取ってしまう。

    等々、女の中の狂気を浮き彫りにしたサスペンス、気分転換にちょうどいい軽さの短編集だ。
     

  • 短編のコワイ話集。

    オチのところで、ぞわぞわ~とくる感じの話。

著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池真理子の作品

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