- Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396325794
感想・レビュー・書評
-
実に興味深い設定だった。作者自身が探偵役となって物語の主人公を演じるシリーズの根底を揺るがすようなお話だった。
清原奈津美は正しく法月綸太郎である。
彼は自分の存在意義を一度は否定し、虚構の中で踊る道化師までに貶めし、だがそこから見事復活してみせた。
しかしそれでもなお、彼は本格探偵小説の明日を見出してはいないだろう。
そう、この中で何度も作者が云っている「物語は終わらない」ように、このジレンマもまた終わらないのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原型の短編を先に読んでいたが構成の妙で飽きずに読めた。最後の捨てロジック(?)はミステリ批評的にも読めるし、この構図を実現できたら面白いなあと思う。しかし作中の綸太郎は相変わらず詭弁家でそれでも名探偵として遇されているのは凄いなあと思ったなど。
-
どうも、法月親子が邪魔な気がしてなりません。
-
4-
ことごとく内省的で、心が弱っているときに読むと軽く鬱になるかもしれない。特に二人称現在形パートで醸し出される自己嫌悪感はつらい。全編、精神的な危うさを巻き散らしてはいるが、歯を食いしばって何とか物語に整合性をつけている点に希望の光りが見えるような気がして、この点、本作がミステリで良かったなあと思える。
過去作のいくつかを事前に読んでおくと「あーアレね」と思えてより理解が深まる。 -
作家兼探偵の法月綸太郎30手前の誕生日に、警視庁の警視である父からプレゼント代わりに聞かされた事件は、一件単純なものだった。ルームシェアをしていたOLが絞殺のうえ顔を焼かれて発見され、同居者は行方不明というのだ。問題の「鍵」の暗号はあっさり解け、事件解決は速やかかと思われたが…。松任谷由美の「卒業写真」がエピグラムになって物語をリードする。著者が非常に感傷的になって描いたのではないかと勘繰りたくなるような作品。綸太郎定番の自虐的自己表現には、毎度苦笑させられつつ、これがクセになる。一番の読みどころは「清原奈津美の日記」。著者法月氏は、どうやってこんなに繊細でもどかしい女性的な心の機微を、書くことができたか不思議だ。登場人物がAがBで、BがAみたいなややこしくさせる設定で捻り過ぎて訳わからなくなるような感覚。事件の真相も二重底、三重底になっていて、『一の悲劇』よりこちらのほうが読み手を引きつけるものが強いと思った。あとがきを読むと、この作品は相当な難産だった様子。
-
正直ストーリー覚えてない(笑)
でも、全部読むとタイトルの意味が分かって「あーなるほど」と思った気がします。