不安な童話 (ノン・ポシェット お 13-1)

著者 :
  • 祥伝社
3.18
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本棚登録 : 838
感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396326777

感想・レビュー・書評

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  • 不思議な世界観と現実的な世界観の間をふわふわと行ったり来たりできるのが好きな所。

    すべて最後に一気に時がすすみ物語が動いていくのが面白かった。

  • 物語全体を包むそこはかとない不気味さ、不穏さがどんどんクセになってくる作品でした。

    大学教授秘書の古橋万由子は、高槻倫子という画家の遺作展で、自身が鋏で刺される場面を見て失神してしまう。後日、万由子の元にやってきたのは、倫子の息子だという男。男は倫子は万由子が見たように、何者かに鋏で首を刺されて殺されたこと、そして倫子は生まれ変わりを信じていたと話し……

    突然フラッシュバックする万由子の記憶、徐々に明らかになっていく倫子のエキセントリックな行動、彼女の遺した遺作の絵、いずれも不気味で、それが不穏さを盛り上げていく。

    容疑者も一癖強い人物が多く、話の展開もどんどん不穏さを増していきます。遺作展を狙って起こった放火、万由子に対しての再三の脅し、そして新たな事件。文章に段落分けが多く、すいすいとテンポよく読み進められました。

    ミステリーとしてはまとまっているものの、広げられた風呂敷の割りに、結末はややこぢんまりと収まってしまった印象も残る。終盤がちょっと性急だったり、登場人物の設定が生かしきれていない印象がありました。もっとページ数があるか、なんならミステリーの枠にとどまらず、ホラーと超能力SFにまで吹っ切ってくれても良かったかも。

    ただ自分が最近読んだ恩田さんの作品は、青春小説の雰囲気の強いものが多かったので、物語全体の不穏さや不気味さから、「こういうのも書ける多彩な人だった」と改めて思い出させてくれました。恩田さんのこっち路線の作品も、折りを見て読んでみたくなりました。

  • 面白かった~!
    もう最初っから引き込まれてしまった。
    核になる人物2人の情緒が不安定なもので、深読みしようとするとミスリードされてしまう。

    にしても、美人でエキセントリックな画家の倫子。
    画家としての才能には溢れていたかもしれないけど、人としてはサイテー。
    周囲を振り回し過ぎるし、我が子をすら愛しているようには見えない。
    これは子どもからするときついな。

    極度に人間嫌いだったはずの倫子の遺書が25年ぶりに発見されて、指定された人物に指定された絵を届ける倫子の息子に、成り行きから同行することになった万由子。
    そこで出会う人たちも腹に一物あるようで、人の記憶を感じ取ることのできる能力を持つ万由子は、徐々に倫子の秘密に近づいていく。

    ただちょっと、論理的に詰め切れていないところがあって、どれが真実なのかが揺らぐ。
    特に、「私のグレーテル」という台詞の意味が、ちょっとよく分からなかった。
    童話をモチーフにした絵を描いていた倫子とはいえ、息子を「グレーテル」と心の中で呼ぶ真意。

    あと、登場人物のどれもが非常にキャラクターが立っていて、なのに活躍の部分と部分の間がカットされているので、シリーズ化を念頭に置いた設定の出し惜しみかなとも思ったんだけど、今のところ続篇はない模様。
    万由子の上司である浦田泰山教授なんて、絶対シリーズキャラだと思うのだけど。

  • ミステリーも書けてしまう恩田陸先生の恩田陸にしか書けない作品

  • 恩田陸らしくなく最後犯人がわかる。ホラー的な話かと思ってたら違ったんかいってなった。文体や雰囲気が好きではない。

  • 怪力乱神が引き起こしたとしか思えない怪事件の解明は、不可能犯罪という本格ミステリの表看板の一つだし、ライトミステリを中心に、心霊探偵の類いは百花繚乱の観がある。しかし本作のように狭義のオカルト現象を扱うミステリは意外と例が少ないような。ミステリとしては一種の不可能犯罪ものになるのだろうが、ハウは大したことがないので、ホワイダニットになりますか。それよりも、お話がどんな地点に着地するかがさっぱりの、フワフワした感じが、むしろ心地よい。

  • ある女性画家の遺作展を観に行ったところから物語は始まる。「見える」感覚のない自分にはわからないことだけど、怖くてたまらない気がする。得することもあるのかな・・・ 万由子は倫子の生まれ変わりなのか。遺言通りに絵を渡しにいくと、本当の倫子が、本当の秒が見えてくる。登場人物は少ないので犯人はすぐに絞れるのだけど、途中でまた事件が起こったりして、謎が増えるのに、解決に向かっているのかわからなくてどきどきした。真相への道が突然な気がしたのは、読み込めていない証拠なのかも。 恩田作品は解決した後の「独白」が好き。

  • 女流画家高槻倫子の遺作展に出掛けた主人公万由子が、展示されている絵から強烈な怖れを感じ意識をうしなってしまった。

    後日その画家の息子から「母の生まれ変り」ではないかと指摘されることから苦しみが始まる。画家は25年前に殺されたのだったから。

    なぜ、縁もゆかりもない「私」古橋万由子が知っているような気がするのか、画家を殺した犯人は?というあらすじ。

    「生まれ変り」伝説などというまがまがしさは苦手とひきながら読み進んだのだが、すじの面白さにぐんぐん惹きつけられ最後の展開になるほどと思わされた。

    クリスティの「スリーピング・マーダー」の結末も深層心理をうまく取り入れ、そのクリスティの筆運びの恐ろしさに背筋が凍る思いをしたものだが、勝るとも劣らない。

    オカルトでもないエンターテイメントでもない、サスペンス、サイコホラーとあらゆるジャンルを組み込んでミステリーで味付けしてある、稀有な作品とみた。

    恩田陸、3作目らしい。「六番目の小夜子」「球形の季節」と読み進んでくればきっとこの不思議なジャンルの物語にとりこになった読者も多かったのでは。

    私はその後の発展した作品を先に読んでいるので、恩田さんの才能を再確認したわけだが。

    恩田さん独特のおかしみのある語り口も健在確定である。(であるが、この語り口になかなか私は慣れ得ないのだが...)

    子供の頃に読んでもらった童話はずーっと覚えているものだ。とくに寝しなに読んでもらったものは...。怖ろしいことだ!

  • この世界が私だけの百メートルの短距離走ではなく、永遠に終わらないリレー競技であることを理解するのはなかなか難しい。

  • 女流画家の遺作展で強烈な既視感に襲われ、意識を失った万由子。
    遺作展を開催した画家の息子から「25年前に殺された母の生まれ変わり」と告げられる。
    遠い昔、奔放な美しい画家を襲った海辺の惨劇。
    なぜ万由子はその記憶を持っているのか。

    自分の死後に絵を渡してほしいと書かれた画家の遺書が発見され、それを遂行すべく画家の息子と行動を共にするようになって、万由子の身辺に不穏な出来事が出来する。
    その犯人は誰なのか。それは画家を殺したのと同一犯なのか。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

恩田陸の作品

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