下山事件完全版: 最後の証言 (祥伝社文庫 し 8-3)

著者 :
  • 祥伝社
3.76
  • (51)
  • (62)
  • (53)
  • (15)
  • (4)
本棚登録 : 689
感想 : 79
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (602ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396333669

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日本の黒い霧を読み進めているが、上巻ではこれと、ゾルゲ事件が興味深い。
    GHQは本当にロクなことをしていないということが、よくわかる黒い霧上下巻となりそうだ。
    これがらみで、何冊書物を買うことになるのだろうか。

  •  究明に至らず未解決のまま真相が闇に葬られた国鉄三大事件と呼ばれる事件があった。

     無人列車が暴走して線路脇の商店街に突っ込み死傷者をだした三鷹事件、
     夜間にレールが外され通過中の列車が脱線転覆し乗務員三人が死亡した松川事件、
     失踪した初代国鉄総裁下川定則が翌朝に轢死体となって発見された下川事件である。

     ある日、著者が親族との宴会の席で酔った大叔母が、兄は下川事件に関わってかもしれないと口走った。
     下川事件のことを全く知らない著者は、事件について調べていく。
     
     三越百貨店に運転手を待たせて入店した下山総裁は行方不明となり、翌朝常磐線の北千住綾瀬間で轢死体として発見された。
     自殺説、他殺説入り乱れて捜査が進むも、下山総裁は自殺したとされ一方的に操作は打ち切られた。

     調べるほどに他殺を裏付ける数々の状況証拠の先に、アジア産業があった。
     そこはGHQ、政治家、右翼など戦後日本のキーマンたちが秘密裏に集まるライカビル四階に、その会社は存在した。

     GHQとCIAの対立、国鉄利権、反共政策、全ての線の交点に下山総裁は立っていた。
     真実は明かされることはなく、これも数ある解の一つに過ぎない。
     しかし、真実に迫る実体感がある。戦後日本の国の成り立ちの裏が垣間見える。

  • 全く違う立場からの検証で、資料が信じられる

  • 「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、この本を読んでまさにそう思った。どんな推理小説よりも謎めいていて、また圧倒的に面白い。乱歩も横溝もこんな面白い作品は書けないだろう。むろん、ノンフィクションとはいえ著者の主観も入っているから、すべてが「事実」だとは思わない。著者の親族にインタヴュウしているので、そういった点も差し引いて考える必要はあるであろう。ただ、それでもやはり絶対的に面白く、また「途轍もない」作品であることには変わりはない。昔から未解決事件について関心はあったが、これほど深い闇が広がっているとは思いもよらなかった。キイ・パーソンを挙げてみても、一般に名前を知られているだけでも佐藤榮作や岸信介といった首相経験者や、笹川良一や児玉誉士夫といった大物がつぎつぎに浮上してきて、しかも相互になんらかの形でかかわりを持っている。よく知られた日本共産党やGHQといった陰謀説に加え、南満洲鐵道までかかわってきて、もうとにかく圧倒される。あまりにもスケールが大きいのだ。こういう戦いに挑んでゆく著者の姿勢もすばらしいが、それをひとつの物語として整理してゆくことがどれだけ大変なことであろう。自殺説、他殺説、陰謀説、替え玉説、言及されるそれぞれの内容じたいにも興味は持ったが、あえて結論は濁して書いてあり、また、矢板玄氏に対してすべてを訊けたわけでもなさそうだ。そういった部分での消化不良感はあるが、しかしそれも気にならないくなるぐらいのクオリティがあるので、とにかく読ませる作品になっている。読み終えたあとも、事件のことを調べずにはいられなくなる。わたしもまた「下山病患者」なのかもしれない。

  • 身内のルポ
    ちょっと合わなくて最後まで読み切れませんでした(>_<)

  • 戦後の動乱冷めやらぬ時期、「松川事件」「三鷹事件」と共に国鉄の3大事件と呼ばれる謎多き事件。いつかは読みたいと思い続けていた「下山事件」のノンフィクション。

    昭和24年7月、GHQの占領下にあった日本で、国鉄総裁だった下山定則が轢死体で発見された「下山事件」。自殺説、GHQ、CIAの陰謀説、大量馘首に端を発した労働組合による殺人、ソ連による暗殺説など様々な説が取りざたされながら、今も真相は闇の中に沈み、関係者もほとんどが鬼籍に入っている。
    筆者は、事件にかかわったかもしれない男の孫として、貴重な親族の証言を得ながら、これまでのジャーナリストとは違った切り口で事件を検証していく。

    一人の男が殺されたというだけに留まらない、重く、深く、暗い事情が目の前に示されるとき、自分の暮らす国のこれほどの闇を知ることへの躊躇に何度か挫折しかかった。
    好奇心だけでは言い表せない何かに突き動かされ最後まで読んでみたけれど、やはり真相はいまだ霧の中。ん~はっきりしない。当時、関わった数々の人物が、不審死を遂げた事実を思うと、すべてを明らかにするのは筆者とて危険なのかしら?

    国を動かしているのは誰だろう?という素朴な疑問が消えない。同じ思いをグリコ森永事件のノンフィクションを読んだ時にも感じたのを思い出した。
    警察の捜査はもちろん、政治家をも操る右翼やフィクサーと呼ばれる存在。GHQによる占領が終わると、経済によるある意味軍隊なき占領があり、では現在は?

    関東軍、満鉄、国鉄に群がる利権、国鉄民営化構想・・・下山という一人の男の死を突き詰めていくと、戦前にまで行き着くという闇の深さに愕然とする。
    そして、それは今に至るも大きくは変わっていないのかもしれない。国を動かしている力を本当には知らないんだな~と思い、知らない方が幸せなのかもしれないとしみじみ感じた読後でした。

  • 関係者の血縁者による、ルポタージュ。
    自分が犯人の身内ではないかというところから始まるのがとてもキャッチーです。

    未解決事件のノンフィクションだから当たり前ですが
    、膨大な資料により、仮説立てをしても当然のことながら犯人を明示しません。

    ちょっと残念。。

  • 事件関係者が親族にいるというだけで、この手の本を書くのには反則気味ですね。(^^;
    何があったか程度に事件を知っている身にしては、隠されていた真相が明らかになってゆくくだりも、「そんなことがあったんだぁ」ぐらいの感想で、内容の貴重さを感じられなかったのが残念です。(^^;
    ちょっと、もったいぶったような部分とか、インタビュー時の状況を示した部分など、主題からちょっとだけずれている文章が、事実を系統立って把握するのを妨げている気がするのが、残念です。
    まぁ、なんてぇか、「下山事件」(森達也)も持っている身としては、こっちを先に読んでおいて良かったなぁと思った事です。
    インタビュアなんて、結構自分に都合がよいようにフィルタをかけて話を聞くもんだからね。(^^;

  • 「下山事件に自分の祖父が関与していたかもしれない」

    事件には特に興味も知識もなかった筆者が、「大好きだった祖父のルーツ」を辿りつつ事件の真相に迫るドキュメンタリー。
    面白い、興味深い、が、長い……。

  • 「下山事件」やっと読了しました。

    本当にノンフィクションなのか!?小説をはるかに凌駕するシナリオでした。日本とGHQの表裏の重鎮が頻繁に出入りする「亜細亜産業」の存在に、市役所に名前を尋ねただけで市長直々が対応する「矢板玄」の存在、ぐっと読み入りました。

    さて、実行犯は「亜細亜産業」の一部人間+αであることが本書でほぼ明らかにされるも主犯は誰なのか?本書では「X某」と書かれておりよくわからない。明確な説明は
    ・亜細亜産業に頻繁に出入りをしていた
    ・G2(ウィロビー、キャノン)とも密接に交流していた
    ・下山総裁を「裏切者」と呼び、憎んでいた
    ・小千谷発電所やその他の公共工事の中止で莫大な損失を被った(東芝が落札すれば、その利益を得ることができた筈であった)
    ・松川事件の関与も疑われた

    本書を何度を読み返すもよくわからず、ネットで調べてもよくわからずであった。
    ネットでは”S”、”T”、”M”当たりの名前が挙がっていた。

    悩み悩むもこう考えてみた。
    亜細亜産業に出入りする吉田茂やG2とつながりのある主要人物(達)が間接的に執行を促し、「亜細亜産業」の一部人間+αがそれを実行した。「誰か」が直接的に命令したのではなかった可能性もある。本書を読む限りだとそれらに一番密接してそうなのは”S”ではないだろうか。
    (う~ん、完全な直感でわからない、すみませんっ。)

全79件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1957年、東京都出身。日本大学芸術学部写真学科中退。フリーのカメラマンから作家に転身し、現在はフィクションとノンフィクションの両分野で広く活躍する。パリ〜ダカールラリーにプライベートで2回出場し、1990年にはドライバーとして完走。1991年『KAPPA』で小説家デビュー。2006年、『下山事件 最後の証言』で第59回「日本推理作家協会賞・評論その他の部門」と第24回日本冒険小説協会大賞(実録賞)をダブル受賞。2007年、『TENGU』で第9回大藪春彦賞を受賞し、ベストセラー作家となった。他の著書に『DANCER』『GEQ』『デッドエンド』『WOLF』『下山事件 暗殺者たちの夏』『クズリ』『野守虫』『五十六 ISOROKU異聞・真珠湾攻撃』『ミッドナイト』『幕末紀』など、多数ある。

「2021年 『ジミー・ハワードのジッポー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柴田哲孝の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×