風魔(下) (祥伝社文庫 み 14-4)

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396335304

感想・レビュー・書評

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  • 上中下3巻ほとんど一気読み。

    この小説は凄いわ。「剣豪将軍義輝」も「藩校早春賦」も「夏雲上がれ」もムッサオモロかったのに、何故か追いかけ忘れていた宮本昌孝、もっと早くに読めばよかったと思う反面、美味しいご馳走をここまで引き伸ばしてきたのがちょっと嬉しかったり…

    さて、主人公の風魔小太郎は単独だと正直若干魅力に欠ける。強い、デカい、男前、優しい、義理堅い、モテる…完璧すぎてオモロくないのだ。だが主人公の周りを固める連中が実にいいのである。敵役の忍者連中、柳生又右衛門、服部半蔵、伊達政宗に豊臣秀吉、徳川家康、秀忠に至るまで、味わい深く、悪いやつは悪く、しぶといやつはしぶとく、道化は徹底的に道化で、天下人までもが風魔小太郎を彩るために踊ってみせる、彼等所謂脇役たる登場人物の名演が完璧すぎる主人公を見事に際立たせる。

    時代小説作家の中でも剣戟シーンを名人級に描く宮本昌孝の筆で、彼等脇役たちVS風魔小太郎(及び風魔一族)の対決が描かれると、もう時間も何も忘れてひたすらページを繰るのみ、テンポとリズムが抜群に良くてボリュームたっぷりなのに、軽快さを感じるぐらい。まだるっこしい歴史解説などの中だるみすら休憩とか間とか好意的に捉えてしまう。

    クライマックスから最後にかけて、これはもう男ならこういう風にカッチョ良くなりたいと、妄想重ねる素晴らしさ。そりゃ大もてするわ、とライバルならずとも嫉妬すら沸いてこない完敗気分である。最後まで読んだ人にだけ味わえるこの醍醐味がまた良い。

    強い男たちが戦うあたりは夢枕獏的でもあり、隆慶一郎「影武者徳川家康」をリスペクトしているところもあり、忍びの小説と言う事で勿論山田風太郎リスペクトでもあり…、時代小説、歴史小説が好きな人には是非とも読んでもらいたい傑作である。

    難点を言えば、簡単にたくさん人が死にすぎるとこかな。戦国群雄割拠の時代背景を考えるとこれはもうしゃーないんだけど、キラいな人はそこがひっかかるかも。

  • 小太郎強し。

  • 人外の化生と評された風魔小太郎が爽やかに描かれ、ストーリー的にも大変面白い作品だった。

  • 遂に宮本昌孝さんの風魔(上・中・下)を読了。

    最初から最後まで主人公である風魔小太郎は涼やかな風の様な男で楽しめました。

    漫画では花の慶次、小説では一夢庵風流記になるのか、慶次と小太郎は似た所も多いなと感じながら、やはりこの様な男は好きだ。

    小太郎を取り巻く対手方や味方達も一癖あって凄く楽しかった。

    山田長政との匂わせもいい感じの終わり方で良かった。

    しばらく経ってから風魔外伝を読もうと思う。

    2022/10

  • 風魔外伝を読んで、再読。

  • 笹箒を拉致され、その奪還を目指して柳生一統を箱根の山に迎え撃ち、壊滅的な打撃を与える風魔。その激しい攻防は迫力満点。小太郎に借りのある面々に助けられ、古河公方から徳川家への公方家禅譲の儀式の中、家康の計らいにより小太郎と徳川幕府との争いに最終的な終止符が打たれ、一件落着。シャムへ旅立つラストも、爽やか。
    小太郎の肉体を武器とした超人的な強さもさることながら、その自由奔放、素直な性格が強く印象に残った作品だった。

  • 宮本昌孝著「風魔(下)」を読み終わりました。

     徳川と豊臣の戦いに巻き込まれた風魔小太郎がこの最終巻では、徳川の守護神、柳生又衛門宗矩との死闘を演じます。

     歴史の狭間で繰り広げられる影の戦いが激しく描かれている中で、この作品のメッセージも強く伝わってきました。

     権力の象徴である徳川をあくまでも信じて戦い続けることによって、己の生き方を貫き通す柳生又衛門の人生も、一人の男の生き方としては、魅力を感じました。

     しかし、その一方で何ものにもとらわらず、自分の仲間と愛する人のために最後まで自由を求めて戦い抜く小太郎の生き方は、柳生又衛門のそれと対照的に表現され、憧れを感じてしまいます。

     このさわやかな主人公の結末も戦いの果てにとても夢のある終わりを迎え、読んだ後、とても気持ちがよかったです。

     こういう作品に出会えたことで、幸せを感じました。

  • 最後まで読了。結果、これはかなり面白かった。完全に想像上の歴史物語でも、面白いものは面白いし(北方水滸伝とか)、比較的史実に忠実に論じられているものでも、面白いものはある。逆もまたしかりだけど。この風魔に関しては、その辺りのバランスが秀逸で、歴史の表舞台の描写も痒いところに手が届く感じだったから、自分的にはそういう点も好印象でした。

  • 歴史に在っても、「風魔の小太郎」については虚実入交じって色々なことが伝えられている。大小様々、新旧色々な勢力が入り乱れた関東に永く君臨した北条氏の下には、諜報や工作活動に従事した優れた忍者集団が居たことは疑う余地が少ないように思うが、その頭領がどのような姿であったのか、どのような人物であったのかは知れない…また歴史では、「風魔の小太郎」は盗賊になって悪名を馳せ、処刑されたと伝えられる…

    本作は、上記のような「未詳な歴史」を題材に想像の翼を大いに広げた活劇で、非常に愉しい!!

  • 2011/12/06読了。

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著者プロフィール

1955年静岡県生まれ。日本大学芸術学部卒業後、手塚プロ勤務を経て執筆活動に。95年、『剣豪将軍義輝』で、一躍脚光を浴びる。おもな代表作は『海王』『ふたり道三』『夏雲あがれ』『家康、死す』『風魔』『陣借り平助』など。『乱丸』で2015年第4回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。近著に『天離り果つる国』がある。

「2023年 『義輝異聞 将軍の星 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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