新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)

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著者 : 森見登美彦
  • 祥伝社 (2009年10月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396335335

新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)の感想・レビュー・書評

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  • 山月記 中島敦
    藪の中 芥川龍之介
    走れメロス 太宰治
    桜の森の満開の下 坂口安吾
    百物語 森鴎外

    懐かしのあの名作が、阿呆学生のしょっぱい青春記と姿を変える。

    「人間の文明というものは、突き詰めればただ言葉と数学のみに拠っている。数学を選ばぬ以上、言葉を究める人間が最もエライに決まっていると彼は言った。それゆえに俺はエライに決まっていると。」
    そして大文字山へ姿を消した斉藤秀太郎。
    なんでこんなに読後の余韻が切ないんだろう。
    「走れメロス」なんて、芽野と芹名の友情がなんだか美しく思えてくる。恐るべし。
    「約束を守るも守らないも問題ではないのだ。信頼するもしないも問題ではないのだ。迷惑をかけてもいいだろう。裏切ってもかまわん。助け合いたければそれもいい。何であってもいいのだ。そんなことはどうでもいいのだ。ただ同じものを目指していればそれでいい。なぜならば、だからこそ、我々は唯一無二の友なのだ!」
    桃色だけど。

    女性にふりまわされ、勉強をしたりしなかったり、そんな彼らの偏執ぶりが描かれる。
    メロスのような狂騒ぶりは大好きだけど。
    藪や桜のようにしっとりと語られる話もいい。
    「百物語」を読んで、すべては一つの物語だったのかと最初から読み直したくなった。

  • 森見登美彦初体験は『新釈 走れメロス 他四篇』。

    高校現代文で最も好きな教材である中島敦の『山月記』をカヴァーしてるっぽい、という一点のみで単行本を衝動買い。その手腕の巧みさに感激し、人に貸しまくっていたらそのまま戻ってこなくなった。で、文庫で買い直した。そんな経緯も含めて思い入れの強い作品です。

    「過去の名作を現代に置き換える」。そんな目論見の標的となったのは、『山月記』『藪の中』『走れメロス』『桜の森の満開の下』『百物語』の5作品。どれもこれも、森見ワールドに生息する腐れ大学生の物語にメタモルフォーゼしております。登場人物がそれぞれリンクしているので、長編の趣も(ああ、連作か)。

    逆説的な『走れメロス』に爆笑しましたが、漢文訓読体を再現しつつ茶化し倒した『山月記』が一押し。原文をそのまま引用するタイミングとかがまた憎いのですよね。それでいて主人公の悲嘆も決して外さないっていう。

    名作の力について述べた「文庫のためのあとがき」も素敵。

  • 文豪たちの、有名過ぎて最早説明するまでもない名作たちを
    森見色に塗りたくった一冊。

    特に『走れメロス』はもう森見ワールドの真骨頂。
    お馴染みの詭弁論部、図書館警察、自転車にこやか整理軍…が
    太宰治巻き込んで京都走りまくります!

    だけど宵山万華鏡派も、もちろん夜は短し派も、
    どっちも満足出来るかなりお買い得な作品集です。

    私のいちおしは『薮の中』。
    心、締め付けられます。

    いつか絶対しようと決めている「京都森見巡り」!
    スタート地点はやっぱり“鴨川デルタ”かな。

  • 「新釈 走れメロス 他四篇」
    日本一愉快な青春小説。こんな友情もあったのか。


    大枠の世界観は守りつつも、舞台やら登場人物やらが、森見登美彦氏によって多大にパロディ化されています。新釈という表現がぴったりな作品です。名作が此処まで姿を変えるとは。


    森見味が加わった過去の名作は、


    ◇太宰治「走れメロス」
    ◇中島敦「山月記」
    ◇芥川龍之介「藪の中」
    ◇坂口安吾「桜の森の満開の下」
    ◇森鴎外「百物語」
    順不同

    の5編です。何となく堅そうな作家ばかりなので、新釈版の自分の小説を読んだら怒ってしまうんじゃないんですかね。怒る彼らを森見さんが宥める、いやいや、どれだけ敬意がこもっているいるのかを熱弁する姿を想像してしまう。


    一番面白かったのは、「走れメロス」。一番印象深いのは「山月記」です。「走れメロス」は、馬鹿馬鹿しさが凄まじいことこの上ないです。自分を如何に正当なのか、自己弁護且つその様を自画自賛するこ奴は、ちょっとぶっ飛んでいるけど潔い。特に「自分が戻ってこないことを知った上で人質を受け入れた親友の気持ちに応える為には、自分は戻るべきではないのだ!」を胸を張る姿は、なるほど!と思っちゃう。こじつけだけど一理あるぞとw


    一方、「山月記」は、メロスと違い、重い仕上げになっています。人の内省の揺れが、びりびりと伝わって怖さを感じさせます。「自分には才能がある。他人とは違うのだ」と本気で信じて生きてきた人間が、壁にぶつかり、そこで真に向き合うべき心から目を避けてしまって天狗へと昇華する。最後に、一冊ぽとりと落ちる書き溜めた小説が、とても哀しい。


    名作とは、とっつき憎いと感じる人が多いと思います。そんな人にはまず森見版から入ってみませんか?とお勧めしたいですね。

  • 恥ずかしながら、この中で原作を読んだことがあるのは『走れメロス』のみで、「森見さんの文章で読んだことのない古典に触れられるなら」と思って手に取りました。
    ……のですが。これはもう古典の皮をかぶったただの森見小説でした(笑)
    でも原作を知るきっかけになったので良しとします。

    ふわふわした不思議な感じを味わいたいならオススメですが、私のような理由で読む方は少し期待外れかもしれません。
    面白くないわけでは無いのですが、人を選ぶと思います。
    でもやっぱり最後の話を読むと、よく出来てるな、と思いますね。何気に長編小説です。

    個人的に『走れメロス』の明るさからの『桜の森の〜』の得体の知れぬ怖さが、ぞくぞくします。
    あとは、本の仕様(表紙や目次など)がかわいくてお気に入りです。

  •  流石森見作品。夜は短しや四畳半神話体系の話を織り交ぜつつ、過去名作をトリビュートされた短編集。「カバー」ではなく「トリビュート」だと思う。走れメロスはもう最高に作品だった。太宰の走れメロスを真っ向から否定するような友情。裏切ることが裏切らないこと、というなんともひねくれた大学生達。こういう作品こそ映像化したら面白いだろうに。
     それと、桜の森の満開の下は素晴らしかった。とても透明でうまく言葉にできないけれど、成功していく中での葛藤や、なにより彼女との愛について。久しぶりに心が清らかになる作品だった。

  • くだらなく、そして快活!これこそ森見登美彦!
    京都に住んでいるので走れメロスの逃走経路がありありと目に浮かんでその疾走感が気持ちよい。
    「読み」を問われる藪の中は、小説の醍醐味らしく文章から風景や感情の想像を駆き巡らせられる作品で、好きだった。最後の監督の言葉、それほど僕は彼女に惚れている、が良かった。

  • 「新約」とあるように古典文学を現代風にアレンジした短篇集。
    収録作品は芥川龍之介や太宰治、坂口安吾など。
    なかなか渋いチョイスです。

    おすすめの読み方があります。
    絶対試してみてください。

    この本の他に、収録作品の原文を用意してください。
    それを作品ごとに交互に読むんです。順番は新しい方からでも、原文からでもどちらでもOK!どちらから読んでも違った新鮮さを味わえます。
    難しそう、敷居が高いと思ってた古典文学が物凄く好きになります。
    私なんて「自分で古典文学を現代風にアレンジしたものを書いてみるのも面白いかも!」なんて思ったり。
    森見さんのこの本は私の文学に対する新しい視点を与えるきっかけになりました。

    私のおすすめ収録作品は
    坂口安吾の「満開の桜の木の下で」です。
    素敵なタイトルですよね。ドラマティックな展開を予感させる名題です。この作品はまず、坂口安吾の原文からぜひ読んでください。
    その後に森見さんの作品を読んでください。

    あと芥川龍之介の「藪の中」。
    テンポが良くてワクワクする。ドラマチック。
    芥川龍之介って日本のシェークスピアだなと思います。
    それか三谷幸喜w
    昔の人っていうのが信じられないくらい、展開や発想が新しい。
    すごい人です。

    そして森見登美彦×芥川龍之介は最強のタッグです。

  • 面白すぎる…。どうしよう。

    名作を森見さん流に書き換えてしまった小説。いつもどおりのアホさ加減満載で、ワクワクする小説なのですが、「京都はどんだけ変態が多いんだ」とか「京都大学は変人だらけか」と思ってしまいますよ。いいんですか。

    いや、いいよねぇ、大学。戻りたいよ大学時代。

    「藪の中」と「桜の森の満開の下」、「百物語」は純粋に素敵な小説でした。
    見所はやはり、森見さん全開・詭弁論部満開の「走れメロス」と「山月記」。
    特に走れメロスが最高に面白かった。

    友人は信じる「あいつは絶対に来ない!」と。
    芽野は走る。「あいつが来るはずないと、奴は信じているに違いない」と。
    なぜ桃色ブリーフとか、最終的にそういうことはどうでも良くなります。
    コンナ大学時代、素敵ですね。傍観したいですね。あくまで、傍観するだけでいいところがポイントです。

  • 日本文学の名作を登美彦氏が見事にアレンジ。結局は腐れ大学生の物語なんだが・・・。山月記で斎藤という人物の事の顛末を語った後でほぼ全編で彼を登場させるあたり、彼の物語とも言える。走れメロスは阿呆らしさが満載で大変面白かった。

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