入らずの森 (祥伝社文庫)

  • 祥伝社
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感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396337438

感想・レビュー・書評

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  • まず、民俗的・伝奇的な要素が前面に押し出された舞台設定が私の好みで、最初から嬉しくなる。
    これは「パラサイト・イヴ」(瀬名秀明 著)や「天使の囀り」(貴志祐介 著)などのように、創作された科学的根拠に裏打ちされたSFミステリー、あるいはホラーなのかな…と思いながらページを繰っていったが、どうやらそこまで厳然と定めているわけではないようで、さらには過疎地の農村移住につきまとう諸問題、愛に飢えたティーンエイジャーの苦悩、老親の看取りを巡る家族の軋轢、挫折を味わったスポーツエリートの再生に至る道筋…等々、現代の日本社会が抱える様々な歪みや課題までがてんこ盛りに詰め込まれているではないか。
    それが確かな技術と筆力のおかげで、特にとっ散らかっている感もなく、スムーズに読み進められた。
    人が触れられたくない恥部というか、記憶の底に封印してしまいたい瑕疵のようなものにこうもズバズバ斬り込まれると、もう拒否ではなく感心するしかない。

    肝心要の粘菌にまつわるくだりは、やや説明が硬く回りくどいきらいがあるので少しもったいなく感じ、付け足しのようなエピローグもいかにも凡庸な印象で、そこは残念だった。

  • ジャングル奥地を開拓することで、人類と未知の生物が遭遇し世界に疫病が大流行、致死率が極めて高いウイルス性の病原菌のはなしならば定番である。本書は少し趣向が違い、四国山中の村落で起こる奇怪な出来事の謎がじつは・・・謎解明の面白さは、最後まで読むものを飽きさせない。

  • 文句なしに面白かった!
    平家落人の伝説が残る四国の集落。
    過去にそこで起きた残忍な事件。現代とどう繋がるのか。

    オカルト、伝奇要素が満載で、特に校歌に残された謎を探すシーンは本当に堪らなくウハウハしながら読み進めました。
    まとめ方がとても上手く、最後に色々な事が繋がっていき思わずため息が漏れました。
    久々に面白い伝奇小説が読めました。満足満足!

  • いや~よくできてる作品だ。
    訳あって四国の山あいの中学校で教師をしている金沢圭介、会社勤めが嫌になり脱サラして夫婦で農家を営む松岡隆夫、認知症と心臓を患い埼玉の病院で最期の時を迎えようとしている菅田ルリ子。それぞれの話が並行して語られる。
    圭介の中学校の校歌にまつわる過去が明らかになり、何の繋がりもなかった三つのエピソードが一つに繋がったとき、思わず鳥肌が立った。
    平家の落人伝説、粘菌、南方熊楠、意図的に消された校歌の3番の歌詞、天井裏からしか見えない部屋にいる少女・・・
    ぬり、にゅるり、とぷん、ぴゅちょ、ぎゅるあらゆる気持ち悪い擬音語を駆使して表現される「それ」の不気味さ。
    自分が「それ」に取り込まれていくような心もとなさを感じながら、読む手が止まらない。
    人間の強い負のエネルギーを養分にして巨大に育つ「それ」は深い森の中で今もじっと機会を狙って待っているのか・・・あ~怖かったよ~。でも最高に面白かった。

  • たまたま見かけたホラー作品。ちょっとフリが長かったけど展開は良かった。映画化しやすそう。アイドル主演で。

  • 途中気持ち悪すぎて逆に読むのがやめられなかった!四国山中の限界集落が舞台、平家の落人伝説やら天井裏から見える有るはずのない空間。え、金髪不良ギャルまでも登場?と興味をそそられる題材てんこもりに、まさかの粘菌モンスター!そして南方熊楠先生までもが解決の糸口に関わっていたりと素敵満載でした。初・宇佐美さんなので、他の本も読んでみたいと思います!

  • 複数の独立したストーリーが上手く交錯し、まとめあげられている。
    読み進めるうちにスムーズに先が見えてきてスピード感をもって読める。

著者プロフィール

(うさみ・まこと)1957年、愛媛県生まれ。2007年、『るんびにの子供』でデビュー。2017年に『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。2020年、『ボニン浄土』で第23回大藪春彦賞候補に、『展望塔のラプンツェル』で第33回山本周五郎賞候補に選ばれる。2021年『黒鳥の湖』がWOWOWでテレビドラマ化。著書には他に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『月の光の届く距離』『夢伝い』『ドラゴンズ・タン』などがある。

「2023年 『逆転のバラッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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