映画じゃない日々 (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
3.12
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本棚登録 : 443
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396337940

作品紹介・あらすじ

「あんな男といたら不幸になるよ」この台詞があたしに突き刺さったのは、基樹と離れられない自分と重なったから。彼は浮気をしている。別れなきゃと言い聞かせても、今はやっぱり一緒にいたい…(『彼女じゃないあたし』)。映画を通して、戸惑い、嫉妬、希望-不器用に揺れ動く感情を綴った8つの物語。それぞれに短歌を添えて贈る切ない小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 例えば道で初めて言葉を交わした人から親切にされた時、今日という日が優しさで溢れ特別に思えることがある。一生懸命生きていても、評価されず認められず涙の裏に秘めた感情にも気付かれないことが殆どだ。だけどほんの欠片でもいい、頑張ってるね、の一言に再び前を向く強さを貰えたりする。映画じゃない日々、でも映画みたいな日々があってもいいじゃない。私の人生では私が主人公。欲しいものは自分で手に入れるものよ。エンドロールにはまだ早い。ガラスの靴のヒロインだって、紆余曲折を経て幸せへの階段を自分の足で駆けて行ったのだから。

  • いつも思うんだけど、加藤千恵さんの本はなんか苦手。
    読むのが苦痛。読後感もよくない。
    加藤さん作品は短歌から入ったパターンなんだけど、結果に救いがないものばっかりだから?
    最後まで読むのも苦痛な感じでした。

  • 映画はいいなぁ。
    満ち足りない日常も、閉塞感も、悲しみですら綺麗な画になる。そして1番幸せなところで「めでたし、めでたし」となる。
    ところが、現実はもちろんそうはいかない。満ち足りなさも閉塞感も悲しみも、乗り越えて、もしくは抱えて一緒に生きなければならない。もちろん「めでたし、めでたし」の向こう側にある日々も。

    そんな「映画じゃない日々」を生きる8人の女性たちの短編集です。
    加藤千恵作品は読むと苦しくなることを知りながら、いつも読んでしまいます。淡々と過ぎる日常に潜む、むなしさとか閉塞感を描くのが本当に上手くて辛いです。

    加藤千恵の別の作品に、「悩んでいるなら言えばいいんだ。弱っているなら癒せばいい。傷があるなら治せばいい。けれど。けれど、悩んでも弱っても傷ついてもいないなら、どうすればいいのだろう。 」っていう言葉があって、この本に描かれている閉塞感とか、なにか足りない感じって、まさにこの手のものだと思います。
    明確な解決策も逃げ道もない、でもそれは確かに存在していて、だからこそもがくという種類のもの。
    痛いから、絶対に棘が刺さってることは間違いないんだけど、どうにも目に見えないから取れないみたいな?笑

    だから、主人公達もみんな霧が晴れてスッキリ!なんて結末にはならないのだけど、少し心が軽くなるとか、小さな光が見つかったりします。

    そんな小さな光でも、そちらに目を向けることで、棘の痛みを少し忘れることができて、そのうちに、棘のことすら気にならなくなっていくのかな。でもたまに思い出したように痛んだりして。それって「映画じゃない」からこそ味わえる機微なのかもしれません。

  • 読み終わった後、悲しくも楽しくもならない作品。穏やかで、日常の中に溶け込むような物語だと思った。

    様々な立場の8人の女性が、それぞれ主人公になっていて、誰も現状に満足していないが、それを変えようと思うこともない。今の立場を納得して、受け入れて、自立している感じがした。

    私は、ひとりで外食も映画を観ることもできないので、「ゴールじゃない結婚」の主人公に共感できた。たまに、他人の不幸話が嬉しいのって、やっぱり自分は幸せだと確認したいからかも。

  • 連作短編というのはよくあるけれど、これは「同じ日の同じ映画館の同じ回を観ていた」7人と、スペシャルゲストとでもいうべき8人目、という形が面白い。

    同じ映画を観ても、つまらん人もいれば良かった人も。しかも良かったと思っているくせにそう言えない人も。女子高生にOL、主婦、フリーター、女子大生と、どの女性も大なり小なり鬱屈した思いを抱えていて、心に残る言葉や琴線に触れるシーンもそれぞれちがう。読んでいて時折イライラさせられるのは、きっとそんな部分が自分にもあると気づくから。

    あ、私は映画はひとりで観たいです。劇場で年間250本、99%ひとりです(笑)。

  • 購入当時、映画館で映画をみる事が増えそれが楽しかったので、映画をテーマにした加藤千恵のこの小説が読みたいと思った。
    前からすこし気になっていたし。

    共感したりなるほどと思ったり、登場人物の暮らしぶりにへぇと思ったけれど、そこまで響かなかったな。
    なんか、文が固いというか何というか…そんな印象をどの話にも感じて。
    最後が映画主演の女優というのが面白かった。
    映画館受付の女性も出るかなーと思ったけど、出なかったね。

  • とある映画館である1本の映画を同じ日の同じ時間に見た10~20代の女の子たちの物語。加藤千恵さんは若い女性の心理描写が本当に上手。そして登場する男の子は大概ダメ男。同じ映画を見ていてもそれぞれ違う思いで映画館に足を運び、それぞれに物語がある。加藤さんの日常の切り取り方が好き。最後に添えられる短歌も絶妙なスパイスになっている。2012/645

  • 2015/1/18読了

  • 同じ映画館で同じ映画を見た女性たちそれぞれの話。目立つこともない普通の人たちにもそれぞれ悩みやストーリーがある。
    加藤さんの言葉は綺麗だな、と思う。
    この言葉書き写したい!と思う箇所がいくつもある。
    ただ私的にはハニービターハニーとかの方が良かったかな。友達に読ませたいと思う話はあったけど、あたし自身が共感できる部分は少なかったかも…。
    ただみんな必死に悩んで生きているのだなとは思った。

  • 加藤千恵さんらしい作品に加藤千恵さんらしい短歌が添えられた、良い作品でした。
    佐藤真由美さんの解説も良かった。

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著者プロフィール

1983年、北海道生まれ。歌人・小説家。立教大学文学部日本文学科卒業。2001年、短歌集『ハッピーアイスクリーム』で高校生歌人としてデビュー。2009年、『ハニー ビター ハニー』で小説家としてデビュー。その他、詩やエッセイなど様々な分野で活躍。著書に『あかねさす――新古今恋物語』『真夜中の果物』『こぼれ落ちて季節は』『この街でわたしたちは』『消えていく日に』『そして旅にいる』『マッチング!』などがある。

「2023年 『この場所であなたの名前を呼んだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

加藤千恵の作品

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