もう二度と食べたくないあまいもの (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396338312

感想・レビュー・書評

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  • 喫茶つばらつばらで手に取り、一編読んだらピタッとはまり、全部読みたくなり、購入。表題作はなく、帯に、男女の間にふと訪れるさまざまな「終わり」を描いた10の物語、とあり、解説に、ままならぬ物語、とあるが、もう二度と食べたくないあまいものとは、男女の間にある燃え上がるような瞬間、少なくとも片方はそう思えるようなひと時を指すのだろうか。ずっと、庭に出て電話をしてると思ってた男に、誰と話してるの?と問えば、誰とも、とかえってくる、背筋のすっと寒くなるシーン。「フォークナーってなんか気がくるってるよね」という一言。嘘つきで一人の女に忠誠を尽くせないと自分でおもいきわめ、ふらふらと団地で流しのカレー屋をする男。別れた夫の母と妹たちと一夏を過ごすことに決めている女。朗読会という口実で出かけて、密会していたのに、ある時本当に朗読会に出て、今の男にとっての自分の軽さと、夫への大切さに思いを馳せた妻、などなど。古本、幽霊、オークション、奥さん、手紙、などぶっきらぼうな名詞のタイトルとそこに流れるどこか練れた爛熟した雰囲気を楽しむ。

  • 人は誰しも素敵な恋がしたい、かく言う私もそう。
    ドロッドロで、濃厚で、赤黒い大人の恋愛でした

  • *自宅で料理教室を開いている亜希子のもとに、ある日、不動産屋が訪ねてきた。近所の家にまつわる悪い噂について知りたいという。亜希子は結婚していた頃、かつてそこに建っていた古い家の男と、いちどだけ関係を持ったことを思い出していた(「幽霊」より)。男と女の関係は静かにかたちを変えていく。人を愛することの切なさとその愛情の儚さを描いた傑作小説集*

    何年かぶりの再読。
    ああ、やっとこの世界観がわかる歳になったなあ・・・としみじみ。

    恋の終焉、もしくは恋とも呼べない何かの終わり。
    捉えどころのない、諦めと安堵を織り交ぜた名のない感情。
    ひと歳重ねた大人にこそ響く物語なのかもしれません。
    とにかく、まとめて読むともったいない。一つ一つ丁寧に、大人の情緒を味わいながらゆっくり読むのがお勧め。

  • 本の雑誌のランキングから、かな。10短編集なんだけど、正直なところ、一つも印象に残っておりません。やっぱり短編集は苦手、ってことかな。

  • 「楽しければ笑顔」、「悲しい時は涙」というわかりやすい感情の表出では尽くせない心の機微が、実に繊細に、そして書き過ぎない言葉の中に秘められている短編集。年齢や経験を経て、淋しさや未練、執着などの思いを抑制し過ぎる登場人物たち。「もっと怒ればいいのに」「『淋しい、こっちを向いて。』と必死に訴えればいいのに」、と他人事では言えるのに、私自身もう言えないよなあ。なのに、ないことにして溜まった負の感情って、作品のなかでは「どうしてそうなる?そうする?」って形で暴走しちゃっているパターン。最後の「裸婦」が特に好き。

  • 恋愛感情の終焉をテーマにした短編集。
    どの話も何てことのない終わりかたで、それで?って感想を抱く人も少なくないはず。それでも、個人的には、この話のあの人の描写に共感したり、ドキッとしてしまった。
    特に裸婦って話のラストと、奥さんに登場するカレー屋さんの表現は印象に残った。こんなのがうまい作家さんなんだよね。

  • 微妙、いや絶妙なんだ。
    一見なんでもないようでいて心が動いている、自身も気がつかない程の、わずかな心の動き。感じているようだけど無かった事にしちゃってる、あの感情をなんとなしに思い出した。
    繊細でもドライ、そんな不思議な雰囲気の物語達に案外スルスルと吸い込まれてしまった。

  • だからなに?ってかんじで終わる、短編集。
    読みやすいんだけど、よくわからない世界の話が多い。
    奥さん 強いて言えばこの話は納得がいくおわりかた。

  • 日常の延長にある恋愛をテーマにした掌編小説集。日本語が明瞭で、ちょっと硬い印象だが読みやすかった。

    幽霊
    手紙
    奥さん
    自伝


    朗読会
    オークション
    裸婦
    古本
    収録

    解説/吉田伸子
    カバーデザイン/坂川事務所、カバーイラスト/宮原葉月

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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