手習い師匠 取次屋栄三 (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396340230

作品紹介・あらすじ

これぞ天下一品の両成敗!
剣客にして取次屋、その表の顔は手習い師匠。
栄三が教えりゃ子供が笑う! まっすぐ育つ!

手習い子の一人・太吉が新参の巳之吉を殴った。理由
を言わぬ太吉に、太吉の非を言い募る巳之吉。双方納
得がゆく〝納め時〟を見極めんとする師匠の秋月栄三
郎だったが、即座に太吉を叱らぬ栄三郎に巳之吉の父・
儀之助は激高。結果、巳之吉は姿を見せなくなり、栄
三郎には不穏な影が……。剣客にして取次屋、その表
の顔は手習い師匠。栄三が示す心温まる人生指南とは?

感想・レビュー・書評

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  • 手習い師匠 ― 取次屋栄三シリーズの12作目
    2014.03発行。字の大きさは…小。
    しあわせ、のぞみ、小糠三合、手習い師匠の4話。

    武家と町人の間を取りもつ「取次屋」を一方の生業とする栄三郎は、「取次」を通してその周囲にえも言われぬ心地よい縁を次々と築きあげていた。そんな栄三郎に惚れ込んだ田辺屋宗右衛門は、何かというと栄三郎とその仲間の輪の中に自分もどっぷりと浸りたくて、あれこれお節介を焼いている。

    「手習い師匠」は、子供同士の喧嘩といっても栄三郎は、一人の人格を持った人間として接して行く様は、学ぶべきところが多い話です。物語は、手習い子が一方的に殴ったとこから始まり、殴られた子の親が出て来る騒動になる。それを見事に解決して行く。円熟味が増してきたように思います。

    【しあわせ】
    田辺屋宗右衛門の援助で新・岸裏道場が再出発する。
    岸裏伝兵衛は、栄三郎に吉原で知り合った遊女・里雪ことおくにを引き合わせる。おくにの依頼は、吉原で馴染み客であった4人の客の消息を調べてほしいとのことであった。調べると伊勢屋の若旦那は、上方で飛び降り自殺をしていた。次の戯作者・松並伊左衛門は、料理屋で会っている所を同心・前原弥十郎に捕まってしまう。
    読みながらおくには、疫病神かと思い……。

    【のぞみ】
    おくには、あと2人の馴染み客に礼を言いたいという、医師・平川長三郎は、遊女の治療をしすぎて本業の診療をおろそかにし、あろうことかやくざの五助に劇薬の調合を教えてしまう。それを悪用して病で働けない遊女を自殺に追いやった。これを知り長三郎は、死のうとした所を妙心寺の住職に助けられ、僧侶となる。
    最後は、乾物問屋近江屋の主人・元右衛門は、遊びがたたって病で寝込んだのを内儀に奥に監禁されてしまった。元右衛門の頼みは、外に作った息子・蔵吉がどうなっているかである。おくには、蔵吉を引き取り育てていく決心をする。
    おくには、最後で好いことをしたと思う(^-^)

    【小糠三合】
    質屋で偽の名刀を質入れし、脅して3両せしめることが頻発する。栄三郎は、頼まれて調べていくと旗本150石・大貫慶次郎が、妻女のためにお金を作るためと分かる。慶次郎は、養子であり、美貌の妻女に惚れ、妻女のいいなりに金の工面をしている。金が無くなり質屋で詐欺まがいに金を作っていた。
    どうしても養子は、立場が弱い「小糠三合あるならば入り婿すな」と言うが、納得できる。

    【手習い師匠】
    手習い子の太吉が巳之吉を一方的に殴った、殴られた巳之吉が栄三郎に訴えたが、栄三郎は、太吉を叱らず「喧嘩は両成敗だ。お前の言い分ばかりを聞いておられぬ」と取り合わない。巳之吉の父親・儀之助が、栄三郎になぜ太吉を叱らないのだと言いに来るが。太吉が巳之吉を殴ったのには、何か理由があるはずだ、それを確かめてからにしたいと言うと。儀之助は巳之吉は、間違ったことをしていない、太吉を叱るべきだと……。
    栄三郎の取り持ちで、仲直りをしたときに。又平が栄三郎に「大事な話はこちらから訊ねなくても、向こうの方から話に来る……。何やら手妻を見せられているかのような……」と言うのがよく分かる栄三郎の動きである。円熟味が増してきたように思います。

    【豆知識】
    「吉原遊郭の遊女の年季」は、一般に 「最長10年、27歳まで」 という原則がありましたが、これはあくまでも原則。禿(かむろ)からスタートした遊女は、客を取り始めてから10年が適用されたため、実際妓楼(ぎろう)にいる年月は10年をはるかに超えたのです。
    さらに、妓楼で生活していく中でもいろいろと出費を強いられ、結果として借金を背負うこととなるケースもあり、年季が明けた後も数年継続して働かねばならなかったり、鞍替えという形でほかの妓楼に売られたりすることもありました。
    このため、健康なままの状態で無事に年季明けを迎える遊女は少なく、中には20代で病死(性病、過労死など)する遊女も多かったようです。

  • こんな手習師匠がいたら、幸せだなぁ。

  • 親まで教え諭す栄三である

  • 前作がイマイチだったので、今回は思ったよりよく感じる。最初の2話が連作になっていて、いい人過ぎる人たちばかりの嘘っぽい話なのだが、これが、意外と良い感じ。栄三物語りも円熟の域に入った感がある。

  • 201404/お馴染みの世界を楽しめる取次屋シリーズ12作目。時代や作者の世代を思えば仕方ないんだろうけど、表題作はイマイチ。両成敗というより、ギノスケ親子のほうがより非があるようなもっていきかたというか…栄三なら違う方法で解決してほしかったな。

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著者プロフィール

一九六一年、大阪市生まれ。立命館大学卒業後、松竹入社。松竹株式会社九十周年記念新作歌舞伎脚本懸賞に「浪華騒擾記」が入選。その後フリーとなり、「水戸黄門」「必殺仕事人」などのテレビ時代劇の脚本を手がける。二〇一〇年、『取次屋栄三』で小説家デビュー。他に「若鷹武芸帖」「八丁堀強妻物語」「仕立屋お竜」などのシリーズがある。

「2023年 『明日の夕餉 居酒屋お夏 春夏秋冬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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