- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396340650
感想・レビュー・書評
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深川慕情 ― 取次屋栄三シリーズの13作目
2014.09発行。字の大きさは…小。
たそがれ、老楽、奴と幽霊、深川慕情の4話。
気楽流の印可を受けた剣客・秋月栄三郎は、旗本三千石・永井勘解由邸の奥向きで剣術指南の出稽古を月2回務めている。そこには、かつて客と遊女として激しく惹かれ合った思い出を共有する、奥向きを取り締まる老女・萩江……。
「深川慕情」は、勝気で男勝りであるが、決して男になろうとはせず、強がりは言っても女の気持ちを忘れずに、時としてはっとするほど嫋やかな姐さんぶりを見せるお染……。
私は、萩江、お染と老楽の恋に落ちる…。あぁ~、危ない。
【たそがれ】
早合点で薀蓄野郎の定町廻り同心・前原弥十郎の妻・梢は、永井家の老女・萩江に頼んで栄三郎に夫・弥十郎に隠し子が居るかを調べてほしいと依頼してきた。栄三郎が弥十郎を釣りに誘い聞き出すと、役目変えで高積見廻り方になると思い悩んでいるという、そして、隠し子を居ないことが分かる。
作者は、前原弥十郎を、おかしみを表すような人物として設定している。これが物語の息抜きになっていていい。
【老楽(おいらく)】
羅宇師の義太郎は、義父で煙管師の鉄五郎がどうもおかしいと栄三郎に相談に来る。鉄五郎は、騙されているとも知らず「すあい」を生業とするお玉に恋してせっせと通っているが。お玉は、名人・鉄五郎の煙管が欲しくて色仕掛けにかけているのである。栄三郎は、お玉を説得して手紙を置いて江戸を離れるように……。
堅物の男が、年を取ってから娘ぐらいの年の女に惚れると大変です。よく老楽の恋といったものだ、他人ごとではない(汗)
【奴と幽霊】
旗本三千石永井勘解由邸に幽霊騒ぎがあり、栄三郎と松田新兵衛が呼ばれる。幽霊は「我は土原東二郎……。我が恨みを晴らしてくだされい……」と言う。栄三郎が調べると土原は、元勘定方であったが家士に斬られて死んでいた。幽霊を捕まえると、それを見た3人の旗本が疑わしいと言う、そこで3人に土原の幽霊を出して脅すと……。
この物語は、ドンドン面白くなっていく(笑)
【深川慕情】
勝気で男勝りであるが、決して男になろうとはせず、強がりは言っても女の気持ちを忘れずに、時としてはっとするほど嫋やかな姐さんぶりを見せる。そして何よりも、お染は栄三郎という剣客とも手習い師匠ともつかず、取次屋などというやくざな稼業を続けている男を、だれよりもおもしろがっている。そのお染が、むかし自分のために人を殺した礼次のことで千三の吉二郎に脅されている。
お染といい萩江といい、いい女だな。俺もこんな女が現れたら危ないな……。
【豆知識】
「煙管」(きせる)とは、日本の喫煙具の一種で、パイプに類似する。
構造は、大きくわけると、刻み煙草を詰める火皿(椀形の部分)に首のついた「雁首」(火皿の付け根から羅宇と接合する部分まで)、口にくわえる部分の「吸い口」、それらをつなぐ管の「羅宇」(らう)にわけられる。また、羅宇の語源は、羅宇国(現在のラオス)の竹(黒斑竹)を使用していたことによるというのが定説である。なお、上記の様な区分けがなく全て繋ぎ目なく繋がっているものは「延べ(延べ煙管)」という。
「すあい」とは、牙婆(がば)とも言う。物の売り買いの間に立って口銭をとる者のことで、主に衣服を扱う女が多かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お染さんの恋物語。
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最後の手段も大事な女の為なら躊躇なくやるんだ
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物語的には安定感のあるシリーズであり、分かっていてもなんとなく読みたくなる。今回は各話のメインに懐かしい人やレギュラー人が据えられているので、別の意味でも興味深い。相変わらず文章には深みは無いが、描き出す世界は面白い。
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第4話―深川慕情
お染が封印して来た礼次との恋
お染を守るため人を殺めてしまった礼次は「くれぐれもこの先、おれに義理立てなどするんじゃあねえよ・・・」
礼次を人殺しにさせてしまった自分が、新たな恋など出来るはずはない。
初めて明かされた染次の過去。 -
201409/今回も無難に安定感のある物語。