ヒポクラテスの誓い (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396342104

感想・レビュー・書評

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  • 職業にするからには徹底的に個人の想いは不要。真実がその人のためになる。語れない人のために否応なく突き進む姿勢に感銘を受けました。

  • 五つの短編。法医学教室の光崎教授の死者に対する圧倒的な解剖術と、研修医の真琴の成長の物語かと思ったら、全ての話が繋がっていた。普通の事故や病死と思われた死体を強引に解剖するという荒業を使って行うのは何故か、後半になって来ると何となく分かってくる。
    仕事ができなくて法医学教室ヘ送り込まれたと思った真琴にしても違った思惑が。
    真琴を送り込んだ上司に関してどんどん違和感が起きてくる。
    医学的な知識が無くとも、内容が面白いのであっという間に読み終えた。

  • 浦和医大、法医学教室に入った、研修医の栂野真琴は、治療も延命もできない医学に、価値はあるのか?
    と、いささか、懐疑的。

    教授は、光崎藤次郎。
    海外では高い評価を受ける傍ら、国内では、今ひとつ知名度が低い。

    准教授は、紅毛碧眼、日本語を流暢に喋る、死体好きのキャシー・ペンドルトン。

    警察との連絡役として、埼玉県警の古手川和也。

    泥酔状態で、凍死した中年男性。
    自転車に乗って、交通事故に遭い、死亡した女性。
    レース中に激突死した、競艇選手。
    自宅療養中、容態が急変し、治療中に死亡した、マイコプラズマ肺炎患者。
    等、事件性のなさそうな遺体を、半ば無理やりに解剖する光崎教授。

    しかし、何度か、光崎教授の元で、解剖をするうちに、真琴は、深奥と存在意義を知り始める。

    光崎教授は、「全ての死体が、好奇心の対象だ」と豪語し、
    「既往症のある遺体が出たら教えろ」と、古手川刑事に指示していた。
    果たして、その真意は?

    解剖シーンでは、臭いまで漂って来そうな、臨場感。
    なかなか面白かった。

  • 中山七里さん『ヒポテクラスの誓いシリーズ』1作目 
    今度は法医学の世界に踏み入れた?!
    幅広さに脱帽。。。
    解剖シーンでは、強烈な解剖室や死者の匂いがしてくる様な錯覚さえ覚えた

    主人公の研修医とお馴染みの法医学の権威・光崎教授、外国人准教授・キャシー、そしてもっとお馴染みの古手川刑事が、亡くなった5人の解剖を経て、死因の真実を導き出していく話
    5話短編ではあるが、繋がりがあるので全くそれを感じさせない
    主人公の研修医はまともだが、それ以外はやっぱり濃厚キャラ(笑)
    真実を探るためなら、遺体に隠されたものを暴くためなら内規も手続きも無視して突っ走る光崎教授に、いつの間にか魅了されていく研修医の姿が頼もしい
    「あなたが言いたいことを教えて_」
    と死体に語りかける主人公
    続編もお決まりのセリフになるのだろうか?

  • またまた作者買い!
    中山七里先生の小説なら、何を買ってもまずハズレが無い!この本も然り!

    おっとこの本は、中山七里先生の本にはしょっちゅう登場する光崎先生の本ではありませんか!
    しかも古手川刑事まで(*^^*)
    こういうサービス精神が堪らない。

    しかし主役は、栂野真琴という浦和医大の研修医。
    単位不足のため、法医学教室に入ることになるのだが、彼女を出迎えたのは法医学の権威・光崎藤次郎教授と「死体好き」な外国人准教授キャシー。

    光崎の信念や、解剖にかける情熱、その腕に魅せられ、真琴は次第に光崎の世界へのめり込む。
    にのめりこんでいく。

    光崎は古手川刑事に「管轄内で既往症のある遺体が出たら教えろ」と言っていた。なぜ光崎は既往症に拘泥するのか?

    一編一編の短編自体も、とても惹かれるのだが、全体像が見えてきた時、物語は最高潮に!

    流石の中山七里先生。
    医療ミステリ書かせても流石の一言!

    古手川と真琴の関係も微笑ましく、古手川のあの事件にも触れられ、中山先生ファンはワクワクするような一冊だろう。

  • 法医学関係のテレビドラマを見ているかのようにスラスラと読めて、気がついたら読み終わっていました。表には出てこない謎を解き明かす、という点では確かにミステリー。

    医療に関するストーリーを書くには専門知識が必要ですね。中山七里さんはどうやってこれだけの作品を作り上げるだけの知識を身につけたのだろう?分からない病名や様々な症状に対処する薬品の名前がどんどん出てきます。ただ、分からなくても読む障害にはならない。私のように医療に疎いものでもストーリーに真実味が宿ります。

    熟練を極めた解剖医が神技のようなメス捌きで真実(本当の死因)を究明していく。その様子を描く中山さんの「筆捌き」によって、死体と向き合う恐れ、暗さのようなものをほとんど感じさせません。むしろスッキリとした気分にさせてくれました。ストーリー自体はシンプル。

    伏線として様々な死因の影に隠れている真の問題を解き明かしながら、最後に回収していく。少し強引さは感じましたが、最近読んだ医療ミステリーの中では(私の中では)秀逸でした。

    この作品はシリーズになっているらしいですね。他の作品にも挑戦します。

  • 出だしからキャッチーで
    あっという間に引き込まれた!

    そんな物語の舞台は法医学…
    つまり扱うのは死体
    グロいはずなのにスラスラ読める不思議

    ミステリーだけれど
    小難しいトリックが展開されることは全くなし
    本当の死因、真実を解剖によって突き止めていく

    テンポも抜群で
    中弛みせずに一気に読み進められる

    何よりキャラクターがキレッキレ!
    いまどきの小説で?と驚くくらい
    天上天下唯我独尊な光崎教授と
    カタコトの毒舌を撒き散らす
    外国人のキャシー准教授、
    この2人だけでもう面白い

    ミステリーの種類?としては新しく感じるのに
    キャラクターはなんだか懐かしく感じる
    このちぐはぐさが魅力で次作が楽しみ!

    今作で何度も出てくる
    「生きている人間は噓を吐くが、死体は真実しか語らん」
    は印象深かったなぁ

    でもなんと言っても
    「あなた、死体はお好き?」
    という冒頭のキャシー先生のセリフが一番!
    面白い小説は1行目から面白い♪

  • R1.9.13 読了。

     「全5話からなる1話完結の短編連作。解剖医の矜持と新人研修医の情熱が、隠された真実を導き出す。勧善懲悪とはちょっと違うが、真実の究明を核とする痛快無比のエンターテインメント性を正面から追及するのが本書の魅力。」・・・解説より。
     偏屈者の法医学の権威、光崎教授の職務に対する己の信念がかっこいいですね。カエル男にも登場した古手川刑事も良い味出してます。とても面白かった。
     続編の「ヒポクラテスの憂鬱」も読みたい。

    ・「法医学は生きてる者をも救うことができる。」
    ・「そして感情に左右されて導き出される結論の多くは幼稚であり、拙速だ。いい悪いは別にしてな。」
    ・「怒るのは、その相手に期待しているからです。期待していた能力を発揮してくれなかったことに怒りを感じるからです。」
    ・「どんな患者にも分け隔てしない。いいえ、それがどころか生者も死者も区別しない。自分の前に横たわっていたら、それが例え敵であっても全力を尽くして治療に当たる…それが医療に携わる者の本分じゃないかって思えてきたの。」
    ・「部下にとって1番不幸なのは、暴君のような上司に当たった時ではない。無能な上司に当たった時でもない。責任をとりたがらない上司に当たった時が最悪なのだ。」

  • 腕は超一流だが「傲岸不遜で、野卑で、皮肉屋で、独善的」な法医学者、光崎教授が、死因に隠された謎を解いていく、法医学ミステリー。

    光崎教授にこき使われるのは、キャシー准教授、研修医の栂野真琴、そして古手川刑事。何故か古手川刑事の上司、渡瀬班長(実績抜群だがルール無視のヤクザな警部との触れ込み)は登場しない。そういえば、渡瀬・古手川のコンビは「合唱 岬洋介の帰還」に登場してたな。「テミスの剣」「七色の毒」「ハーメルンの誘拐魔」は渡瀬班長が主役のようなので、これらの作品も何れ読んでみたい。

    5章で構成され、光崎教授が各章で一体ずつ死体を解剖していく、連作短編形式。そして、各章に共通した謎も用意されている。光崎教授が古手川刑事に出した指令(「病死でも事故死でも殺人でも何でも構わない。管轄内で既往症のあるホトケが出たら逐一教えろ」)の意図は一体何だったのか?

    光崎教授の華麗なメス捌き、そして研修医、栂野真琴の成長が読みどころかな。シリーズ化されているので、読み進めたい。

  • 法医学ミステリー。色んなところに登場する光崎教授の法医学教室が舞台。同じくいろんなところで顔を出す古手川和也も登場して、主人公の研修医・真琴とは良いコンビになりそうな予感。准教授のキャシーの性格も個性的で、陰惨な雰囲気を緩和してくれてる気がする。

著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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