ふたりのねこ

  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (1ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396460495

作品紹介・あらすじ

ひとりっこのぼっちゃんは、いつでもぼくといっしょだったこと。どこにでもつれていってくれて、ねるときもまいばん同じおふとんだったこと。おきにいりのクレヨンで、ぼくの絵をたくさんかいてくれたこと。かなしいときは、ぼくにかおをうずめてなみだをふいていたこと。このお腹だってはじめはまっ白だったんだ。バッグ付き絵本として発売直後から大反響だった「ふたりのねこ」が、絵本として再登場。カバーは描き下ろし!!

感想・レビュー・書評

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  •  月刊「MOE」の連載で初めて知った時から、その独特な世界観に魅了された「ヒグチユウコ」さんの絵本(2014年)ですが、その魅力は、おしゃれで奇抜でインテリアに出来そうなセンスの良さだけではなく、絵本としての作品の素晴らしさもあると思う。


    『あの夏のおわり、
    いまでもはっきりと
    おもいだせる公園での日々』

     それは、そこの茂みで倒れていた「ニャンコ」が出会った「ねこ」との、家族の日々。

     ニャンコはぬいぐるみで、いつも一緒だった、「ぼっちゃん」とはぐれてしまい、その帰り方が分からず、ねこは、元々4匹きょうだいだったけれど、面倒を見切れない飼い主が一匹だけ残して、この公園に捨てられ、生まれて日も浅い彼らはバラバラになってしまった、共に独りぼっちの存在。

     そんなねこの全身黒ずくめの服は、知らない人間から酷い目に合わされたことによる、不信感の表れとも感じられる中、ふたりは家族となる。

    「そのおうち、さがそうよ」

    「いっしょに?」

    「そう、いっしょに。
    だから あたしたち、かぞくよ」


     紙質の異なる、柔らかく儚い見返しに描かれた、根の露出した花たちが問い掛ける。

     『私たちにも生きる権利はあるのでしょうか』と。

     扉絵や本編に登場するリボンには、結ばれて繋がりたい、何かに縋りたい、そんな切実さが込められており、場面毎に色鮮やかに立ち替わる背景の色は、彼らの心理描写を表しており、カーテンには始まりと終わりの意味合いを感じさせる。

     タイトルの「ふたりのねこ」は、別に「二匹のねこ」でも良かったが、そうではない点や、ねこが何故人間の体型であるのかや、ぬいぐるみが何故動いて話をすることが出来るのかなどは、全く問題視していない点に、却って人間にとっては耳の痛い話なのかもしれない、それらは人間だけがこの世に我が物顔で生きている思い上がりを、そっと教えてくれているようでもあり、猫の側から、わざわざ『ふたり』と言われないと気付かない、それは猫と人間に上下関係など一切なく、共に等しくありのままに存在していることであり、同じ星で生きているもの同士として、それは当たり前のことでは無かったのか。

     また本書は、そうしたメッセージだけではなく、ねことの大切な思い出に寄り添うニャンコの直向きな家族愛も心に響くものがあり、最後のカーテンを擬えたそれには、ぬいぐるみのニャンコがこうして感情を持って動くことが出来たように、それに変わって動いてくれと言っているかのような切実さが、また胸に迫り泣けてくる。

    『あの夏のおわり、
    いまでもはっきりと
    おもいだせる公園での日々』

     そう、確かにそれはあったし、これからもきっと存在し続けるであろうことは、表紙カバーの両端を見ることの出来る私には分かることから、希望は、たとえ目に見えなくとも、ずっと信じ続けることが大切なんだということを、ニャンコに教えてあげたいし、それを見ることで私も生きていく励みにすることが出来る、そんな本書の丁寧な作り方は、見た目こそ奇抜なのかもしれないが、それに惑わされない内面を見ることの大切さも、私に教えてくれた。

    • かなさん
      たださん、こんにちは!
      ヒグチユウコさんの絵がすごくいいなって
      別の作品から思って、
      それからこの作品も最近読んでいたので、
      たださ...
      たださん、こんにちは!
      ヒグチユウコさんの絵がすごくいいなって
      別の作品から思って、
      それからこの作品も最近読んでいたので、
      たださんがレビューしてくれて嬉しくなりました(*^^*)

      絵だけでなく、
      ストーリーもよくて
      この作品私も大好きな作品になりました。
      たださんのレビューが素敵すぎて
      恥ずかしいくらいだけれど
      いつかレビュー投稿したいと思ってます。
      2023/08/27
    • たださん
      かなさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます(^^)

      そうでしたか(*'▽'*)
      ありがとうございます。
      元々は、フォローしている...
      かなさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます(^^)

      そうでしたか(*'▽'*)
      ありがとうございます。
      元々は、フォローしている方の本棚で興味を持っていたのですが、「MOE」の連載で、その世界観の面白さに惹かれ、本書が初めて読んだ絵本になりますが、もうヒグチさん独特の美意識に魅了される中にも、物語中の、直向きでやり切れない感情表現には結構、涙腺が刺激されまして、家族を実感するのは、一緒にいる時間の長さではなくて、その内容かもしれないなと、色々と考えさせられた作品でもあり、他の作品も読みたくなりました。

      かなさんのレビュー、楽しみにしてますね(^-^)
      2023/08/27
  •  「ながいながい ねこのおかあさん」で、ヒグチユウコさんの絵をみたことがきっかけで、こちらも読んでみました!ヒグチユウコさん、結構有名で好きな方も沢山いらっしゃるんですね!この作品は、もともとバックの付録読本だったんですって…!

     ストーリーの方は、公園で出逢ったふたりの猫が主人公です。ひとりは、突然ひとりぼっちになってしまった猫のぬいぐるみの「ニャンコ」、もうひとりは「ニャンコ」を拾った野良猫の「ねこ」…。ふたりは、家族となり「ニャンコ」の持ち主である、ぼっちゃんを一緒に探すことにする…。一緒に過ごすうちに、ふたりはお互いにとってかけがえのない存在になるが、別れは唐突に訪れる…。

     読み終えて、あったかい気持ちとちょっとさみしい気持ち…このふたりの猫ちゃんの純粋で優しい気持ちに癒されました!ヒグチユウコさんの描く猫は、リアルで可愛くってシュールな印象で癖になりそうです(*^-^*)

    • かなさん
      たださん、おはようございます!
      コメント、ありがとうございます。
      ヒグチユウコさんのことを知ったのは
      「ながいながいねこのおかあさん」...
      たださん、おはようございます!
      コメント、ありがとうございます。
      ヒグチユウコさんのことを知ったのは
      「ながいながいねこのおかあさん」で、
      キューライスさん目当てだったのですが絵もいいなぁ~って♪

      ヒグチユウコさんの作品を読むたびに
      深みが増して、もっと読みたくなりますよね(*^^*)
      ニャンコのぬいぐるみが、ほしくなります!
      私もこの作品以外にも
      ヒグチユウコさんの作品を読んでいるので
      レビューしますね!
      たださんはいつも、ステキなレビューを投稿されるんで
      恥ずかしいんですが(^-^;
      2023/09/10
    • たださん
      かなさん、お返事ありがとうございます♪

      そういえば、この絵本、ニャンコのぬいぐるみの原型も載っていましたね。
      私も欲しくなりました(*´ω...
      かなさん、お返事ありがとうございます♪

      そういえば、この絵本、ニャンコのぬいぐるみの原型も載っていましたね。
      私も欲しくなりました(*´ω`*)
      2023/09/10
    • かなさん
      たださん、こんばんは!
      コメント、ありがとうございます♪
      ね、ニャンコとアノマノのぬいぐるみがあったら
      いつもそばにおいて、一緒に過ご...
      たださん、こんばんは!
      コメント、ありがとうございます♪
      ね、ニャンコとアノマノのぬいぐるみがあったら
      いつもそばにおいて、一緒に過ごして
      時には抱きしめて…そうしたくなりますよね(*´▽`*)
      2023/09/10
  • 見開きの紙がデパートの包装紙みたいで素敵だった。
    子猫とぬいぐるみの猫がひと夏の間家族になった心温まるお話。

    • かなさん
      翠さん、おはようございます!
      ニャンコ、めっちゃ可愛いですよね(*´▽`*)
      ヒグチユウコさんの絵は、やっぱり好きです♪
      翠さん、おはようございます!
      ニャンコ、めっちゃ可愛いですよね(*´▽`*)
      ヒグチユウコさんの絵は、やっぱり好きです♪
      2024/02/20
    • 翠さん
      かなさん、こんばんは(^^)
      ヒグチユウコさんの絵、最初はちょっと怖いかなと思ってしまったんですが、だんだんとハマりますね!
      そしてどっちも...
      かなさん、こんばんは(^^)
      ヒグチユウコさんの絵、最初はちょっと怖いかなと思ってしまったんですが、だんだんとハマりますね!
      そしてどっちも「ニャンコ」ちゃんなのも可愛くて。
      ぬいぐるみの方のニャンコちゃんは他にシリーズがありそうなので、そちらも読んでみようと思ってます(^^)
      2024/02/20
  • 公園で出会った二人の猫。
    ヒグチユウコさんの精緻な絵で描かれる切ない愛のお話。

    可愛らしい女の子猫の顔を繊細に描いたイラストだけでも見ごたえがありますが、黒いワンピースを着ている。
    これが「ねこ」と名乗った本物の猫。
    「ニャンコ」と名乗るのは、ぼっちゃんとはぐれてしまった、ぬいぐるみ。

    ぼっちゃんとはずっと一緒で、とても仲良しで、どうしてはぐれてしまったのかわからない
    「ねこ」は人間なんて信用できないと思っているのだが、一緒に家を探してあげようとします。
    「ねこ」のほうは捨てられてしまった子なのね。

    ぬいぐるみのニャンコが、もしかしたら捨てられたのかもと思うのがかわいそうで、この絵だけに、胸をえぐられます。
    「ねこ」との絆が出来ていきますが…
    危機に直面して。

    一応は、ハッピーエンド。希望はかなりあるけど、全てはっきりしたわけじゃない。
    唐突な別れに、切ない思いをするニャンコ。
    こちらも涙、涙…
    きっと、元気になったよね? 幸せだよね…?

  • せつなさが身に沁みる、ねこの絵本3冊 Pen Online
    https://www.pen-online.jp/news/culture/cat_books/1

    祥伝社の出版物
    s-book.net Library Service
    http://www.sun.s-book.net/slib/slib_detail?isbn=9784396460495

  • ある夏のおわりの公園で、ぼくを覗き込む見知らぬ こねこ。
    ぼくはどろだらけで、いろんなところがひりひりして、ぼっちゃんのすがたも見当たらなくて。

    迷子になった ぼくはこねことぼっちゃんを探すけれど。
    泣き虫のニャンコは相変わらずメソメソしてるけど、こねことニャンコのお互いを想う気持ちが優しくて切ない。
    もう泣くなよう。
    またもや可愛くて、愛しくなる絵本。
    ニャンコ、おじさんみたいで可愛いー?って思って来たけど、だんだん可愛く思えてきた。
    実家に置いて来て、この間、引き取ってもらった彼、彼女たちを思い出してギュッとなる。

  • ねことニャンコは、いっときたしかに家族だったと思う。また再会できたらいいね…
    子猫のねこは人から捨てられ人にいじめられ、人の残酷さをよく知ってる。ねこを引き取った人からたくさん愛情を受けて、悪い人ばかりじゃないかもな、って実感できたら、優しい世界を知れたらいいなあ。

  • circusにて。
    部屋でひとりで読んでたら号泣してたと思う。
    自分の中に嫌な感情がでてきたらこれを読もうと思ったほど、人を思う気持ちが詰まった絵本。

  • はじめて絵本に苦しいほど心をぎゅっと締め付けられた。つらいときに寄り添ってくれるだれかのことを、人間でなく迷い猫とぬいぐるみを主人公にして、こんなに綺麗に描けることに、驚く。

  • ◆書店で綺麗な表紙にうっかり、手にとって、試し読みして思わず涙がこぼれそうに。その日は買わずに帰ったのだけれど、後日どうしてもほしくなって書店を何軒も探したのだけれど見つからず、ネットで注文。◆ねこは元気になっただろうし、ぼくもおうちに帰れた。ふたりはしばしの間だったけれど、「たしかに かぞくだった」…元通りでハッピーエンドのはずなのに、どうしてこんなに寂しくてたまらないんだろう。

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著者プロフィール

画家。多摩美術大学油画科卒業。東京を中心に定期的に個展を開催しつつ、ファッションブランドや画材メーカーなど、様々な企業とのコラボレーションを展開している。2015年1月より、自身のオリジナルブランド「Gustave(ギュスターヴ)」を展開。独自の世界観を色濃くだしながら幅広く活動し、絶大な人気を博している。
著書に『ふたりのねこ』(祥伝社)『せかいいちのねこ』(白泉社)『ヒグチユウコ作品集』『Museum』(グラフィック社)など。

「2016年 『すきになったら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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