日本人とは何か。: 神話の世界から近代まで、その行動原理を探る (NON SELECT)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (811ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396500931

作品紹介・あらすじ

日本人はなぜ、明治維新を成功させることができ、スムーズに近代化ができたのか。また戦後はなぜ、奇蹟の経済復興を遂げ、民主主義をも抵抗なく受け入れることが出来たのか-そんな素朴な疑問に答えるべく、著者は、神代から幕末までの日本人の意識と行動をたどっていくことで、その秘密を解き明かそうとする。その試みは奇しくも、著者が長年にわたって独自に築き上げてきた「日本学」の集大成の観を呈するにいたった。著者他界の二年前に上下二巻で刊行された名著を、今回一巻にまとめて再刊。

感想・レビュー・書評

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  • まさに、大作。縄文時代から筆を起こして、明治維新に至るまでを追う、日本人の物語。

    その長大な歴史の流れに、読むのは非常に大変でした。

    骨(かばね)の代 氏族制の時代
    職(つかさ)の代 律令制の時代
    名(な)の代   幕府制の時代

    歴史を、土地所有の制度史ととらえて、支配者だけでなく庶民の目からもとらえたもので、その時代時代の用語を追うだけでなく、アプローチの方法も大変新鮮でした。

    大化の改新 ⇒ 律令制(中国文化の輸入)⇒ 荘園による公地公民の崩壊 ⇒ 御成敗式目 地頭の設置と武家の実質支配 日本発の国内法の誕生 ⇒ 足利、徳川幕府への継承

    織豊時代の検地 農民から武器を取り上げ、土地の価値を標準化、江戸時代は、武士から、米の収奪権を取り上げサラリーマン化する。米を流通させて貨幣経済へ

    日本文化の誕生と融合 漢字の輸入 ⇒ 仮名の誕生 漢文と和歌 ⇒ 仏教伝来 キリスト教伝来 ⇒ 江戸時代の思想 明治維新への準備

    江戸時代に地動説をしっていた、儒学者、そして、無宗教性 現代の日本人の原型は、江戸時代に作られていた

    和時計、和算、米の売買、日本人は極めて合理的な民族であった。

    目次

    序文 新しい”菊と刀”

    プロローグ 『大勢三転考』の日本

    第1部「骨(かばね)の代」から「職(つかさ)の代」

    1章 日本人とは何か
    2章 文字の創造
    3章 律令制の成立
    4章 神話と伝説の世界
    5章 仏教の伝来
    6章 「民主主義」の奇妙な発生

    第2部 「職(つかさ)の代」から「名(な)の代」へ

    7章 武家と一夫一婦制
    8章 武家革命と日本式法治国家の成立
    9章 武家法の特徴
    10章 エコノミック・アニマルの出現
    11章 下克上と集団主義の発生
    12章 貨幣と契約と組織-中世の終わり

    第3部 名の代・西欧の衝撃

    13章 土一揆・一向衆・キリシタン
    14章 貿易・植民地化・奴隷・典礼問題
    15章 オランダ人とイギリス人
    16章 「鎖国」ははたしてあったのか
    17章 キリシタン思想の影響

    第4部 伊達千広の現代

    18章 家康の創出した体制
    19章 幕藩体制の下で
    20章 タテ社会と下克上
    21章 五公五民と藩の経営
    22章 幕藩体制下の経済
    23章 江戸時代の技術
    24章 江戸時代の民衆生活
    25章 江戸時代の思想
    26章 現代日本人の原形
    27章 現代日本国の原形

    エピローグ 明治維新の出発点


    ISBN:9784396500931
    出版社:祥伝社
    判型:B6変
    ページ数:816ページ
    定価:1400円(本体)
    発行年月日:2006年07月
    発売日:2006年07月21日
    国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
    国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ

  • 歴史は勉強したはずなのに、それは表面をなぞっただけ、ということを思い知らされる本だ。山本七平の本だからそういう期待ももちろんあった。その期待に答えるものだったことは嬉しい限り。
    小さな因果の積み重ねが大きなうねりとなり、歴史が動いていく。これまで勉強してきた歴史は「果」の部分に光を当てて、そういうものだという教え方で出来事のみを並べてきたものだ、と言える。山本七平のアプローチはそうではなく、「因」の方に正しくフォーカスし、それがどう影響したかを紐解いていく。だから新しい学びが多い。勉強というのはこういうことなのだ、と教えられる。幕藩体制下の経済あたりは大変面白い。実体がどうであったかを教えるのが教育なら、歴史だけを切り取って教えるのではなく、歴史の糸の上で経済、文化、思想、技術、生活などを学んでいく手法も良いだろう。全てを含んで歴史が動いていくのだから。そんなことを考えた。

  • 再読の価値あり。

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    短い言葉では語りきれない濃い内容だった。
    プロローグとエピローグに書かれているように日本を余りに知らなすぎると考えを改めることになる内容だった。教科書では教えられない日本を知ることができたと思う。
    惜しむらくは内容が濃すぎて、一度読んだだけでは理解しきれていないと感じていることだろう。いつか改めて世もいなおそうと思う。
    分かったことは明治維新が奇跡でも偶然でもなかったということだろう。そこまでの日本人が積み上げてきた思想や技術が開花したということがわかった。

  • ●日本の歴史を「骨(かばね)の代」「職(つかさ)の代」「名の代」という三つの区分に分けて、日本という国がどのように形成されていったかを説明している。そして、それぞれの代が日本人の文化や精神に与えた影響を詳しく述べ、タイトル通り「日本人とは何か」を著者の豊かな知識と鋭い洞察で著した一冊。

  • この本には我々が知らない日本が書かれている。今の日本の繁栄は明治維新以降の「追いつき追い越せ」の西洋化によるものだと多くの人が思い込んでいる。開国以前の日本が思想や経済が停滞して何も生み出していなかったのかというとそれは大きな間違いだと思い知らされる。日本が、西洋の科学をスムーズに取り入れ、民主主義をすんなり取り入れ、国際経済競争の中に当然のように入っていったのは、意外にも開国以前にそういう下準備を独自に積み重ねていた結果だった。

    紀元ゼロ年当時、日本は「東アジアの最後進国」であった。中国ではそのころかなり高い水準の文明に到達していたが日本はようやく石器時代を脱したレベルだった。それが「何かの刺激でおそろしいばかりの速度で駆け出す」。このスピード感が善くも悪くも日本の特徴のように思える。

    有史スタート以来日本は中国をお手本にしてきたがそれは全く猿まねではなかった。中国のオリジナルは契機にはなっているが、法律にしろ宗教・思想にしろ工芸技術にしろ結局は日本独自のものに作り変えてしまった。

    江戸時代には結構先進的なものの基礎が築き上げられていった。商業経済の発展、貨幣経済、市場の形成、資本の蓄積などもはや中国の影響を完全に脱している。むしろ西洋的発展といってもいいのではないか。

    学問でもいろいろと特色のある学者を輩出している。浅見絅斎、鈴木正三、石田梅岩、山片蟠桃、鎌田柳泓、海保青陵、本多利明、富永仲基、横井小楠…<「ことえり」は結構賢いな。こういう人名がサクサク変換出来る。>

    開国して地動説や進化論などに接してもさして驚かなかった日本人。鎖国の中、たかだか50年で独力で数学の最先端を極めるまでに進化した日本人。マルサスの人口論が出たその年に、同じような人口論をぶっていた日本人。世界に先駆けて堂島で先物取り引きを始めていた日本人。おまえは東洋人ではなく西洋人に限りなく近い気がするぞ。

  • 一回では全てを把握しきれないので、じっくりまた読みたい。

  • 相変わらず客観視した立場で幅広い情報を元に掘り起こしてくれているので、学校ではけして教わらない日本人の特性を実感できる。
    それと共に韓国・中国・アジアそして中東に西洋の実体を比較文化論として、人類全体の関わりとして知ることができる。
    日本の最大の特徴はとだえることなく縄文の文化を今に引き継いでいることのようだ。その結果、権力闘争が起こったとしても折り合いを付けて、深追いせずに共存する道を探し出そうとする傾向を育ててきたらしい。
    伊達千広(1802~77)による「大勢三転考」を取り上げ、その客観的・即物的にあるがままを深読みするだけで、講釈を付けない。
    「骨(かばね)の代」=氏族性の時代
    「職(つかさ)の代」=律令制の時代
    「名(な)の代」=幕府制の時代として、戦国時代までを政治形態で区分している。
    この移り変わりについて歴史的必然として受け止め、それぞれが移るべき要素を自己矛盾として内包していると見たと言う。

    山本氏の日本人に対する外国人に向けた説明は、「東アジアの最も後進的な民族です。その尺度を何よるかは難しい問題です。中国人は西暦元年に代数の初歩を理解していましたし、紀元前600年にはメトン法の歴を発見していましたしヨーロッパでもBC432年発見しています。しかしそのころの日本人は文字も持たず?統一国家を形成していませんし、水稲栽培が全国に広がった状態の石器時代です。それが何かの刺激で恐ろしいばかりの速度で駆け出しただけです。」と言っていたらしい。
    一万年ほど前、新石器時代になるころアジア大陸から日本が切り離されて島になった。
    そのころ造られたのが縄文土器、この文化は千島列島から沖縄までつながっていた。
    京大の生物学者である日沼さんによれば、ATLウイルスのキャリアが東アジアで日本人だけにしか見られないことを発見した。中国にも朝鮮に白人にもない。
    さらに面白いのは沖縄九州に圧倒的に多く、続いて漁民である離島や海岸地帯に多く、アイヌに至っては沖縄よりも多いこと、稲作が早くから伝播したと思われる瀬戸内海や名古屋に少ない。縄文人の狩猟・漁労・採集・(家畜・栽培)文化と関連してくる。
    つまり縄文文化人が日本文化の基礎となっていると考えられる。
    食文化にしても中国や朝鮮と全く違う姿をしている。
    トウガラシ(チリー)は日本から朝鮮に渡ったらしいが日本には定着しなかった。
    卑弥呼を日巫女とか日御子と書くと天照とのつながりがあるのかもしれない。
    起源200年以前と言われる登呂遺跡では4キロの落差が60センチで50坪単位の水田を正確に干拓していると言う。赤米を栽培し縄文土器と木製とスキ・クワと青銅の腕輪にガラス玉が出土している。
    中国語の音が「呉音」「漢音」「唐音」など支配体制が変わるに従って読み方が違ったのに対して、日本語となった訓の発音にそのすべてが残っていると言う。
    古事記は呉音で日本書紀は漢音なのだそうだ。
    例えば経文・会釈・修行・明朝は呉音だし、経済・会社・銀行・明快は漢音。

    日本の独自性・独創性を考えるとき、かな文字の創造と文学の発達がある。
    法としては中国から律令制度を持ち込み、後に鎌倉政府が独自の貞永式目(御成敗式目)を編み出す。
    そこにはさしあたって幕府にとって有利とは思えない、デモクラシー(民主制)・一夫一妻・相続の平等・多数決・奴隷の禁止・選択の自由・などが盛り込まれていた。
    平清盛によって中国から砂金と交換で銅銭が輸入されて、貨幣経済が巷まで広まった。
    諸外国で現金さえ持っていれば旅ができる国などなかったということだから、どれだけ貨幣経済が行き渡っていたかわかる。
    そのために、無尽・酒屋土蔵・高利貸などの銀行業務がはびこり、土地と米を生活の中心にする時代から、血縁でなく契約集団の一揆となり、金融が社会を動かす要となることで、土地から離れしがらみを薄くして個人主義を広める。
    又多くの文化と政治形態を中国から輸入しながら、科挙・官官・族外結婚・一夫多妻・姓・天明思想・易姓革命・纏足・册封(さくほう)がある。
    日本独自のものとしては、かな文字・かな文学・平民の学者・女帝・幕府・武士・紋章・料理・葬儀・墓・などがある。
    日本人の自立主義・平等主義・集団主義・能力主義は足利氏の室町時代(戦国時代)に発生。

  • 山本七平的歴史探求

  • 何気ないがしかし素朴に感じる「日本人」なるもの。だけど何らかの説明を試みようとまではあまり思わなかったしちょっと怖い気もしていた。この本は私が思ってもみなかったところからの話が多くてとてもおもしろかった。日本の民主主義とか欧米との対比でしかあんまり考えたことなかったし。

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著者プロフィール

1921年、東京都に生まれる。1942年、青山学院高等商業学部を卒業。野砲少尉としてマニラで戦い、捕虜となる。戦後、山本書店を創設し、聖書学関係の出版に携わる。1970年、イザヤ・ベンダサン名で出版した『日本人とユダヤ人』が300万部のベストセラーに。
著書には『「空気」の研究』(文藝春秋)、『帝王学』(日本経済新聞社)、『論語の読み方』(祥伝社)、『なぜ日本は変われないのか』『日本人には何が欠けているのか』『日本はなぜ外交で負けるのか』『戦争責任と靖国問題』(以上、さくら舎)などがある。

「2020年 『日本型組織 存続の条件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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