「混」の中国人

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396613174

感想・レビュー・書評

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  • 外国人と一緒に仕事をしていると、時々考え方の相違は何に起因するのだろうと疑問に思うことがあります。この本は日本人とは異なる中国人の行動原理について中国の歴史等も踏まえて解説されています、外国人と行動原理を同一にするのは難しいとは思いますが、お互いの原理を尊重して付き合っていくことは重要だと思いました。

    以前何かの本で、「鄧小平がアメリカに国賓としていったとき、つばを吐きかけた」という記述があり信じられませんでしたが、この本を読んで納得(p48,55)しました。

    以下は気になったポイントです。

    ・日本ではソ連の崩壊を見事に予測できた学者がいたが、中国の予測は常に外れる、その理由は中国の表の言動・動向に目を奪われすぎると、その裏に隠された事実が解読できないから(p27)

    ・中国には4つの社会システムが存在する、中国共産党(支配層)、儒教中国(知識人)、郷土(農民)、江湖(遊民)であり、古代より現代まで続いている(p29)

    ・中国の近代化プロセスにおけるすべての失敗は、国民的資質の低さが最も重要な原因である(p31)

    ・中国では、「つばを吐く」、「ごみのポイ捨て」も、すべて幼児時代の生理的排泄行為の延長という認識(p48)

    ・幼い頃から排泄の手厳しい訓練や教育をされていないので、自分自身のものでないものを監視の無い状況では自分のものとして「拾う」のが習慣になっている(p55)

    ・四川地震が起きる前(2008年4、5月)に、数十万匹のヒキガエルの集団移動、井戸水の枯渇、地震の予知を報道したが、政府は否定した。四川省地震局がデマと発表した3日後に地震は現実に起きた(p67)

    ・地震において市役所等の官庁建物はびくともしないが、隣に建つ学校は完全崩壊した、この差は手抜き工事による(p69)

    ・中国では昼食後に昼寝をするのは、政府機関・地方の役所・学校・農村では、一般的な文化である(p80)

    ・中国でマージャンの人気が高いのは、混の方法に似ている、常に人間と対面し人間関係の中で自己の位置を確認できるから(p130)

    ・日清戦争で負けた原因は、内部分裂・不団結によるもので、仲間の戦艦が日本艦隊の攻撃を受けても、傍観していたから(p141)

    ・日本が欧米に学んだのは、先進技術だけではなく、民主主義・自由主義のような政治システムであり、文明(技術)と文化(精神)を両者取り入れたから成功した(p159)

    ・中国は30年経過しても基幹産業は薄弱でありブランドも打ち出していない、生産できるのは欧米や日本の設計した図面を製品にしたにすぎない(p160)

    ・中国は2度にわたって漢字の簡略化を実施したが、最近では昔の繁体字に復帰する動きが出ている(p175)

    ・古代中国に有名な「四代発明:火薬、羅針盤、製紙術、印刷術」は「術」であり、理論的な高度な「学」としては成立しなかった(p181)

  • 金文学さんによる中国人論韓国人論は巷に溢れる同系列の本よりも遥かに優れている。
    戦前から中国人の持つメンタリティについて深く研究していた日本人研究者は多いが、これだけの内容で中国人も自覚していない内面性を深く炙りだした本はない。
    中国人の誇大主義に見え隠れする外国に対する臆病と僻み、精神社会や論理的思考は生み出せず実利社会しか生み出せなかった漢字文化、細かいことを非とする粗のメンタリティ、曖昧に適当を是とする混のメンタリティ、目に見えるインフラは整っても中身である人間が変わらない、社会主義の衣を着た封建王朝…などなど中国人の内面性やメンタリティを知る上では最高の一書です。

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著者プロフィール

1962年中国・瀋陽に生まれる。東北師範大学外国文学部日本文学科卒業。91年来日。
同志社大学大学院修了。現在、広島大学大学院社会科学研究科博士後期課程在籍中。
国際高麗学会会員、中国少数民族作家協会会員。

「1998年 『裸の三国志 日・中・韓三国比較文化論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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