「世界史」で読み解けば日本史がわかる

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著者 : 神野正史
  • 祥伝社 (2017年9月2日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396616229

「世界史」で読み解けば日本史がわかるの感想・レビュー・書評

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  • 昨年(2016)この本の著者が書かれた世界史の解説本を読んでとても分かりやすい印象を持ったのを覚えています。なんと予備校で有名な河合塾で世界史を教えている先生でした、予備校の先生は分かりやすい授業をしないと生き残れない、と私は思っているので、流石だなと思った次第です。

    さてその神野氏が今年(2017)9月に面白いタイトルの本を出してくれました。日本史を世界史で読み解くというものです、歴史学者は研究テーマが細分化しているせいか、この様な視点を持つことは難しいと思います、論文を書いても評価されないかもしれませんが、私のような一般読者にとっては、嬉しい限りです。

    現在において日本の動きは世界に影響されるのは理解できますが、昔においても日本の出来事は世界に影響されていたのだと思うと、日本史の出来事もまた違った見方ができて楽しみ方も増えますね。

    以下は気になったポイントです。

    ・欧州において科学が発達した大きな理由は、彼らの生まれ育った自然環境にあるのであって人種の優劣でない、彼らにとって森は、恵みであると同時に恐怖なる存在、自然はすべて「征服すべき対象」となった、環境が民族の特性や相違を生むのであり、断じて民族の優劣ではない(p26)

    ・1万年ほど前のシリアあたりで何らかの環境変化が生じて、従来の獲得経済は破綻し、大飢饉が遅い、生き延びるために農耕へと足を踏み出した、当時の西アジアが進んでいたのではなく、砂漠に囲まれた貧しい環境にあって、そうせざるを得なかった(p28)

    ・縄文時代が1万2千年も続いた、という事実自体が、縄文時代が「改革を必要としないほど豊かで平和な時代」であったことを証明している(p31)

    ・縄文人が自然採集のみに頼っていたのではなく、ちゃんと栗の木を苗から植えて、栗の森を育て繁殖させていたことがわかった(p33)

    ・農業を知っていたとしても、どの導入には抵抗しただろう、農業を導入するための一歩は、実り豊かな自然を破壊し、整地して田畑をつくることだから(p34)

    ・縄文末期から日本にも否応なく農耕が広まっていくことになったが、1万年以上に及ぶ縄文精神とも呼ぶべき魂は、脈々と日本人の心に伝わっていった、欧米人たちの価値観(自然破壊、利潤追求、大量生産、大量消費)とは対極にあるものである(p39)

    ・朝廷には天皇を補佐する役職として、大連と大臣の二大勢力があったが、6世紀の中頃までに、大連の家柄として物部氏が、大臣の家柄として蘇我氏が有力となった。物部氏は伝統貴族であったが、蘇我氏は渡来人の家系とも言われる新興貴族(p43)

    ・原始仏教では「偶像崇拝」など一切していなかった、木偶を拝むという愚行を冒す者もいなかったので、釈尊もあえてそれを禁止する教えを残さなかった。インド人にとって破廉恥極まりない行為も、ギリシア人にとっては神聖なる宗教行為となった(p55)

    ・クシャーナ朝は、仏像を許可したうえ、禁を破ってサンスクリット語で仏典を編纂、教義を曲解して生まれたのが大乗仏教(p57)

    ・ジャワ島とスマトラ島の間にある、クラタカウ火山が大噴火(535)し、世界各地を異常気象が襲った(p60)

    ・ノルマン人が海賊として暴れまわった結果、欧州における民族配置に激変が起き、ロシア・イギリス・フランス北部・南イタリア各地にノルマン人王朝が多数生まれた(p68)

    ・鬼のイメージがノルマン人の特徴とともに固定したと仮定すると合点がいく、1)鬼は鬼門(東北)からやってくる、2)鬼は鬼ヶ島に住み、略奪品の金銀財宝がある、3)巨大な体躯、筋肉質、赤い肌、体毛濃い、彼らは白というよりピンク(当時から見れば赤)、4)角が生えて(冑の突起物)突起のついた棍棒を武器とする、5)口には牙、指には鋭い爪(p72)

    ・桃太郎の、申・酉・戌は、艮(うしとら)の方角からやってくる鬼に対抗して、その反対の方角にあるとしたからか、天狗は、赤い顔・高い鼻、彼らを海で見れば「鬼」山で見れば「天狗」(p74)

    ・日本の戦国時代にあたる15-16世紀後半は、天文学ではちょうど、シュペーラー極小期と呼ばれる太陽活動が著しく低下した時期である(p87)

    ・応仁の乱とは、幕府の統制力が弛緩し、将軍が無策無能だったから飢饉が頻発した、のではなく、寒冷化によって飢饉が頻発したから幕府の統制力が弛緩した、という理解となる(p89)

    ・茶、綿織物、陶磁器などの中国物産は、中央アジアのシルクロード、香辛料、象牙等の東南アジア・インド物産は、アラビア海を走る「海の道」を通って欧州へ持ち込まれていた、これらの2つの生命線がイスラムに抑えられて欧州は苦悩した(p103)

    ・ポルトガルはアフリカ廻り航路でインドを目指した、スペインはすでに先鞭をつけられているので、西回り航路でインドを目指した(p105)

    ・中世まで教会は原則(ラテン語以外)聖書翻訳を禁止して、庶民が聖書を読めないようにしていた、知を独占し、教会が行っていた聖書の教えに反する数々の悪行を隠ぺいしていた、聖書が出回ることで(活版印刷)宗教改革をささえる基盤となった(p121)

    ・侵略の手口は、マンモスを殺す小が大を殺す方法と同じで、1)宣教師を派遣、2)宣教師が商人を連れてくる、3)最後に軍事制圧、これは狩りそのもの(p125)

    ・秀吉、家康が行ったキリシタン弾圧は、結果的にライスクリスチャンの一掃につながり、それが日本の植民地化を防ぐ一助となった、インドも中国も大量に発生したライスクリスチャンが侵略者の手先となって、自国と自国民族を滅ぼしていった(p128)

    ・産業革命を推進するには、大量の機械油が必要だが、石油採掘が実用化されていなかった当時、目をつけられたのが鯨油。聖書には、鱗の無い魚はこれを食べてはいけない、という神様の命令があるので、クジラを食べない(p142)

    ・ハリスがやったことを現代で喩えると、500円玉は材料費では50円の価値しかないので、50セントしか認めないということ。1)日本国内に50セントを持ち込んで500円玉に両替する、2)500円玉で金を購入、3)これを海外に持ち出して5ドルで売り捌いてぼろ儲け(p150)

    ・ハリスの陰謀のおかげで、幕府が短期間のうちに一気に弱体化してくれた、これにより倒幕派が一気に勢いづくことになった(p152、160)

    ・幕府は、対馬を通じて朝鮮と、薩摩を通じて琉球と、松前を通じてアイヌと、長崎と通じてオランダ・清朝と交易していた。しかしそれ以外の国とは鎖国していた(p206)

    ・暦の上では20世紀は1901年から始まるが、歴史的には第一次世界大戦とともに幕開けといえる。それまでの戦争とは、あくまでも前線で戦うのは領主、戦勝による受益者も領主であり、国民は不在であった(p249)

    ・第一次世界大戦の賠償金は、1320億金マルク、のちに97.8%割引の30億金マルクまで減額されたが、完済したのは戦後92年後の2010年(p257)

    2017年11月11日作成

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