新釈 走れメロス 他四篇

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396632793

作品紹介・あらすじ

異様なテンションで京都の街を突っ走る表題作をはじめ、先達への敬意が切なさと笑いをさそう、五つの傑作短編。

感想・レビュー・書評

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  • 近代文学の5つの作品を森見流にリミックスした短編集です。
    「山月記」
    「藪の中」
    「走れメロス」
    「桜の森の満開の下」
    「百物語」
    これらの名作が、お馴染み京都を舞台にした、腐れ大学生の物語になってしまうのだから、いやはやその手腕は流石です。
    作品それぞれ、笑いあり、せつなさあり、不気味さありで楽しめますが、個人的には「走れメロス」の無茶苦茶っぷりが好きですね。
    そして、やはり出た!って感じの“詭弁論部”など、他の森見作品とリンクしてますので、その辺ご承知の方はほくそ笑みながら読めるでしょう(笑)

  • 名作のエッセンスが森見ワールドの中に見事に再結晶している。一つ一つは短編であり、とかくだらっとしがちな森見作品の中ではしまりがあって読みやすい部類だと思う。好きです。

  •  有名な作品を現代の京都の学生を主人公にしてみたら……。森見登美彦なので、雰囲気というか作風は安心と信頼のあの感じです。

    *山月記
     元ネタは教科書にも載っているあの虎になった李徴の話。李徴とは違った意味で斎藤が可哀想な人にしか見えなかった。こっちの方が、人間ではなくなったという印象が強い。

    *藪の中
     元ネタは解釈が多発するあの話。元ネタの方は3人が語るどの話が真実なのかが分からなくなったけど、この話は映画を主軸に捉えれば監督が語る話が事実なんだろうけど、でも整合性が取れてないんだよなあ……。

    *走れメロス
     元ネタは胸熱な友情話なんだけど、こちらは愛すべき馬鹿たちの物語。もしかしたらこっちの方が太宰は好きかも?!

    *桜の森の満開の下
     元ネタは山男と美しい女の話なんだけど、こちらの方が男が女に翻弄されて、身も心もズタボロにされている印象がある。

    *百物語
     元ネタは未読。森鴎外の小説らしいので機会があったら読もうと思う。とはいえ、百物語自体は知っているので、ホラー系で終わるのかなと思ったら、大学生活キラキラ楽しむものもいれば、漫然と傍観者で終わるものもいるという対比を鮮やかに描き出していて心が痛い(どちらかというと後者な自分だったので)。F君はもしかして深淵?(邪推)

  • 久しぶりの森見節に冒頭からにやりさせられました。
    読み進めれば読み進めるほど、森見ワールドに寄せまくっていて笑いました。

    坂口安吾の『桜の森の満開の下』を読むのが楽しみで、女が住処で開くパーティは原典の生首のシーンかな?と思い巡らせながら読みました。

    梶井基次郎の『檸檬』もぜひこの延長で読みたい。
    田山花袋の『布団』も森見節ぴったりかも。
    なんて妄想膨らみます。

    下記あとがきより抜粋↓
    「山月記」中島敦
    “虎になった李徴の悲痛な独白の力強さ”

    「藪の中」芥川龍之介
    “気に縛りつけられて一部始終を見ているほかない夫の苦しさ”

    「走れメロス」太宰治
    “作者自身が書いていて楽しくてしょうがないといった印象の、次から次へと飛びついていくような文章”

    「桜の森の満開の下」坂口安吾
    “斬り殺された妻たちの死体のかたわらに立っている女の姿”

    「百物語」森鴎外
    “賑やかな座敷に孤独に座り込んで目を血走らせている男の姿”

  • 「新釈」という言葉、タイトルに惹かれて読み始めた本。ずっと読みかけだったのをやっと読み終わった!

    走れメロスや山月記など、学校教科書に出てくる話も入っていて原作を知っているからこそ、この部分一緒だな、ここは違った視点で描かれていているなあ、など比較しながら読み進めるのが楽しかった。藪の中や百物語など原作をまだ読んでいない作品もあったけれど、知らなくても十分面白い。
    中でも面白い、というか衝撃な展開だったのは走れメロス。芽野と芹名の私には理解しがたい友情はツッコミどころ満載だったが、走れメロスの世界観はしっかり描かれていて、こんな風に新たな物語を作れる森見登美彦さんのスゴさを感じました。
    まだ読んだことのない藪の中や百物語も読んでみたい!

  • 古典名作をカバーした短編5編。
    『宵山万華鏡』とも絡み合う話もあり。
    森見登美彦氏は4冊目となるが、
    いずれも妖し魔やかし、うっすらと膜が覆っているような。
    阿呆な大学生が闊歩する京都の街は、今や存在するのだろうか。
    阿呆すぎて、すごく憧れる。
    やはり、中島敦の山月記は昔から大好きなので、
    この短編集でも1番惹かれた。
    超越した人間としてリスペクトされる斎藤秀太郎は、
    しかし、己を内から見つめることも出来ず、鬼と化す。
    憐憫さえを感じる彼を、私は大好きだ。憧れる。
    今年の収穫、舞城氏に続き、森見登美彦氏かな。

  • 山月記、藪の中、走れメロス、桜の森の満開の下、百物語の5編の短編を、現代の京都を舞台にアレンジしたパロディ作品です。

    個人的には「走れメロス」が1番読みやすく、楽しめました。
    他の作品は「森見」色が強すぎて少し読みにくかったです(おそらく、森見ファンの人であれば楽しめるのでしょうが)。
    どことなく不思議な世界観の中をさまよう様な読書体験になりましたし、実際に文豪たちの作品を再読したくもなりました。

  • 名作をあそこまでいい意味で馬鹿馬鹿しく解釈できるのは、森見さんの才能だと思う。
    京都中を駆け巡る走れメロス。
    森見さんの他の作品ともリンクしていて、読みながら笑ってしまった。
    メロスもとい芽野があそこまでクズだと、もはや清々しい。桃色ブリーフによって示された友情…うへぇ、遠慮したい。
    桜の森の満開の下は、いつもの作品と違った不思議で妖艶な雰囲気が好き。
    彼は師匠に読ませていた時と売れっ子作家の今と、どっちの方が幸せだったのだろうか。
    そして彼は今幸せなのだろうか?
    元ネタの方も読んでみたい。

  • 森見さんの本を読むのはこれで2冊目。
    凄く文章が好きなんですよね~~
    それに前読んだものと舞台設定は一緒だから、
    話しが違っててもいろんな物がどこかで絡み合ってて、
    またそこが心をくすぐるっていうか。

    昔の文学を今風にアレンジしてるけど、それでもなんか古臭い(笑)

    なんでだろう?京都・大学っていう場所だから??
    でもそこが好きなんです。

  • 山月記の斎藤秀太郎好きです。他の話にちょっとづつ絡んでくるのも良い。
    話の中では、藪の中が1番好き。原作も読んでみたいな。森見ワールド癖になります。

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著者プロフィール

1979年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。同作品は、本屋大賞2位にも選ばれる。著書に『きつねのはなし』『有頂天家族』など。

「2022年 『四畳半タイムマシンブルース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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