百瀬、こっちを向いて。

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著者 : 中田永一
  • 祥伝社 (2008年5月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396632977

百瀬、こっちを向いて。の感想・レビュー・書評

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  • 本屋さんのバレンタイン特設コーナーで、
    チョコレシピ本の隣に恋愛小説が並んでいて、
    その中で気になったこの本。
    タイトルといい、真っ白い装丁といい。

    うーん、いい。
    乙女ゴコロを刺激されるわ。
    はっきりした恋の結末までは描かれてないけど
    ハッピーエンドの予感というか、読後の余韻がすごいいいー。
    胸キュン。

    どれもこれもちょっとさえない地味な生徒が主人公なんだけど、
    単純な恋愛小説に留まらない裏側の視点を描くのが巧みで
    あきらめムードの白黒世界が、色彩を取り戻していくみたいで
    桜ももうすぐ満開だねーって感じです。青春です。

  • 学校では地味で目立たない生徒を主人公とした、青春×恋愛の4編。
    ちょっと突飛な設定に、中田さん的「甘さ」と「苦さ」の絶妙な塩梅の味付け、隠し味はちょっとしたドンデン返し。
    くすりと笑ったり、キュンとしたり、びっくりしたり。
    作中の季節は色々でも、読後感は、咲きかけの花の香りを運んでくれる、爽やかな風が気持ちいい春そのものなのでした。

    表題作、『百瀬、こっちを向いて』
    恩のある先輩に頼まれて、先輩の彼女をだますため、先輩の二股相手である百瀬と付き合っているふりをすることになる僕。
    周囲からは浮いているカップルとなった二人、なんで「僕」と付き合っているのと百瀬が友人から聞かれたときのエピソードが何となく好きだった。
    “「しょうがないから、ナメクジみたいなところがいい、ってこたえておいたよ」
    「あ、そう。ひどいね、きみ」
    「ほめ言葉だよ」
    「どこが。かるく死にたくなったよ」”

    『なみうちぎわ』
    家庭教師先の教え子、小太郎を助けるために海に飛び込み、反対に溺れて意識の戻らないまま寝たきりとなる。5年後、奇跡的に回復し気づいたときには、小太郎は17歳となっていた。小太郎はある罪の意識を抱えたまま、姫子を見守り続けていたのだ…。

    これは一番乙一さんらしいなと思った。
    5年間の家族の苦労と小太郎の苦悩を思うと胸が痛むけれど、その間毎日、眠れる森の「姫子」が目覚めるのを待ち続けた小太郎くんが健気で愛おしくなる。
    目覚めたときに、かっこよく成長した小太郎くんと再会するなんて、何か少女漫画みたいだ。二人の未来に幸あれ。

    『キャベツ畑に彼の声』
    テープ起こしのバイトで、人気の国語教師・本田先生と、新進気鋭の覆面作家・北川誠二が同一人物であることを知る久里子。
    先生には美人の彼女がいるみたいだけれど、先生に対する想いは、だんだんキャベツ畑のキャベツのように膨らんで、出荷しないといけないほど大きくなっていく。

    おとなしくて控え目な主人公。気持ちが膨らんでいく様子がとても可愛い。
    ドンデン返しはちょっと唐突な感じがあったけれど、先生とのやりとりはどれもさりげなくてよかった。
    先生から勧められた本が「初恋」っていうのも、ちょっと気のきいた小道具だなぁ。

    『小梅が通る』
    読者モデルをしていたほどの美少女で、周りの賛美も優しさも当たり前のものとして享受していた柚木。
    中学生のとき、親友だと思っていた子に言われた言葉がトラウマとなり、素顔を出すことを避け、度のきついメガネ、ホクロメイク、下膨れの頬、だぶっとした制服…、自称「ブスメイク」をして高校に通う。
    しかし、ひょんなところでクラスメイトに素顔を見られ、自分は柚木の妹の小梅だと嘘をつき、嘘をそのまま押し通すことになってしまう。

    4編の中でも一番好き。読んでる間中、ニマニマがとまらなかった。
    望んでも望まなくても、目立ち、ちやほやされ、やっかまれることになる美人の人知れぬ孤独と葛藤。
    先日読んだ、綿矢りさの「亜美ちゃんは美人」の亜美ちゃんを思いだした。
    ブスメイクをするようになった柚木は、
    わたしが変わったのではない、周囲のひとが変わるのだ…
    というけれど、周囲のひと、とりわけ中高の頃の男子は本当に酷なもので。
    「みんなが好きなのはあなたの顔だけ」という友人の言葉が呪いとなって、不細工だと対応を変える周囲のひとたちに、自分は顔だけだと傷つきながら、頑なにブスメイクを通していた柚木。
    そんな柚木が、素顔になって自分が小梅だと告げに行く場面では胸が熱くなり、さらに告白を聞いて柚木と一緒に顔を赤くしてしまう、とりわけ甘酸っぱい最終話でした。

  • 「愛と恋の違うについて抱いているイメージがある。燃焼反応の化学式だ。愛とは状態のことで、恋とは状態が変化するときに放出される熱なのではないか。」

    「百瀬、こっちを向いて。」というタイトルがドキドキ。
    ずっと気になっていてようやく手に取る。
    高校生の恋愛短編集であったか。
    どうしても「桐島…」と比べてしまい、この本は主人公たちが所謂スクールカースト底辺ばかりなので歯痒いばかり。
    自分もこの頃「石ころ帽子」が本気で欲しかったから歪んだ自意識過剰さが尚更痛いんだろうけど。
    「百瀬、こっちを向いて」
    「なみうちぎわ」
    「キャベツ畑に彼の声」
    「小梅が通る」
    どれもそれなりにチクリとして、晴れない雲の中で目を凝らすような気持ちになる。あの頃のように。
    でも読後、あーあ全部書いちゃった。という気分になった。そこまで書かなくてもなあ。
    どれも素敵なお話しだったはずなのにな。

  • 乙一氏の別名小説。
    彼は変わった作家だ。
    別名で違う作風の小説を発表している。
    この「百瀬、こっちを向いて」も、出版当初はその正体が明らかにされなかったらしい。
    彼の作品は「箱庭図書館」を読んだことがある。
    といっても、それは一般の人が書いた作品を彼が推敲し、小説として書き直したという一風変わったもの。
    いわゆる小説の作法、入門、基本的なことを修正しながら、作品を別物に仕立て、発刊したものだ。
    なので、彼自身のオリジナル作品を読むのはこれが初めて。
    ブクログのお友達のレビューから「爽やかな青春小説」という評判を目にし、図書館から借りた一冊。

    表題作のほかに「なみうちぎわ」「キャベツ畑に彼の声」「小梅が通る」の四篇を収録。
    四作品とも、読後、ほろ苦さと切なさが胸に染み入るような青春恋愛小説だ。
    タイトルの「百瀬、こっちを向いて」は高校一年生、15歳の男の子の心情がよく描かれている。
    自分もこんな時代があったなあ、と遥か昔を思い起こした。
    告白なんて簡単にできる時代じゃなかった。
    当時の私の街の高校はすべて男女別学。出会いのチャンスといえば、年に一度の文化祭がせいぜい。
    夏休み明けの九月。精一杯おめかしして女子高の文化祭に行ったっけ。
    でも、その場のひと時だけの楽しい時間を過ごすだけでいつも終わり。
    夕闇迫る中で行われる文化祭のフィナーレ、キャンプファイヤー。
    何ともいえない哀しさが胸を締めつけた。
    もう一度あの頃の時代、胸がキュンとするような気持ちに戻りたいものだ。
    一目ぼれした○○さん、今頃どこでどうしているだろうか……。

    個人的に好きなのは最後の「小梅が通る」だ。
    少女が、美しすぎるが故に、同性から嫌われ、友達もできず、
    「あなたのことをほんとうに好きになるひとなんていない。外見が好きになるだけだ」と言われ、傷つき、自分の外見を封じ込め、とにかく目立たない道端の石ころのように生きていこうと決意する。
    そこに現われたいまひとつ垢抜けない同級生。
    自分の外見を思わぬところで知られたものの、同一人物とは気づかれないところから、妹と名乗ることで話が展開していく。
    とてもいい感じの話です。
    ほろ苦くて、甘酸っぱくて、心がほのぼのしたい時に読むにはオススメ本です。是非。

  • 長田永一の青春感、半端ない。

    『吉祥寺の朝日奈くん』でもそうなのだが、なんだか、友達にいたら楽しそうでワクワクキュンキュンしまくりである。

    表題作、「百瀬、こっち向いて」では、百瀬に付き合わされる主人公の真っ直ぐさがいい。
    人間レベル2とか言い切ってしまえる、ネガティブさが、けれど作品を暗くしない。

    しかし、この作品にはもっと素敵な人物が登場するのである。

    それは冴えない主人公の冴えない友人である田辺くんだ。

    彼は主人公から、自分と同じように女に縁のない生活をすると見なされていながら、百瀬に対して積極的になりきれない主人公に、めちゃくちゃカッコいいエールを送るのだ。

    田辺、すげえ!

    と、単なる一読者の私が絶賛したくなるほどの名脇役なので、ぜひ田辺を中心に読んで欲しい。

    もう一つ「小梅が通る」の、小梅の女友だちも素晴らしい。
    小梅の秘密に対して、あんたバカだったんだねぇと言い切り、ストーリーを一気に覆してしまうその感じがいい。

    これらの作品は、決して主人公たちが作り上げたストーリーではない。
    彼ら、彼女らを支える名脇役あってこその感動的な仕上がりとなっている。

    そんな風にはっきり言える作品って、なかなかないのでは。

  • 元々表題作の「百瀬、こっちを向いて。」が好きで買った単行本。
    改めて一冊全部読んで、表題作以外で好きなのは「小梅が通る」かなぁ?
    表題作の話を人にすると自分の説明が悪いのかはわからないけれど、決まって少しドロドロした話だね、と言われる。
    言われて構図だけ考えたら確かに…と思うけど実際に読んでいる時にそういう印象は全くないところがすごいなぁと感じた。
    とりあえずぼくは百瀬が好きです。

  • 何度でも読みたくなる短編ばかり。

  • 久しぶりにほっこりする恋愛小説を読みました。
    少しの勇気が関係性を変える、恋愛の原点を見た気がします。

  • 青春、恋愛、嘘、秘密。

    まだくっつく前のどきまぎした頃の話で、しかもどれも嘘とか秘密があって、ばれちゃったり、ばれなかったり。

    表題作の『百瀬、こっちを向いて。』は、もう、タイトルが秀逸。そして、ほおずきの花言葉のくだりと、最後がもう、本当、もう…!男の人は女の人を騙せるなんて思ってはいけませんね。恋愛に嘘は必要だとは思いますが、きっと「嘘だって知ってるけど、騙されてあげてる」ってこと、多いと思うんです。私は、そんな神林先輩みたいな女の人、大好きです。
    あと、実写化される(されてる?)みたいでちょっとプロモーション動画を観たのだけど、人間レベル2の主人公、格好良すぎじゃあありませんか?だって、成長した主人公、向井理ですよ?人間レベル90あると思うんですけど。

    他の短編も素敵でした。特に『なみうちぎわ』は海の底みたいな、いろんなものが絡み付いたお話で、描写が好きでした。

  • 早見あかり/竹内太郎

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百瀬、こっちを向いて。の作品紹介

恋愛アンソロジー「I LOVE YOU」などで読書界を騒然とさせた話題の大型新人、初めての恋愛小説集。

百瀬、こっちを向いて。のKindle版

百瀬、こっちを向いて。の文庫

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