産声が消えていく

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 24
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396633035

感想・レビュー・書評

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  • これはノンフィクションなのでは…と感じられる話。

    産科医療の現場がいかに過酷な現場か。
    結果が悪いと過失でなくても過失に仕立て上げられてしまうなんて

    自ら産科を希望する医師がいなくなってしまう

  •  産婦人科医を希望する医師が減ってきていると叫ばれて久しい。
     そんな中、2008年に現役医師によって書かれたフィクションがこの作品である。

     私は妊娠や出産に縁が無く生きているので、ここで描かれる堕胎の気持ち悪さや、妊娠するということがどういうことなのかを知らない。無事な出産というものが、どれだけありがたいものなのかも、産婦人科医や助産師、そしてもちろん看護師達、さらに以外に外科医により支えられているのだと知ることができた。

     普通にノンフィクションであれば、興味深く知る機会だと思えたのだろう。
     しかしフィクションで読み物として捉えると、どうにも主人公に釈然としない。
     一見、理想の産婦人科医として働こうとしつつも理解のない院長や上司にはぱまれ上手く行かず仕事は増え、その結果、医療過誤の可能性がある出産に立ち会ってしまった、というようだが、果たしてそうなのだろうか?
     いつも「今頑張れば次は良くなるよ」と、理想をたてに助産師や看護師達に無理を強いて、空手形を切る主人公は、本当に被害者なんだろうか? 手間のかかる(けど良いらしい)自然出産を推したとあるが、どれだけそのことで産科が疲弊したのだろう。上司とも相談せず、勝手に自分のよい方に受け取り、部下には未来の夢を語る。それって何もしない院長とどんな違いがあるのだろうか。
     主人公は何もかもが受け身で、能動的に今の状況を変えようとはしない。(出産方法ですら助産師がメインだ)。それで頑張ったのに上手く行かないって、頑張ったの君じゃないだろって気持になる。
     実際に著者が主人公の立場になったら、こうなるとは思う。過剰労働の中、まっとうに思考できない。それがリアルだ。ただ、これはフィクションなのだ。
     思考できないなら、そして三人称で物語を書くならそこを表現しないのは、あまりにももったいない。徹底的に受け身ならば、それはそうせざるを得ない、主人公可哀想、まで説明して欲しかった。ほんとに個人的な好みだが、私から見れば、産婦人科医なのに恋人の妊娠に冷淡だし、同僚の妊娠出産に無関心としか思えないし、頑張る助産師に慕われても袖にするし、どれだけ自分に都合がいい女性を用意してもらってるのかってなる。願望か。そこまで女性に尽くされたなら、命を育む性としての女性に誠意を尽くそうよ、職業的にってさ、と望んでしまう。
     そう言う意味で興味深いけど後味の悪い物語だった。

  • あまりの激務やストレスのために医師たちさえも壊れていく医療現場。だけどミスは許されない。多くの医師や看護師は気力だけでなんとか頑張ってるんだろうなぁ。大変な仕事だと思う。

    医者や看護師はロボットじゃないんだから、働きすぎれば疲れもするでしょう。疲れればミスもしやすくなるでしょう。質の良い医療を提供してもらうためには、ほどよく気分転換や休暇も必要。そのためには人手不足は解消しないと・・・でもだからといって、そこに外国人労働者を入れて補ってもらうのは、ちょっとどうなのかなぁとは思ってるけど。

  • 産婦人科の医師不足が問題になり病院のたらい回しなどと最近問題になっているが、現在の貧弱な日本の医療制度は個人の力量と忍耐力でかろうじて維持している。 なんとかせんと日本の少子化はますます酷くなるだろう。最前線で奮闘する現役医師が医療崩壊の実態を書いただけに考えさせられる。

  • とても興味深かったです。なぜか日本も訴訟大国のようになってしまい、まじめに働いている医師が訴えられる事件が増えています。このままでは日本の医療は崩壊するとわかっているのに、何もしない行政、安易に夜間診療を受けようとする患者。そういった過酷な状況をリアルに(というかほとんどノンフィクション)描く本作。出産経験もあり、次男は逆子だったのに、どうしても経膣分娩したいと担当医にお願いしたということもあって、読みながらドキドキしました。夏目医師の心が壊れていく様子や、アルコールにはまったり、鬱になっていく姿がリアルでつらかったです。

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