入らずの森

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  • 祥伝社 (2009年3月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396633134

入らずの森の感想・レビュー・書評

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  • 初めて読んだ作者の本。
    しっかりした文章なので読んでいてホッとした。
    ただ、この話はあまり面白くなかった。

    物語の舞台は平家落人の伝説が残る、高知と愛媛の県境の町。
    そこで暮らす何人かの人々を主な登場人物として描いた、ちょっとホラー味のある話になっている。
    その主な登場人物は、
    町の中学校教諭の若い男性。
    親元から離れ、この町で暮らす祖母の元に身を寄せた女子中学生。
    スーパーを早期退職し、この町で暮らす事にした夫婦。
    認知症の母親の介護をする女性。

    中学校教諭の男性は、オリンピック選手になれるほどの陸上選手だったにも関わらず、一人の男の悪意により、その夢を絶たれ、現在この山合の町で教師をしている。
    彼はこの町で以前、陰惨な事件が起きていた事を知り、それに粘菌が関わっている事を知る。

    親元から離れ祖母と住む女子中学生はこの山合の町で暮らすことで、都会で暮らしていた頃の自分を客観視する。
    彼女は同級生の男子が自分の家の屋根裏であるはずのない異空間の部屋を見つけたという事を知る。
    その部屋には幼い少女がいた。

    人間関係の問題でスーパーをやめ、町で暮らす事にした男性は田舎ののどかな暮らしを夢見ていたが、それもある農民の男によって壊される。
    彼は理不尽な怒りを移住してきた男性に向け、攻撃する。
    やがて、それに耐えられなくなった彼はー。

    親の介護をする女性は母親の体に度々傷がある事に気づく。
    それはある介護の女性にされたものだという疑いがもたげてきて事を明らかにするかどうか彼女は苦しむ。

    最初は全く関係ないバラバラの話が粘菌という、人の負の感情に住みつく生物によりひとつになる。

    こういう話では、謎の生物というのが全く架空なものやただの化け物というものというのが多く、小説の中の出来事だな~と思うけど、ここでは粘菌という実在するもの、有名な細菌学者の名前を出す事でリアルな恐怖が感じられた。
    個人的に、この粘菌が存在するという森やら木が生い茂る場所というのはいつも歩いている場所なので、実際歩いているとこういうのってあってもおかしくないと思えるのが恐いな・・・と思った。
    平家落人の墓が分からないままに踏まれて、その相手の思念が憑りつくなんて、本当にありそうだし・・・。
    ホラー味としては薄いけれど、それ以外の心情とかはちゃんと書いていて、他の部分も落ち着いて読める文章だった。

    この物語の粘菌といのは人の負の感情に乗っかって、その思いを抱いた人間にとりつくという設定だけど、ちょっと、それじゃ憑りつかれた人間は救われないな・・・と思った。
    移住してきた男性の事を思うと・・・。
    心の弱さにつけこまれた・・・という訳だけど、その人間をそこまで追いつめたどす黒い人間にこそ憑りついてほしかった。
    人を攻撃した人間は結局、理不尽に人に嫌がらせをして、自分の思い通りの結果になって・・・これじゃ救われない。
    私だって、中学校教師や移住の男性のような事をされたら普通に腹が立つし、相手が憎いし、呪いたくなる。
    そんな思いをいだくのは良くないと思っても・・・。
    結局、心の弱い人間は淘汰されるってことか・・・とため息が出た。

    どす黒い思いを抱いて山道を歩く事もあるので、せいぜい憑りつかれないようにしようと思った。
    もう既に憑りつかれてるのかも・・・。

  • 友人のお勧めにて。四国は未踏ですが、なんとなくイメージしていた暗部。そこで暮らす人々が心に懐(いだ)く闇。それらが濃縮され、力を得ていく物語。充分に堪能できました。自然、音楽、風習、文化。それらが丹念に描かれていたので、わからない部分は本を閉じて調べ、情景を浮かべつつ読み進めました。点が線になり、線が面になっていくような展開、見事でした。 余談:文庫を購入しようかと思ったんですが、表紙が怖かったのでソフトカバーにしました。いま見たら、そこまで怖くなかった(笑)

  • るんびにの子供を読んで同じ作者のものを選んだ。久しぶりに陰にこもった日本的な怪奇譚を読んだ。人の念は怖いものだ。たしかに妬みや恨みは人を滅ぼす。鬱蒼とした森の中の粘ついた生き物が頭にこびりつき気持ち悪い。杏奈のダメージGジャンのくだりは私も泣き笑いした。アツ先生の魂にも感動。全体的に構成が上手いなぁと思う話でした。

  • 読み易さ健在、怖くなさも健在、何か違う歯痒さ

  • 四国。教師。校歌。恐怖。

  • 宮岡は論外として、松岡さんには同情できんなー。田舎の人間関係のほうがどろどろしてめんどくさいことなんて、今日び中学生でもわかるだろー。夢見すぎじゃろ


    人は、老いて、小さく縮んで、醜くなって、訳のわからないことを口走って、時には小さな子供のようになってーそして死んでいくのよ。でも、それってとても尊いことよ


    心に残ったフレーズ

  • 2014年2月西宮図書館

  • 舞台は平家落人伝説が伝わる四国山中の集落・尾峨

    競技中の事故で陸上を諦めた中学教師・金沢、家庭崩壊で親元を離れた金髪の少女・杏奈 疎外感に苛まれるIターン就農者・松岡、、、この3人が軸となって物語が進むのだが、前半はあまり接点が見えない。金沢と杏奈は教師と生徒という関係ではあるが、あとはもう同じ集落にいるってくらいしか共通点がない。

    あまりにも何も起こらずのどかな集落。特に早期退職して就農してきた松岡を見てると田舎暮らしってのもいいなぁ、なんて思ったり。。。 が、この松岡がだんだん不遇になっていく。松岡は尾峨に移り住むにあたり立派な古い民家を購入した。しかしこれが彼の不幸の始まりだった。尾峨に住む宮岡という男にとって、この古民家の持ち主は許しがたい存在であり、松岡がこの古民家を購入したせいでその男の借金が精算できてしまったのが気に食わない。こうして田舎での悠々自適の生活を楽しもうとしていた松岡は宮岡からの理不尽な逆恨み感情を受けることになる。

    ただ、松岡も松岡で無農薬農法に拘ったりして周囲の迷惑を顧みないのはどうかと思った。自分はしばらくは無収入を覚悟しているからいいかもしれないが、周囲の生活がかかっている農家からすれば本当に迷惑極まりないことをしている。民家購入の件は彼の非ではないが、農村に就農したからにはそこでのやり方に従うのも必要だろう。

    ちょっと「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」事件を彷彿させるような閉ざされた田舎空間ならではの人間関係を感じた。

    3人の物語が徐々に1つに収束していく中、いくつかの疑問点が出てくることになる。

    尾峨では過去に原因不明の殺人事件が同じ場所で二度起きている。
    杏奈の家に天井裏からしか見えない部屋とヤヤコと名乗る5歳くらいの少女が現れる。
    3番まであったはずの尾峨中学校校歌が2番までしか伝わっていない。
    森の中で正体不明の怪しい物体が蠢き、憎悪の感情を持った者に近づく。
    尾峨とは遠く離れたさいたま市の病院に入院する老女と娘の話が挿入される。

    こういった数々の疑問が最後に1つにつながる。伏線回収が見事すぎる。

    以下、ネタバレ注意!

    特に中学教師金沢が謎の少女ヤヤコから入手したさいたま市の病院を訪ねた結果、そこに入院していた老女が尾峨中学校校歌を作曲した女性だったと判明したところは鳥肌モノだった。

    そして、森の中で蠢く物体は粘菌が意思を持つまでに進化したモノだった。確かにこの本の前に読んだ『プラチナデータ 東野圭吾著 (幻冬舎文庫)』でも思ったが、細胞の集まりである人間の脳がシナプスのネットワークによって記憶し、意思を持ち、人格を生み出すということであれば、それを再現することは可能じゃないのか、と。

    それを再現するのはスーパーコンピュータが一番に思いつくけど、個々は単細胞生物なのにそれらが集まって迷路を解読するような特殊なネットワークを持つ粘菌の進化系であっても不思議ではない。

    人類が誕生するずっと前の太古の時代から生死の概念を超越して生き続けてきた粘菌が人類の生み出す産物よりも優れている可能性は否定できない。自然の絶大な力は人類には計り知れないことがまだまだたくさんあるし、この地球上には人類の調査が及ばない場所がまだまだたくさんあるのだから。

  • 新聞に載っていた本。愛媛の作家。
    田舎にやってきた外部の人間が関連して事件が起こるということである意味ぺ4?
    馴染みのある方言や、地名・校名が出てる。

  • 「不入森」に潜む怨念が動き出すとき、囚われた人の狂気と、それを絶つ黒い水...世界観が「蟲師」に似ているホラー。
    怪異を通して人のこころの闇を浮き彫りにするあたりがおもしろい。
    もうちと深みがあると良かったかも。

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入らずの森の作品紹介

事故で陸上選手生命を絶たれた中学教師、家庭崩壊で転校してきた女子中学生、Iターン就農を目指す初老の男。無関係だった人生が「禁断の森」で交錯した時、平穏な日常が狂い始めた…平家の落人伝説、漂泊の山の民、因習の小集落…期待の大型新人が日本の原風景が残る山村を舞台に、人間の狂気と再生を描く、瞠目の野心作。

入らずの森はこんな本です

入らずの森の文庫

入らずの森のKindle版

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