江戸の茶碗 まっくら長屋騒動記

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396633929

作品紹介・あらすじ

まっくら店と馬鹿にされる貧乏長屋に住むお初と、兄の太吉。浅草で小間物屋を営んでいた両親が騙されて店を失い、悲嘆に暮れて亡くなったのは二年前のこと。残された兄妹は「必ず店を買い戻そう」と固く誓いあっていた。ひょんなことから太吉は、名品"井戸の茶碗"を入手する。だが、二十両の有り金をはたいたその茶道具は、真っ赤な贋物だった。弱り果てた兄妹に声をかけたのは隣に住む浪人、赤目勘兵衛。我楽多茶碗を誰かに売ってやるという。日がな一日酒びたりの勘兵衛にどんな策が!?貧乏比べじゃ人後に落ちない住人ばかり。取り得は店賃の安さだけ。芝神明の長屋を舞台に描く新世代の人情時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代の人情ものが好きです。

    こちらは、海の底(底辺のさらに底辺)に安い店賃を誇る松蔵長屋が舞台の短編集です。
    そこに住む、日がな1日飲んだくれている貧乏浪人、赤目勘兵衛。
    頼りになりそうもないそんな浪人が、他の住人たちの抱える悩みや困りごとを解決していってしまいます。
    結局、赤目勘兵衛の正体(アカンベエだなんて明らかにふざけた偽名)は、判ったようなわからないような。

    ただ、真っ正直に生きていれば報われると信じることができる短編集は、とても面白かったです。
    続編があるなら読みたいし、中島要さんの他の作品も読んでみたいです。

  • 短編なのかと思いつつ読み進む。すべての話がちゃんと繋がっている。ほのぼのしつつ、小気味いい。楽しい読書だった。

  • 女性作家が描く時代小説も 大好きだが、この本の作家中島要氏の本も大好きである。

    着物の柄やそれに合わせた色合い。
    日本独特の色柄など、描き方が、素敵で、シリーズ物を読んでいた。

    これは、今まで、読んだことの無い貧乏浪人が主人公。
    その主人公も 飲んだくれでニートのような生活をしている赤目勘兵衛。
    余り表向きは、小説には、手助けする時にだけ、登場で、長屋の住人の生活で、難儀している事柄から、話が進んで行く。

    7話からなる。
    最初の話は、この本の題名の話である。
    親の代から人の良い兄妹。
    人の騙されながらも、自分たちは、まっすぐな性格。
    この兄妹が、偽物茶碗を浪人勘兵衛が、目利きを紹介するのだが……
    妹は、嘘をつけず、割ってしまう。天下の名品も有名人が価値を認めたら、それが名品となる。 
    物の価値を江戸っ子の正直を表す品に換えてしまった。

    母子家庭の男の子の寝小便も、浪人の勘兵衛、気になって、母親の仕事中に、預かるなど、人の良さを伺われる。

    嫁入り問答も、長屋の住人の駕籠かきの2人が、跳ねっ返りのお嬢様をどのようにして、おさめていくのか…
    最後のおちが、「かつぐ(担ぐ)のが商売だ!」と、落語のようなおちで終わるのには、面白い。

    最後は、寝小便をしていた定吉の母親と浪人の2人の話。
    今まで、ちょっとした事にモヤモヤしていた子供でなく、人間関係の感情の複雑さも理解出来る子供になっていた。

    面白かった。

  • 安い。それだけが取り柄の長屋に住む人々のあれこれ。
    いい連作だったなあ。

  • 貧乏長屋の松蔵店を巡る人情噺。主役は浪人の勘兵衛だが、支え合って生きて行く長屋の誰もが主人公。続編が気になって仕方が無い。

  • 読みやすくてのんびり読める。

  • 貧乏長屋が舞台
    住人たちと飲んだくれ浪人・赤目勘兵衛とのお話
    普通のひとたちを描いた短編集
    人との結びつきにほっこり

  • 肩の凝らない楽しい貧乏長屋人情もの。
    語り口が軽妙で読みやすさは抜群。うかうかしてるととぼけた会話に吹き出すので注意が必要。落語のノベライズといった趣きがあり、いくつかの短編には下げまでついていてニンマリする。
    中川学画伯の鼻くそほじる定吉のカバー絵がとってもいい。

  • まっくらだなと呼ばれる寂れた松蔵店に住む浪人赤目勘兵衛と長屋の住人のほっこりする人情話。
    なんとなく心温まるお話しでした。

  • だまされて店を失った兄弟。
    見てはいけないものを見てしまったこども。
    大店の主人が残した遺言のなぞ。

    浪人のもとにもちこまれてきた問題をさりげなく、人を斬らずに解決する。

    破格の安さで住むことができる長屋で生活する人々の、人情物語。


    江戸の町を舞台に、誰もが直面しそうな物語がつづられている。
    無理な設定もなく、特別際立った登場人物が登場するわけでもない。
    読み手として、ごくごく自然に物語に入り込める作品。


    どれも人情あふれた物語ではあったけれど、『真贋』のラストにおもわず目頭が熱くなった。

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著者プロフィール

早稲田大学教育学部(講談社文庫初期の傑作『古典落語』を編んだ興津要のゼミ)卒業。横浜在住。2007年、第2回小説NON短編時代小説賞で「寝姿指南」が最終候補になり、08年、「素見」で小説宝石新人賞を受賞。若き町医者を描いた初長編『刀圭』と、受賞作を含む短編集『ひやかし』が好評を集める。祥伝社文庫既刊に『江戸の茶碗』『酒が仇と思えども』。著書に「着物始末暦」「大江戸少女カゲキ団」シリーズ、『うき世櫛』『御徒の女』『神奈川宿 雷屋』などがある。

「2022年 『吉原と外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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