- Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
- / ISBN・EAN: 9784401618897
作品紹介・あらすじ
「寡黙で引っ込み思案な少年」から「傍若無人な帝王」へ-関係者証言、資料・文献の徹底調査で浮き彫りにされる"神話"の虚と実。人間性/音楽性の両面を冷静に描き出した、マイルス伝決定版の登場。
感想・レビュー・書評
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帝王マイルス・デイヴィスを知り、ジャズの歴史を知るという点では、クインシー・トループによって1989年に発表された「マイルス・デイビス自叙伝」に勝るものはなく、「マルコムX自伝」と並んで、アメリカ社会、特に黒人差別の問題を把握する上でも一級のレファレンスである。しかし前掲書は、人を煙に巻くミスティフィカシオンの天才たるマイルス自身の発言にどこまでの信憑性があるか怪しい点があるのも事実である。
自叙伝から遅れて13年、2002年に発表された本作は、イエール大学の教授として人類学やアフリカ系アメリカ人の研究に携わるジョン・スエッドによって、マイルス・デイヴィスを巡る膨大な関係者へのヒアリングと様々なドキュメントの分析によって描き出されたまた別の彼の姿である。
語られるエピソードはどれも最高で余りにも面白くページを繰る手が止められない。マイルス・デイヴィスの生涯は多数の女性たちとの恋愛・結婚・離婚によって彩られているが、本書ではそうした女性たちの目線からのコメントも多々収められており、双子座のマイルスの二重人格性を恐ろしいほどに知れる。
また、音楽的な面では、以下のようなエピソードは、彼の音楽を理解する上では極めて意味深であり、味わい深い。
・「俺は思った。濃厚なバターみたいな音、ということか?おそらく、メジャーとかマイナーといったコードの性格を決定づける音のことだと思い、それを取り除く努力をした。とげとげとした、音数まばらなソロになったが、2週間後には俺はものにしていた」(本書p267、マイルスから「バターみたいな音を弾くな」という謎めいた命令を受けたハービー・ハンコックのコメント)
・「『終わってしまう前に終われ』というマイルスの指示は、まさに彼のトレードマークである演奏なかばでの演奏の終わり方を意味している、とリーブマンは理解した」(本書p364、エレクトリック・マイルス時代のデイブ・リーブマンのコメント)
・「『俺はずっと考えてきたんだ。もし月面の無重力状態で音楽を演奏したら、どうなるか?だって、ダウンビートはありえなくなるわけだからね』と彼は言うと、無重量状態でビートを押しても抵抗力がない状態を、口で真似して見せた」(本書p409、ハービー・ハンコックがある夜にマイルスから受けた電話)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今コレ読んでます。二段組で450ページ以上、マイルス・ファン以外にはオススメしません。でもマイルス好きなら必読。すげぇ面白ぇ!