屈折くん

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著者 : 和嶋慎治
  • シンコーミュージック (2017年2月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784401643882

屈折くんの感想・レビュー・書評

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  • 猟奇で耽美でナンセンスなハードロックトリオバンド
    人間椅子のギタリスト(ソングライター兼ヴォーカリストの一人でもある)
    和嶋慎治氏の自叙伝。

    テーマ別エッセイと違って、
    当人が幼年期から時系列に沿って来し方を振り返る文章は、
    読者としては舞台の一人芝居を観覧する客に近い気分になってしまい、
    時折、見ていたいのに目のやり場に困るような、
    妙な感覚を味わった。
    作品のファンだから、
    背景を知りたいと思うのは自然な欲求なのだけど、
    知らなくていいこともいろいろあるよね、
    というのが正直なところ。
    とはいえ、柔らかなトーンで、
    しかも非常にこなれた文章表現をなさるので、
    あくまで「他人事」として捉えれば
    大変面白い読み物につき、
    人間椅子リスナー以外の方にもお勧めできます。
    大丈夫、曲と違って自伝は
    おどろおどろしくないから(笑)。

    しかし、若い読者はそうでもないかもしれないが、
    薹が立った女(苦笑)が今これを読むとだね、
    過去、幼児性の抜け切らない気儘なアーティストに
    振り回された女性の、その後を案じてしまうのだった。

    そして(話は変わるけど)個人的に気になるのは
    時々に耳にする「レコーディング中の怪事」。
    人間椅子メジャー1stアルバム制作時にも
    発生したのだそうです。
    ああいうのって何なんだろうなぁ……。

    巻末に対談2本(&シソンヌじろう氏,&みうらじゅん氏)のおまけ付。

  • 僕が高校時代にイカ天で人間椅子を知り、高校卒業後に家を出た後にも人間椅子のアルバム「人間失格」に出会った。これはメタルの神様が、人間椅子を聴きなさいと言っているのだと直感した。文学も知らないメタル少年は、これを素直に受け入れてCDを購入した。そして、耳から入る衝撃に全身が打ち震えた。

    この本は、人間椅子のギタリスト和嶋慎治さんの自伝である。いま楽器を始めた若い子が生まれる前から、人間椅子というバンドを極貧のなか継続している青年の物語である。生まれ育った青森県弘前市から始まり、幼少時代や多感な思春期、大学を経て、バンド人生を振り返る。そこにあるのは、気付きと感謝と涙。

    僕は和嶋さんより少し年下で、クリエイターとして挫折と貧乏を味わっているから、自分と重ねる部分も多い。苦労を経て到達した創作の境地に、僕はいるのだろうか。自問して止まない。美しい心で、死ぬ気で芸術に邁進したい。そう思わせてくれる一冊。

  • ちゃんと聴き込むようになったのは1990年代に入ってからだったが、そもそもはイカ天時代、もう30年近くも前になるあの頃から好きなトリオバンド、人間椅子の和嶋慎治氏がなんと自伝を出版されたのだというので、これはもう読まねばならない。
    その音楽性や世界観は好んでいるものの、さすがにプライヴェートの動向までトレースしていたわけではないから当たり前だけど、和嶋氏が30代の一時期に結婚生活を送っていたとは知らなかったし(結婚しているのかということ自体に興味を向けた経験がなかった)、ライヴ中のMCで冗談めかして「いや~今やってるアルバイトで…」などと話しているのを聞いた記憶はあるが、結構最近までこれほどリアルに苦労をされていたのだという事実にも初めて思い至ったのであった。
    デビュー以来、活動休止することもなくコンスタントにアルバムを出し続け、ツアーも精力的に行っているというイメージだったが、その姿の裏でこのような日々を生きていたとは。
    今世紀に入ってからも何度もライヴに足を運んでいるが、私がそのステージパフォーマンスを観て聴いて感動していたまさにその時にも、和嶋氏はこの書にある"暗黒編"の道程を歩んでいたわけだ。

    幼少時から中高、大学生時代にかけて抱えていた様々な屈託や、節目節目で氏を襲う神秘的なオカルト体験、そして各アルバムあるいは各楽曲が生み出された時の心理状況及び生活状態についても赤裸々に綴られているから、読みながらiTunesを開いて彼らの音を聴かずにはいられなかった。
    さらに読み終わった後に、特に2000年代後半あたりの曲を聴くと、また違った思いで耳を傾けることができる。

    アーティスティックな才能と情熱を持ち合わせ、でも生きるのにとても不器用で、繊細過ぎる和嶋慎治という一人の男が、剥き出しの"魂"を曝け出し、紙の上に殴りつけたこの独白はまさしく文学であり、その"魂"が自らの立ち位置をしっかりと掴んで、生まれ直しを遂げていく様は文句なしで美しい。
    ドン底を知った人間は、優しく、強くなれる。
    この境地に至った氏がとても羨ましいとさえ感じてしまう。

    人間椅子を背負うもう一翼、鈴木研二氏の自伝も読んでみたいものだ。

  • オズフェストへの出演以降、快進撃を続ける人間椅子。
    バンドが活動を開始してから25年以上経過してピークを迎える、というのは海外でもAnvilなど限られた例しか知らない。

    その快進撃の原動力、和嶋氏の自伝は文学的な筆致でリアリティ溢れる半生が綴られており、えもいわれぬ迫力に充ち充ちている。

    読み終えてから、当時「誰かの耳に届くのだろうか」と不安に駆られたという「人間失格」であるとか一本の大木に寄り添って生まれた「胡蝶蘭」を聴くとまた味わい深い。
    本書で言及されている曲を集めたサウンドトラックなど欲しいところである。

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