もうひとつのドア (ディアプラス文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784403520501

作品紹介・あらすじ

-きみはこれからきっと幸せになれる。生きる希望もなく、不幸に慣らされていた広海にそう言ってくれたのは、大きくてあたたかい手を持つ、三夜沢だった…。理不尽な借金に追われる十七歳の広海は、バイト先に客として現れた少女とその父親・三夜沢と知り合う。娘に冷たく見えた男にはじめは反発を覚えるものの、いつしか三夜沢の不器用なやさしさに惹かれ…。

感想・レビュー・書評

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  •  広海は親から疎まれ、母が亡くなった後は母の恋人であった男から、いわれのない借金の返済を求められていた。
     中卒の広海にはろくな仕事がなかったが、ただ働き、ただ借金を返すために生きる日々に虚しさを感じていた。
     そんなある日、勤め先のパン屋に現れた少女の世話を焼いたことで、少女の「家庭教師」として雇われることになる。
     少女の父親である三代沢が、最初は娘に冷たく当たっているように見えたけれど、それは不器用なだけだと気づき、同じやさしさを広海にも向けられたことで――

     すっごくすっごく切ない話でした。
     両親から愛されなかった広海が愛を知る話。
     別のところで作者さんがご自身のことを「金太郎飴作家」とおっしゃっていたのを見たんですが、「こんな切ない話が量産できることがすごい」と思いました。
     親に愛されてなかった少年の切なさとか、上を描くのがうまいなあと思っています。なんだか胸をかきむしりたくなる気持ちがいつもします。

     えちえち的な面では弱めですが、切ない話を読みたい方にはオススメします。

  • 何度か読み返していますが、先日久しぶりに読み返しました。BL小説を読み始めた頃に出会った作品。初めて読んだ時は号泣しました。
    その後いろんな作品に出会って耐性が出来てしまって、感動は薄れてしまうのかなと微かに不安になりながら読んだのですが、そんなことはなかった。やっぱりこういうセンシティブは月村さんならではだと思います。他を知ったからこそ。王道に、不幸受かもしれない。今ではありふれて陳腐になってしまった設定かもしれない。でもタイトルの意味。その不幸からどうやって抜け出すのか、その光。道筋。今読んでも目から鱗が落ちるし、丁寧な話だと思います。
    大人になって読んだ今、年齢差には驚きました(笑) 時代かな、今だったらこの年齢差ってどうなんでしょう、書けないのかな。
    今でも大切な作品です。

  • 良かったんだけど…受けが17歳…せめて二十歳になって結ばれてほしい…。

    建築家やもめ×家族に恵まれないフリーター。
    月村作品ここ何冊か読んだけど、虐待ものが多いのね?でも不幸な子が幸せになる過程は好きです。

    しかしこの威圧感あるお父さま、折れることを知らんなぁ(笑)最初の受けに対する振る舞いがスルーされててモヤっとしたけど、不器用な優しさを持った包容力ある大人で中盤からはトキメキまくりました。

  • 良かった!今まで、食わず嫌いもあって子持ち攻の設定は敬遠してましたが、思ってたより嫌じゃなかった。というかこの話についてはむしろアリ。その設定が織りなす物語が自然な展開で、読んでいてすごく引きこまれました。
    家庭に恵まれなかった薄倖の受が、ひょんなことで知り合った少女に自分の不幸な境遇を重ね、関わっていく内に、父親失格だと思っていた男が実はそうではなくて…と、本当の姿を知るうちに好きになっていく。読むにしたがって主人公の可哀想さが、ひたむきさやいじらしさに感じられていき、攻が惹かれるのも、また反対に主人公が攻に惹かれていくのもなるほどという説得力のあるお話でした。完全なハッピーエンドじゃないところもリアリティがあって良かった。使い古された言葉だけど、この二人なら乗り越えられる、そんな未来が信じられる素敵なお話でした。月村作品お馴染みの自己評価の低い主人公、地味だけど心温まる物語、そんな話を読みたい人には超おススメです。

  • 粗野な建築家と生い立ちに難ありな受け。

    基本的にマイナス思考の強い受けは嫌いじゃないけど、強すぎると辟易。
    でもそれはただ悲劇のヒロインぶってたらであって、この作品の受けはちよっと違う。
    心の軋み方がリアル。
    本当に辛かったり苦しい思いをしたことがある人ならわかると思う。
    人に近づく怖さ、術の知らなさ、自分に価値を見出せない思考に追い込まれた生い立ちはどう足掻いても幼少期に自分でどうにかできるものではなく、母親の自殺が愛されることへの断絶にも思えたんだろうな。
    そうなると、すべてが壊れ物で手にできないと、自分に与えられるものは手を伸ばしてはいけないと、手を伸ばせないものは見たくない、見なければ知らないままでいいって。
    無遠慮な優しさはナイフのように鋭く人を傷つける。
    誰もが親切や愛情を素直に受け取れるわけではない。
    受けは愛されることを怖く思い、逃げるけど。
    それを忘れるくらい心配したり自分の感情が走ることを覚えていく姿に最後は涙しました。
    攻めの無骨というか粗野さが、いつ受けを?それは愛情?娘と同じ?と少しはっきりしないけど、受け目線なのでそこは読み手次第かな。
    隣の柳瀬が意外だったこと、パン屋のおばさんの優しさ。
    まだ17歳なら、視野が広がることで世界が変わることがいくらでもある。
    それに気づかせてくれる人に出会えて本当に良かった。
    娘さんも可愛かったし、三人で箸置き使う幸せしっかり掴んで欲しいです。
    なんだか、浄化されました。

  • もうずっと前に読んだんですが
    頭痛くなるくらい号泣したw
    もう枯れて本を読んでも、めっちゃに泣けない身体になってしまいましたが・・・
    思い出の本w

  • 月村奎と出会った最初の作品。個人的にすばらしく心の琴線に触れた。

  • 月村さんの作品の中で一番好きかもしれません。読んで泣いて、このあとはずっと幸せなんだろうな・・・と思ってまた泣けてしまう作品でした。

  • !!注意!!
    非腐女子のオタクが研究のために読んだので、視点や感想に偏りがあるかもしれません!

    一番最初に読んだBLでした。
    正統派というか、BLというとずっこんばっこんなイメージがありましたが、そんな考えを払拭させてくれる一冊でした。

  • 【あらすじ】
    ―きみはこれからきっと幸せになれる。生きる希望もなく、不幸に慣らされていた広海にそう言ってくれたのは、大きくてあたたかい手を持つ、三夜沢だった…。理不尽な借金に追われる十七歳の広海は、バイト先に客として現れた少女とその父親・三夜沢と知り合う。娘に冷たく見えた男にはじめは反発を覚えるものの、いつしか三夜沢の不器用なやさしさに惹かれ…。

    【感想】
    月村さんの作品の中でこれが一番好きです。

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