午前五時のシンデレラ (ディアプラス文庫)

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  • 新書館
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784403521676

感想・レビュー・書評

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  •  とある事情があって、勤めていた勤務先から追い出され、馴染みのないパチンコ屋に勤める優也とそこで釘師として勤める飛良。
     最初は接点も何もない二人だったけれど、間違って開店前に入ってきた外国人を優也が、流暢な英語で店から穏便に追い出したところから、二人の距離感が変わっていく。
     そして、優也が抱えていた過去。
     それは教え子から自分のお腹の子の父親だと名前を挙げられたこと。
     まったく身に覚えのない優也だったけれど、優也の言うことを誰にも信じてもらえず、半ば逃げ出すように過去を隠してパチンコ屋に勤め始めたのだった。
     新たな勤め先にまで元教え子の父親に押しかけられ、行き場のなくなった優也に「自分の家に住めばいい」と飛良は言ってくれて……

     というお話。
     そうやって、立場も過去も抱えているものも何もかもが違う二人の距離がそっと近づいていく家庭が丁寧でとてもあったかい。
     飛良は暴力の世界に生きていた男で、そのことから優也をトラブルに巻き込んだりもするけど、そこを乗り越えていく過程が好きです。

     メリハリもあるけど、穏やかな小説が好きな方にオススメします。

  • タイトル…。
    この時間からパチンコ屋の清掃をしている
    訳ありの元教師が主人公。シンデレラ展開ではない。
    相手は元ヤクザのクギ師だし。
    今回も筋モン絡みのパチンコ稼業表裏、
    祇園太鼓の書き込みが素晴らしく、
    この作家さん未だハズレ無し。小倉弁最高!
    当て馬が同性愛的な執着じゃなくて、
    ヤクザに再び引き込まんとする荒さで
    ぐいぐい攻勢かけてくるのも、新しい(?)
    と思ったし。
    しかし先に読んだ「溺れる人魚」に続き、
    強姦まがいのシーンがあるのには鼻白んだ…。
    わたしの好みには必須のローション使用の行為も、
    終盤でローション買ってきた、ってセリフが
    やっとあってムッとしたけど、Tシャツ丸めて
    受けの腰の下に入れるって描写が新鮮だった。
    あと、怒りに駆られて飛び出していかんとす攻めを
    止めるのに股間にむしゃぶりつく展開もびっくり。
    いいリアリティがある。

  • 元893の釘師×元教師でパチンコ屋清掃員

    これ、すっごく良かった!!!!!!!
    最初は元教師がすごくかわいそうに思えたんだけど、すごく強い。達観してるような気もするけど、どこか心に空いた穴を眺めて暮らすような雰囲気で。

    釘師に助けられて働くことになって、最初は陰険にいじめられたり無視されたりひどく扱われたのに、釘師がさりげなく助けてくれるんだけど、それがすごくいい描写でした。
    それと自分の力でどんどん周りと打ち解けていく姿や、だまされた元教え子とのやり取り、釘師と過ごしている時間がとてもいい意味でリアルに思えて。

    元893だからそういった絡みの定番的なことも起こるけど、人の心情の揺れ幅を相手に悟らせる文章で情景や雰囲気をきちんと捉えられて読めました。

    幸せになってほしい。お互いを支え合いながら独占欲出しながら。
    すごく言葉に出来ない素敵な雰囲気のお話でした。
    ☆4.7

  • 訛り萌え!
    あそこを「あっこ」て言ってんのに悶えまくり。なんでこんなに萌えたんだ?自分…

  • 今までどうしてこんな良作を取り逃がしていたのかと、反省。
    九州の小倉が舞台になっていて、方言が巧みに使用されていて、とてもドラマチックで臨場感あふれる話。単行本2冊読んだくらいストーリーに奥深さがあって、堪能できます。
    893から足を洗った釘師×元教師でパチンコ屋バイトという異色のcpがまた興味深いというか、気になるというか。そして、その釘師なる職業や、パチンコ店の日常、二人のフクザツな過去のことまで丁寧に描かれていて、思わず物語にのめり込んでしまいました。

    メインキャラの二人に人間味がとても感じられて魅力的です。攻の飛良が男っぽくて色気もある年下攻め。喋る小倉弁がワイルドでちょっと陰のある飛良の雰囲気にぴったり。
    受の優也は元教師らしく、育ちがよさそうで生真面目。どんな仕事でも、どんな難題にも真正面からとりくむ地道さもありながら、決して女々しくはないところが長所。
    水と油のような二人が心を通わせ、次第にかけがえのない存在となってゆくまでが、じっくり描かれていてとても感動的です。

    飛良の好意を優也はちゃんと受け止めているのですが、31にして誰とも付き合ったことのない優也は、何事にも不慣れ。飛良を好きだけど、初夜強引に体を繋がれてHに対する拒絶感が起きてしまいます。その後優也に対する飛良の接し方に胸がきゅーんとなりました。もちろん、優也もきゅーんとして、だんだん気持ちも変化していくのです。もう、そのあたりの描き方が上手い。エロい。
    ピアスのシーンとその後の「抱いてください」Hに萌えた…

    飛良が昔世話になった阿南という男の存在が、そんな二人に嵐を巻き起こすのも見もの。阿南の登場はヤマ場を作り上げています。
    なんか、とっても893らしい893。
    そして、優也は阿南に嫉妬を感じることで、飛良への本気を自覚するんですよね。恋愛だけじゃ語れないところが男の三角関係。その分湧き出る愛憎もものすごい。
    怒りに任せて阿南の元へ仕返しに行こうとする飛良を止めるためにとった、優也の行動がまたすごかった…どんどん大胆になっていく元先生なのでした。

    エロもステキだったのですが、エロ以外のシーン、例えばパチンコ店内での仕事振りや、子供相手の太鼓練習シーンや、指つめ!!シーンなど、いい場面がてんこ盛りで読み応え充分。オススメです。

  • まず方言がこの話のなかでとてもいい味を出していると思う。感情の機微が率直に伝わってくる。それがまた本当にそう思うだろうな、という細かい波になってこっちにも伝わってくる。

    いつき先生の他の作品もだけど、どのようにして恋人になったか、までの気持ちの過程が丁寧に書かれてて、そこがとても好感を覚える。

    また、特殊な環境(パチンコ屋でその従業員と釘師)という、いつき先生お得意のその職業にまつわる描写も丁寧で世界観がはっきりしていて、目に浮かぶようなのも臨場感を与えていて、思わずひきこまれる。

    いつき先生を好きになったきっかけのお話でした。

  • 【あらすじ】
    ヤクザ崩れの釘師・飛良と、ドロップアウト教師の優也が出会ったのは、レトロなパチンコ店だった。危険な匂いのする釘師になぜか目をかけられて、優也は徐々に新しい職場に馴染んでゆく。だが元生徒の父親が店に乗り込んできたことから、優也は飛良と偽装同棲をする羽目に…!?待っていたのは、今までの価値観を百八十度変化させるような日々―北九州・小倉の街を舞台に繰り広げられる、男たちの人生ゲーム。

    【感想】
    九州弁です。

  • 過程が丁寧に書かれている素敵な作品だと思います。優也を大切にしようと思う飛良と、優也の焦燥。それらを二人で越えてのラストシーンの優しい甘さが何度読み返しても胸に沁みます。大好きな作品です。

  • ★3.5
    読了日:? 出版日:08/2007

  • 【あらすじ】ヤクザ崩れの釘師・飛良と、ドロップアウト教師の優也が出会ったのは、レトロなパチンコ店だった。危険な匂いのする釘師になぜか目をかけられて、優也は徐々に新しい職場に馴染んでゆく。だが元生徒の父親が店に乗り込んできたことから、優也は飛良と偽装同棲をする羽目に…!?待っていたのは、今までの価値観を百八十度変化させるような日々―北九州・小倉の街を舞台に繰り広げられる、男たちの人生ゲーム。

    小倉弁がいい味だしてる。読みやすく素直でやさしい話。

    (2009/7/9 再読)

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