新府城と武田勝頼

  • KADOKAWA(新人物往来社)
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784404029126

感想・レビュー・書評

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  • 15年以上前のシンポジウムの記録なのかな、平山さんの再評価はこんな昔からあったんだなと。それに対して柴辻さんは真っ向から勝頼否定の立場を取っているんだけど、どっちの論も筋が通ってて、どの人物にも言えることなんだろうけど、勝頼は本当に評価するのに難しい武将なんだなと思った。

  • 1999年に開催されたシンポジウムの諸報告を編集。
    ・日本中世社会における武田氏(網野善彦)
    ・武田勝頼と新府城(笹本正治)
    ・新府城と武田氏の築城技術(山下孝司)
    ・新府城の出土陶磁器が語ること(小野正敏)
    ・新府城跡整備への展望(八巻與志夫)
    ・武田勝頼の再評価―勝頼はなぜ滅亡に追い込まれたのか―(平山優)
    ・新府城とこれからの中世城館跡研究(萩原三雄)
    ・新府城の自焼・自落―彷徨える聖家族―(伊藤正義)
    ・新府築城と真田昌幸(柴辻俊六)
    ・新府城跡の発掘調査(閏間俊明)
    ・新府城と武川衆―逸見路との関係を中心に―(秋山敬)
    ・武田氏館跡の調査成果―居館から連郭式城郭への変遷を中心に―(数野雅彦)
    ・山梨県内における史跡整備の現状(小野正文)
    ・あとがき(小野修一)

    はじめに、網野先生が考古学と文献史学との協力によって日本社会像が大きく変わった事を解説。焼物、陶磁器の研究が進んだことにより、物と人の流れが解明された事。甲斐は安芸や若狭と交流があったことが窺える事。(両国とも武田氏が守護)河川、内海を利用した交流は従来思っていた以上に盛んであった事など面白い内容です。
    次に、笹本先生が愚将勝頼像の見直しとなぜ韮崎を選んだのかを解説。拡大した武田領国(甲斐、信濃、駿河、上野)を統治するためとのこと。国衆論など近年の研究の進展をみると、内容はいささか色あせてしまうが、それを勘案しても薄味。
    小野先生が考古学の見地から解説。広域流通品と地元産土器、焼物と物価、権威や富を表現する陶磁器など面白い。「かわらけ」はハレの宴会で使われたという。1回使うと汚れるため新しいお膳を出すたびに新品を出す。清浄の象徴で厚くもてなしている事になるらしい。東国で京都風(手づくね)の「かわらけ」を作って使用したのは北条氏だけだという。「かわらけ」一つからも色々な違いがわかるのが面白い。武田はろくろ製の「かわらけ」。当時の戦国大名の館が室町御所を模していた事は知っていたが、道具類の配置も規範とされていたという。将軍の権威が裏打ちすることにより自らの立場を権威づけ、権力者としても徳を示したというのは面白い。
    平山先生の「武田勝頼の再評価」。実は本書を買ったのはこれを読むためである。
    当然ながら最新作、「武田勝頼と長篠合戦」と重複する部分があるが、むしろ十年以上前には武田勝頼再評価の骨格が出来上がっていた事に驚く。(プロの研究とは息の長いものであると感嘆した。)
    桶狭間以降の信玄の外交に触れているが、当初は三国同盟を堅持しようとし、今川氏真に三河侵攻作戦を提案したものの拒否された事、織田と同盟した事により険悪となり駿河に侵攻することとなったという。義信事件が残した禍根についても丁寧に解説されている。
    柴辻先生の「新府築城と真田昌幸」はタイトルがミスマッチで羊頭狗肉の感あり。一応昌幸の書状について検討しているもののとって付けた感じで、内容に深みが無い。また、読んでいて勝頼に対する酷評が目立つ。これがまたケチをつけているように読めるのが残念なところ。
    閏間先生の「新府城跡の発掘調査」。文献史学と考古学の相互補完という点で興味深い。

    どうしても興味のある分野とない分野が生じてしまいますが、読み応えのある一冊でした。

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