孤宿の人 下

著者 :
  • 新人物往来社
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  • Amazon.co.jp ・本 (423ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784404032584

作品紹介・あらすじ

その男は"悪霊"と恐れられた!涸滝の幽閉屋敷に下女として住み込むことになった少女ほう-。丸海藩の内紛が起こるなか、"悪霊"と恐れられた男と無垢な少女の魂の触れ合いが…。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。

    上巻では、丸海藩内の藩主や幕府への忖度や、凶事を利用した悪事など、突然降ってきた禍いの中で人々の心の動きにひきつけられた。

    下巻では、凶事のご本尊である加賀殿のが幽閉されている屋敷に下女として働くことになった幼いほうが、その加賀殿に手習いをすることとなる。巷では、鬼だ悪霊が取り憑いたと言われている加賀殿だが、ほうにはそんな風に思えない…。
    加賀殿の丸海藩お預かりになるまでの経緯も描かれ、なんとも悲しくやるせない。

    後半は、藩内の御家騒動を未然に防ごうと水面下で動く者達と、純朴なほうや宇佐の働きが対照的だ。
    しかし、ほうの周囲の優しい人たちが次々と倒れていくのが辛過ぎる。
    ちょっと下巻は悲しすぎた。2020.5.25

  • ようやく丸海の町に平穏が戻ってきた

    ほうの味方となり守ってくれた宇佐、渡部一馬、石野様
    そして加賀様・・・多くの犠牲者を出して

    結局、加賀殿は鬼でも悪霊でもなかった
    次々と起こる奇怪な事件は、加賀殿が運んできたものではなく、恐怖・我執・欲・憎しみなど人間がもともと内に隠し持っていたものを加賀殿を口実に外へ出すことができるようになるからこそ起こったものであった

    ほうの無垢さが大人たちがこぞって踏み迷っている闇を晴らしてくれるのではないかと期待され、加賀殿の元に送られた舷洲先生の思惑は、見事、的中

    かけがえのない無垢なほうが加賀殿の冷たく固く凍りついた心を溶かしていく
    毎日のご機嫌伺いの時間の加賀殿とほうのやりとりに心を打たれる
    たどたどしいながらも懸命に加賀様のご機嫌を伺い、問われたことに答えようとするほうの姿が目に浮かぶようでいじらしい
    真剣に加賀様の体調を気遣うほうの真心を加賀殿もしっかり受け止められる
    加賀殿は、鬼でも悪霊でもない
    ほうの心の美しさを見抜き、慈しみ、名前まで与えられる

    遺品のようにして、ほうの元に届けられた手習のお手本と『宝』の字
    阿呆のほうではない、かけがえのないほうの命そのものが宝であると・・・

    感動で胸が熱くなった

    将軍家斉の思惑をも巻き込んだ壮大な歴史小説であったが
    その反面、人間誰しものの内側に住み着くドロドロしたものを題材にした心理小説のようでもあった

  • 宮部みゆきさんの歴史小説。

    江戸で妻子を手にかけるという大罪を犯したとして元有能な官僚 加賀様が讃岐地方の丸海に送られてくる。
    一方、面倒を見てくれる親も知り合いもないわずか10歳に満たない『ほう』も、丸海に下女として暮らすようになる。
    紆余曲折を経て、ほうは下女として加賀様にお使えするようになる。

    物覚えの良くない少し頭の足りない幼いほうは、貧しく、身分も低く、何も持ってはいない。なのにどんなに過酷な状況に置かれても、ほうの傍にはいつも温かく接してくれる人が寄り添う。その大切な人達はみな命を落としてしまい、物理的にはほうは繰り返し独りになってしまう。

    ほうには何もないけれど、心が澄んでいて、それ故にまっすぐに物事や人の核心に辿り着く。ほうの拙い言葉は対する相手の心を澄ませる。理屈や知識が邪魔をしない分、余計な事を考えず、罪が無く、美しく、賢い。

    人々から人鬼と恐れられる加賀様は、子供の頃ほうがつけられた阿呆の呆という名前を、いく道のわかる子になったとして『方』という字を充ててくださり、その漢字をほうに教えてくれる。

    加賀様から読み書き、算盤を教えていただくうちに、ほうは加賀様を敬い濁りなく大切に思うようになる。そんなほうに加賀様が最後に与えてくださった『ほう』の漢字が泣けてならない。

    ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

    また読みたくなり、また最後で、涙が止まらない。こんなに素直に泣ける小説はちょっとない気がする。

    宮部みゆきさんの小説の中で一番好き。

  • 幕府からお預かりの加賀殿と主人公の薄幸の少女、ほうの
    繋がりが下巻の主軸に。

    丸海藩の中のお家騒動が15年前の原因不明の病の事件とも繋がり。

    小さな丸海藩は季節柄、多くの雷鳴が轟く頃、市内を揺るがす大火事になる。

    圧巻の大スペクタルで物語は閉じる。

  • ほうと加賀様の日課が始まり、ほうは鬼と呼ばれる加賀様への恐怖が薄れていくのを感じる。
    そして、まちでは啓一郎が藩の陰謀やお家騒動の歴史を知り、寺子となった宇佐は町人の恐怖からの狂気が強まるのを感じ取る。

    後半、まちを襲う天災と騒動により多くの人が命を失い、怪我を負ってしまいます。
    事態が収束へと向かった後、最後に加賀様がほうに与えた名前が胸を打ちます。
    陰謀や死人が多く出たラストの割りに、読後の後味は清涼感があります。

  • 下巻読みました。とにかく雷の荒れ狂うさまが激しくて安定している自分の暮らしも何もかも壊し尽くされるようでした。映像の上をいく表現でしたね。
    ただ、渡部が死んだのには驚きましたが宇佐まで死なせなくてもよかったでしょうにと思います。

  • 2023年最終に読了した本。
    上下本で長かったけど、スムーズに読めた・・・というか、
    少し物足りなかったかな。
    下町ものと武家ものの混合がやや中途半端かな。

  • その男は〝悪霊〟と恐れられた! 涸滝の幽閉屋敷に下女として住み込むことになった少女・ほう――。丸海藩の内紛が起こるなか、〝悪霊〟と恐れられた男と無垢な少女の魂の触れ合いが……。

  • ほう、呆、方、宝。
    たくさんの陰謀がゆらめく丸海の町中とは裏腹に悪霊の住処としておそれられる涸滝のお屋敷の中のほうと加賀さまのやり取りが優しすぎる。
    匙家の思惑通り、丸海の神となる加賀さま。死を願いながらも、実際何が自身に起こるのかは知らされてなかったのね。ただほうの一言ですべてを悟る。やはりすばらしく頭の切れるお方なのだ。そんな人が罪をかぶらねばならぬ暗い政治の世界は今も昔も変わらずか。。。
    たくさんの人が死んでしまったけど、これからのほうが幸せでありますように☆

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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