偽書「東日流外三群誌」事件

著者 :
  • KADOKAWA(新人物往来社)
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本棚登録 : 55
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784404034366

作品紹介・あらすじ

十四年前、「東日流外三郡誌」が戦後最大の偽書と呼ばれ、本州最北端の地を巻き込む社会問題にまで発展したのはなぜなのか?擁護派の敵とされながらも、真偽の追及に奔走した東奥日報の記者が真実に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 現在では偽日本史、偽書として名高い『東日流外三郡誌』の顛末を、当時記事にし続けた地元紙記者がまとめた本。冒頭のエピソードには考えさせられた。『天井を突き破り落ちてきた伝来の古文書』という触れ込みなのに、その家には物を隠せる様な梁や天井が無いという事実。

  • 天下のインチキ古史古伝「東日流外三郡誌」事件に巻き込まれてしまった著者の当時を振り返った一冊。古田武彦による著者への嫌がらせやら作者である故和田喜八郎のインチキというか詐欺師っぷり、同業者のいい加減な裏を取らない報道や、被告と原告が逆だったり、東日流外三郡誌事件の表と裏を専門に偏らず書ききった名著だと思います。

  • 「王様は裸だ!」誰かがキチンと発言・指摘しないと、疑わしくいかがわしいネタまでがある種の既成事実として拡散していく・・・。
    ある種のホラーでもありますね^^;
    ネタとしては面白いし、ネタをネタとして楽しむ余裕は失ってはならないと思うが、こんなお笑いネタが何故ここまで広まったのかを追求した一冊。
    この書のラスト「優しさゆえに沈黙し、真実にいたる道をゆずってはいけない」重い言葉です。

  • 「まだ信じますか?幻の東北王朝」

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=072654

  • 戦後最大の偽書を緻密な取材を通じて矛盾点を洗い出し、渦中の人間を描いている貴重な記録です。

    こうした史観の生まれた地方人の心情まで推し量ることで、読み手に事件の背景までを実感させてくれます。

    偽書の作者が偽文書の制作の手腕のみならず、もう少し教養のある事物であったのならば、偽書との証明はかなり困難となったことでしょう。古代史マニアの方々も大いに楽しめたでしょうし、皇国史観をお持ちの方は激怒したことでしょう。

  • 1/5 お客様に貸りる

  • 古代東北には朝廷とは異なる独自の国が存在したという「歴史」が記された「門外不出」の『東日流外三郡誌』。 <br>
    青森の和田家から突如「発見」されたこの書物、当初から学者の間では「触れるに値しない」程度の代物、つまり史料としての価値はなく、学会から黙殺されていた。しかし、野放しにした結果、『外三郡誌』は「敗者」の歴史を抱える東北の歴史コンプレックスを糧に、人々を引きつけた。<br><br>

    結果、裁判沙汰にまで発展した戦後最大の偽書騒動を追いかけた『東奥日報』記者による事件のルポ。これが相当面白い。時系列に並べられた記録は記者である著者とともに事件に迫っていく感覚。また、本書は歴史が作られる営みと偽書が信じられた背景に迫っている。<br>
    歴史の社会学的にもこれは面白いなあ!と思う。もうちょっと早く読んでいれば知識社会学のレポートの格好のネタでした。<br>

    しかしまあ、かなりのとんでも事件です。擁護派は『外三郡誌』の真実性を証明するために、福澤諭吉の「天は人の上に作らず、人の下に人を作らず」という『学問のすすめ』の一文を『外三郡誌』からの引用とし、発見者の家から「発見」された「引用しました、ご許可ください」という「福澤の手紙」の「写し」を持ち出す。これが事実なら大変なことだが、なんとこの手紙で「福澤」は自著「学問のすすめ」を「学文之進め」とまちがえたり、三千通ある福澤の手紙の中で一度も使われていない花押が記されていたりとお粗末のオンパレード。しかも、原本はない。<br>
     『外三郡誌』自体も<br>
    ?筆跡鑑定の結果、発見者のものと断定
    ?ほとんどが筆ペンでかかれている
    ?1935年以降、中国共産党軍の思想教育を受けた人たちに対して初めて使われた政治的な言葉「洗脳」や猪木の「闘魂」と言う言葉が使われている <br>
    などなどとんでもない。<br>

    --------------------------------------------------- <br>
    かつて東北地方には正史に登場しない王国があった。ある時、津軽の荒覇吐王国が西の倭国(大和朝廷)を滅ぼし、津軽の王子が倭国王に即位(孝元天皇)したが、倭国占領政策をめぐり王国の内部対立がおこり、日本は東の「日高見国」、西の倭国に分裂。倭国はかつての仲間をまつろわぬ「蝦夷」と呼び、征夷を繰り返した。東の王・安倍氏は源氏に滅ぼされるが、その後裔は安東氏となり津軽の十三湊に本拠地を移し、アジア・欧州との貿易で栄え続けた。しかし、大津波でその遺跡や文物は失われ、南部氏に侵攻で安東一族は分裂してしまった・・・。というのが東日流外三郡誌のアウトライン。 <br><br>

    本当だったらかなり面白い話で、以前から興味がありました。未だに『外三郡誌』を信じる人たちもいれば、偽書騒動を知らずに引用する海外の学者もいるという。作家高橋克彦も、『外三郡誌』は「偽書」とするも、作品の中に影響が見られる。まあ、これが面白いんだけど。などなど、『外三郡誌』は、かなりの影響力を未だに保持している。今度擁護派の人たちの主張も読んでみたくなった。

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