潜り人、92歳。

著者 :
  • 新人物往来社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784404041982

作品紹介・あらすじ

「南極・北極以外のすべての海を潜った」男が語る、まだ見ぬ日本と世界の姿とは…。

感想・レビュー・書評

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  • ダイバーに関する本は少ない。ダイバー自身が書いた本はもっと少ない。しかも、今年92歳。戦前からダイビングをしているのだ。その経歴からして、水中写真家、ロマンポランスキーの映画の水中部分の撮影担当、水中遺跡調査、世界水中連盟(CMAS)日本の代表と、すごいです。

    日本と海外で潜ったところ19箇所のエピソードを思い起こしながらのエッセイ形式をとっています。決して名文家でもないし、何を言わんとしているかよくわからなくなる部分もありますが、そんなことはこの作品の魅力を少しも減じることはないのだ。

    潜っているところがすごい。地下鉄工事のため構造調査で皇居に潜るとか、原発の取水口に調査で潜る、海女との交流、山中湖に考古学調査で潜るなど、少ない文章の行間を想像するだに鳥肌がたつエピソードの数々。

    日本では水中考古学という学問自体がいまだ成立していないこともよくわかったし、海洋国家であるにもかかわらず沈船の数さえわからないというこも初めて知った。

    最近レジャーダイビング以外の世界が急速に魅力的に思えてきているタイミングで読んだことはラッキーだった。

  • 伝説的なダイバーである著者が、これまでの潜水の中から非常に興味深い経験を語った良書。

    皇居とか、山中湖だとか、ビザンチン時代のエーゲ海の沈船とか、潜った場所もとんでもない場所だし、決して流暢な語り口とは言えないが、本当に貴重でユニークな、驚きの経験談が次々に語られて、興味が尽きない。面白かった。

    著者が訴える、水中考古学。初めて聞いた学問分野だし、日本ではまだ取り組む人もいないそうだが、非常に興味が沸いたし、その大切さが分かった。もし自分が今、大学生でこれからの学問の道を選ぶとしたら、選んでみたいかも。

  • 著者は海を、海女を愛した水中のプロ。南極と北極以外のすべての海を潜り、海以外では皇居の掘、はたまた原発沖まで日本中、世界中のあらゆるところを潜り調査してきた。英語、フランス語が堪能で、潜水の技術、水中考古学・海の文化・歴史の知識がある彼はまさしく海に関するプロフェッショナルである。すべて海への情熱がなせる業である。そんな海をこよなく愛した男の潜水人生と水中世界をつづった1冊。

  • 大正生まれの水中写真家で水中考古学者、とにかくいろいろなところを潜ります。
    元々私家版として書き溜めた原稿を地震をきっかけに出版すると決めたようだ。
    東海村、浜岡原発、六ヶ所村も潜っておりそれもきっかけなのだろう。
    浜岡原発沖は砂漠の様相だそうで、断層の上でさらに砂丘の上うーんちょっと良くないね。

    ジャック・マイヨールとの出会いも面白い、シチリアのホテルでビールジョッキ片手にテーブルに割り込んできたイタリア人はいきなり日本に連れて行ってくれと頼んできた。その後日本で当時の素潜り記録76mを達成する際には認定員になっている。
    パール・バックの映画「大津波」の日本ロケでは水中撮影だけでなく海女の生活部分については台本の手直しまでしている。ただ潜るだけじゃないなかなかの人なのです。

  • 皇居の堀の調査から、石垣の構造は、あのイタリアヴェネチアのような軟弱な地盤の上に赤松の松田の杭を打っていたことが分かったそうだ。オモシロイ。
    世界中を「潜ってきた人」の回想録、ちょっと読み辛い癖のある文章なので、オモシロそうなところだけ、ななめ読み。

  • タイトルの「潜り人」を見て、ああこれは海に潜ってアワビとかを採る漁師さんの聞き書きの本だと勝手に思い込んでいたのだが、全く持っての勘違い。まずは潜る場所というのかエピソードが超弩級というか想像を絶するものが次次と、ある意味脈絡無く続くことに驚く。

    まずは最初が皇居のお堀の潜水調査。次いで、正力松太郎の顧問を務める時代、正力に頼まれ潜るのが東海村原発そして今を時めく浜岡原発沖の海岸線調査。沈没した戦艦陸奥の撮影、北陸能登半島での海女の記録映画撮影。ノーベル文学賞作家パール・バックに気に入られ映画の台本を修正し映画撮影参加。ジャッ・マイヨールとの出会いと伊豆での素潜ぐり世界記録達成立会い。エーゲ海での海洋考古学調査参加とパナマ政府招待による現地調査と息継ぎもままならぬ(流石に潜水の本)逸話の数々。

    現在92歳ながら、長らくダイバーとして過ごした過去を振り返るという意味でこの本を書き上げたらしいが、世界を股にかけて潜った場所の数々とその目的が夫々大きく異なっているので一体全体彼の正体は何?という不思議な気持ちになる。著者肩書きを見ると「水中考古学者、水中写真家、海女文化研究家となっているがどうもその枠の中では収まらない人物だ。

    本書を読むと逆にどうして海の無い群馬県生まれの彼がダイバーの世界に入り込んだのか、そしてどうやって日本のそして世界の著名人と知り合ったのか、と云うような話により興味をそそられるのだが、その当りは最小限しか触れられていないのがちょっとばかり残念な所でもある。

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著者プロフィール

1920年群馬県生まれ。現在92歳。水中撮影家。1955(昭和30)年頃より約30年にわたり全国の海女村を踏査。海に潜る美しい海女たちを水中から撮影した。その仕事はジャック・イヴ・クストーやブルーノ・ヴァイラッティらに見出され、世界的な評価を受けた。

「2013年 『海女のいる風景』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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