「健康な土」「病んだ土」

  • 10人登録
  • 4.25評価
    • (1)
    • (3)
    • (0)
    • (0)
    • (0)
  • 3レビュー
著者 : 岩田進午
  • 新日本出版社 (2004年6月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784406030885

「健康な土」「病んだ土」の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 狩猟採集生活は非常に効率的であった。アフリカのブッシュマンは、豊富で栄養のある食物を確保しているにもかかわらず、それに必要な労力は、平均して週に2日半程度でしかないのだ。
    人類が農業をはじめると、主要食糧としての作物への思い入れが強くなり、それを中心とした偏った自然観が形成される。自然を全体としてとらえるのでなく、人間の特定の利益の視点からのみ自然を見るようになった。産業革命以降、特に現代、人間にとっての効率性、利便性のみを追求する思想の萌芽がここに誕生した。
    途上国の貧しい人々が土の砂漠化●不毛化を進めてしまうのは、先進国も都合である。かつて植民地時代、宗主国に必要な原料をプランテーションで集中的に栽培させられてきたが、このモノカルチャー的農業形態は、独立後も政府や国際アグリビジネスに引き継がれた。プランテーションはその国の肥沃な土地をほとんど使ってしまうので、主要食糧作物の西さんは痩せた地で行われる。そして痩せた農耕地のさらなる酷使、周辺の森林もしくは草地への農耕地の拡大要求が生じるのは必然である。また農業の中心がプランテーション作物にあるため、その研究は進むが、主要食糧作物の研究は進まない。
    陽樹とは、光が十分ないと成長が困難な木で、アカマツ、コナラ、クヌギなどである。陽樹は成長し高木になると自分たちの子孫を残せなくなる。だから、次は光不足の条件でも成長可能な耐陰性の陰樹に遷移していく。北海道の北部および東半分の地域ではエゾマツ、トドマツなどの針葉樹、それ以外の北海道、東北地方を、関東から中部地方の内陸部ではブナを始めとする落葉広葉樹、関東地方沿岸部から西南日本にかけてはシイノキ、カシノキ、タブノキなどの常緑広葉樹が、それぞれの地域を代表する陰樹である。こうして、陰樹林は、一応見かけの上では植生が変化することなく、安定している。このような森林を極相林と呼ぶ。
    宮崎駿は「人間が普通に慎ましく暮らしている分には自然と共存できて、ちょっと欲張るからダメになるということではなくて、慎ましく暮らしている事自体が自然を破壊しているんだって言う認識に立つと、どうしていいか分からなくなる。そこにいっかい行って、そこから考えないと環境問題とか自然の問題はダメなんじゃないかと思うんです」と言った。
    土にも壮年期や老年期があるが、主に熱帯の土は痩せた土である。寒帯や温帯の土がおよそ1万年前まで、10万年間にわたって続いた氷河期の影響でその生成過程が中断されていたのに対し、湿潤熱帯、亜熱帯の父の生成過程は進行していた。温帯で、多雨なわが国の土も、いつの日にかは、必ず老年期がくる。これをゆるめることもできるように考えなければならない。
    熱帯雨林の地は赤く老いた土であるのに、豊かに繁茂しているのはなぜか。それは多様な植物が、土中や空中に根を張り巡らし、急速な落葉、落枝の分解により土中に提供される養分を徹底的に利用し、うまくリサイクルしているためである。植生の多様性が、生態系の安定に大きく寄与している。生態系が豊かで相補的であること。多種多様な生物で構成されていれば、その生態系内で互いに過不足を補うことができる。豊かであればあるほど、物質循環の経路は複雑であるから、経路のどこかに支障が生じても、バイパスとして他の経路が利用できるので、生態系全体で機能麻痺に陥ることがない。
    だが極相林にいたると、種の多様性が減少する。
    連作障害とは、土中の生物を餌とする植物に好みがあるため、同じ作物を連続して栽培すれば、その作物を好む生物ばかりが増殖を始める。その中には病害虫も含まれているので、害を発生するレベルまでに増えると、連作障害が起こる。
    土地の肥沃性に大切なのは、土のバラツキであった。耕すことが地のばらつきをなくす操作に外ならないのに対し、不耕起栽培は自然の摂理に沿って、バラツキを強めるものだからである。
    不耕起栽培の土は指で押すととても硬いが、根と同じとても細い硬度計ではかると、すごく硬い部分とすごく柔らかい部分がジグザグに並んでいる。私たち人間のスケール感覚で発芽や根ばりが困難だと判断されても実は何等の抑制を受けることなく、根の伸張が可能である。

  • 相変わらず化学的なことはわからないけど、農薬と害虫のいたちごっこや、土の循環が大事なこと、農業の地位の見直しについて考えさせられた。
    私は農家の息子の娘なのに父が家計を支えるために農業から離れたため、あまりそういった話を聞くことがなかった。自分の娘や息子には食の大切さや農業の大切さをきちんと伝えていきたいなと思った。

    初めに農関係の本を読み始めた頃よりは理解できるようになった気がする。

  • 特に予備知識がなくても読めるように分かりやすく書かれているし、そんなに長くないから数時間でさらっと読める本。
    内容はかなり入門的だけど、土の構造やその成り立ち、農業と土との関係から人間活動による土壌の劣化まで一通り解説している。

全3件中 1 - 3件を表示

岩田進午の作品

「健康な土」「病んだ土」を本棚に登録しているひと

「健康な土」「病んだ土」を本棚に「積読」で登録しているひと

ツイートする