天窓のある家

著者 :
  • 実業之日本社
3.40
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本棚登録 : 99
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408534459

作品紹介・あらすじ

幸せに見捨てられた女。偽りの幸せにすがる女…。緩慢な日常の流れの中に身をまかせる女たちが、決意する一瞬。誰も、気づかぬうちに、女は心に変調をきたす。偽りの幸せなんて、許さない。あの人の不幸を、心から願う-。直木賞作家の円熟味あふれる9つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 中年と呼ばれる世代の、若さと栄光の喪失、維持とプライド、自己の価値に凝り固まった結果うまくいかない現実、、、これらが、生々しく綴られる短編集。
    どこかで他人の幸せに顔を歪め不幸に微笑む女性、マザコン要素をひた隠しにする男性が、あまりにリアルで怖すぎる話ばかりでした。

  • 表題作の「天窓のある家」は嫉妬や執着、思い込みによって壊れて行く女性が描かれている。誰しも多少は持っている負の感情。自分自身でうまく処理できないとこうなるんだなぁと恐ろしくなります。

    「友と豆腐とベーゼンドルファー」は一家の大黒柱として頑張るピアノ教師の有子が主人公。遅くまで働いて、節約して、自分の欲しいものは我慢する日々。ある日、夫がかつての部下にお金を貸してやりたいと言ってきた。悩む有子。決断にエールを送りたい。

    仕事でも家庭でも完璧であろうとする有能な会社員が主人公の「手帳」、生まれてこなかったはずの我が子の幻覚を見、怪しげな霊能者に高額な代金を払ってしまう「誕生」、老いた母の元を週に一度訪ねていることを妻に言えないサラリーマンの話「密会」など、どの話も日常生活で実際に耳にしそうなことがテーマ。私はこの本好きです。

  • 9編からなる短編集。
    中高年を迎える女性の心の変化を描く。総じて暗く希望が見えない話である。
    確かに女性も40代を迎える頃から人生は希望より絶望の方が多く、明るさは見えにくい。夫婦の関係も綺麗事ではすまないエゴのぶつかり合いやそれを避けてお互いに無視を決め込まないとやっていけない現実がある。
    でも、私の好みとしては、そこを描いたままで終わって欲しくはなかった。
    チラッとでもいいから、希望の光があるものが好きだ。
    現実感のある描写に優れている篠田節子は、現実の提示で終わる作品が多いし、そこがウリだろう。この作品も、身も蓋もない現実のオンパレードで、実に「そうだよなあ」と共感は感じるが。しかし、私はワザワザ時間を割いて憂鬱な思いしたくない。じゃあ、エンターテイメント小説だけ読めば、と言われても困るけど。
    そこが、星一つマイナスなところ。
    このなかでは、「パラサイト」が好きかな。実際こんな生活をしている男女は現在多いと思う。これからももっと増えそうである。

  • さすがの設定。
    人物の描写も的確で説得力がある。
    全ての話に満足できるわけではないが、やはり、さすが。

  • (収録作品)世紀頭の病/パラサイト/友と豆腐とベーゼンドルファー/密会/誕生/果実/天窓のある家/手帳/野犬狩り

  • 一気に読んでしまいたくなる本だった。リアルな情景が心情が伝わる。若い女性や男性には伝わりにくいものもあるだろう。篠田節というのかどうか、この作家にはいろんな実体験もあるのだろうか。

  • 充実した短編集だった。登場人物の心情にとても共感できるのに、数滴の不思議がじわじわと別世界に読むものを引き込んで行く感じ。どの作品もいいけど、特に「手帳」が好き。

  • 短編集。篠田節子の魅力は綿密な取材と構成に依るところが強いと思っているので短編ではそれが活かされ切ってないように感じた。同じようなモチーフを繰り返し描くのはなぜだろう。

  • 人間の、特にここでは女性の愚かさ、醜さをいつもの篠田節でこれでもか!と辛らつに描いた異色短編集。複雑な設定にも関わらず、簡潔・明瞭な描写が潔く、多少の荒唐無稽な物語でもすとんと腑に落ちるのが篠田さんのすごいところだ。あまりにも女性を追求しすぎていて、男の僕には今ひとつのめりこめなかったのが残念。
    「世紀頭の病」が馬鹿馬鹿しくて面白かった。

  • 連作ではない短編集。人の心の、気がついていても目をそらしてしまいがちな汚い部分にあえて焦点をあて、抉って拡大して見せるようなお話。篠田節子の描く女性像には勇気付けられることが多いのだけど、本作はすこし毛色が違っていて戸惑った。好きだったのは一話目「友と豆腐とベーゼンドルファー」。これは救いがある。五話目「世紀頭の病」は深刻そうに見えて喜劇で、星新一ばりのオチが面白かった。六話目「誕生」は一転してホラー。題材が題材だけに読むのが辛い。どの話のヒロインにもすこしずつ自分自身を重ねられるところがあるのが怖くて上手い。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

篠田節子の作品

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