メメント

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 89
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408535388

感想・レビュー・書評

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  • 140725

  • 最近ではメディアの云う事をそのまま鵜呑みにする人は少なくなってきたと思うが、それにしてもレベルの低下は甚だしいと思う。例えば新聞だどを読んでいても、明らかに事実を確認していないと思われる記事を目にすることがある。もっと勉強して欲しいと素人の自分でさえ呆れることがある。
    森達也氏はメディア側の人々のなかで信用できる数少ない人だと思う。「メディアなんで信用できない」とはっきり述べているし、自分に不利になるようなことも隠蔽せずに書いている(ように見える。所詮真実なんてわからないのだと思う。)
    森氏の著書を読むと非常に勉強になる。メディアとどう対峙すればよいのかがわかるからだ。業界の嫌われ者とご本人は述べているが、これはきっと真実なのだろうと思う。

  • 考えることはしんどいです。流されてしまいたい、白黒つけたい、人間の性。でもそうしたら、大切なことに気付かず、見逃してしまうんだろうなあ。それも嫌です。読みながらそう思いました。

  • 小学校の低学年の頃、夜更けに布団の中に入ってから、ふと自分はいつ死ぬのだと考えた。きっかけはわからない。飼っていた虫か小動物がその日に死んでしまったとか、たぶんそんなところだろう。とにかく考えた。そしてとても強い恐怖に襲われた。

  • 「生彩」というものは特に感じなかった。これがありのままの思いだ、と言われれば「そうか」ととるしかないが。

  • <僕たち人間は、自分が必ず死ぬことを知ってしまった唯一の生きものだ。じゃあ、「死」ってなんだろう――。ペットの寿命。死後の世界について。宗教が果たす役割。戦争や大量殺戮が起きる理由。殺人事件はなぜニュース・バリューを持つのか。細胞不死のメカニズム。僕の人生で残された時間の量……etc.etc。煩悶を繰り返すドキュメンタリー作家が、死に関する様々な事象に想いをめぐらせ、考察し続けた二年半の記録。森達也版<メメント・モリ>。 >氏は自分を悪く見せようとすることがある。なのでこちらも好くか嫌うか決められない。

  • 「平和を願うため、戦争を思わねばならない。この世界の豊さや優しさを実感するためには、貧しさや憎悪から目を逸らしてはならない」
    そのために、それを知らせるために書かれたもの。

    「テレビの箱の中で圧縮された記号化された『人の生き死に』を見開きしながら家族で夕食を楽しむ風景は、非常に変だ」

    「姑息な自分を体験してほしい」

    「警戒するのは外なる悪でなく、内なる善である」

    どれもとても心に残った。

    作者は、欺瞞を欺瞞として捉えないことの、感じないことの危険さを、
    過去の体験、メディアへの批判、それを受け止める側の批判を通して行っている。

    だから、「煩悶し続ける」伊坂幸太郎を信用しているんだと思う。
    嘘を嘘だと感じなくなることへの恐怖を持ち続ける、その感覚を大事にする。

    哲学書とまではいかないが、疑問を持たなかった点について、ドキッとされられる点は多い。半年に一度は読みなおして、自分の視点の狭さを認識したい。

  • 自分「僕」を主語にして、意見を書いているところに魅力を感じる。傲慢でなく、ナルシストでもない。「空気は読めない」と自身で書いているけれども、その自覚があるから、いわゆる「空気が読めない人」ではない。サラリーマン的社会性はかなり低いようなので、独身だろうと少し前まで思い込んでいたけれど、子どもが3人いて、ペットの動物たちも何匹も飼っていることが書かれていた。自分の生き方や考え方を淡々と貫くということと、家族を持つということと矛盾するのかと思っていた。生き物や人間が好きな人なのだろうと、この本を読んで思う。また森達也が好きになった。自分がどう見えるかということは、わかっているのに、興味がなさそうなところが、かっこよく感じる。
    テレビのコメンテーターたちにたいして「おまえら最低だ」と書ききった。こんなことを書いても大丈夫なんだろうかと思うことがある。でも少し考えれてみればだれに対して気をつかってるかわからないこと、そんなことについて、よく考えた森達也が自分の言葉で自分の感じたことを書いている。迷いやわからなさもさらしながら。
    表紙のバナナの写真はなんなのだろう。白に黄色の表紙が、テーマの「死」のわりにかわいい。友達は「バナナが好きなんじゃない」と言った。そうなのかもしれない。

  • 悩むことは精神的に疲れる。世の中の偉い人は悩みなんてないように見える。人文学的に考えれば、悩むことはとっても大切だ。でも社会、特にビジネスの世界では、悩むことはネガティブな意味になっている。僕たちはすべからくお金を持ちたいから、悩むことを放置しがちだ、精神的にも疲れるし。煽動される人の集団を大衆と呼ぶ。信仰を持てる人と同様に、悩むことを放置できる人は、ある意味では幸福だと言える。でも、どうしてもそれを放置できない人も確実に存在している。そんな人は、他者にコントロールされる代わりに、より深く複雑に悩みの中に潜り込んでいく。そんな人が世界を作っているんだろうと思う。
     著者の意見は明快だ。彼はたくさんの人が死ぬことになる、戦争が嫌いなのだ。だから戦争にまで発展するかもしれないメディアコントロールに敏感なのだ。
     僕らは道徳とか世論とかを持ち出してきて自分の感情を正当化したがる。それは責任逃れでもあり、集団に属して安らぎたいという無意識の現れでもある。でもそれは歴史を逆行していることなのだ。

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや)
1956年、広島県呉市生まれ。映画監督、作家。テレビ番組制作会社を経て独立。98年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i-新聞記者ドキュメント-』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『東京スタンピード』(毎日新聞社)、『マジョガリガリ』(エフエム東京)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)など多数。

「2023年 『あの公園のベンチには、なぜ仕切りがあるのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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