よろこびの歌

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著者 : 宮下奈都
  • 実業之日本社 (2009年10月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408535609

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よろこびの歌の感想・レビュー・書評

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  • いやはや、なんと胸を打つ物語か。
    自分も20年以上音楽をやってきたので
    どうしようもなく心揺さぶられてしまった( >_<)


    いびつで 
    いつも卵の殻の中から覗き見てるような
    クリアでない心を抱えた登場人物ばかりだけれど、
    そこには思春期という刹那な
    その瞬間にしか感じえない
    宝石のような世界が確かに息づいている。

    彼女たちを蝕み心にブレーキをかけていた
    それぞれの苦悩や葛藤や嫉妬や羨望や過去の挫折が、
    最後には全て反転して
    オーケストラのように読者の胸に響きわたる構成も見事としか言いようのない上手さ。
    さすがやなぁ~、宮下さん。


    物語は夢に敗れたり挫折を経験して
    目的もなく新設校に入った女子高生たちが
    合唱コンクールをきっかけに
    歌うことの楽しさに目覚めていく連作短編集で
    7つの短編のタイトルは全て
    実在のロックバンド、ザ・ハイロウズの曲名となってます。


    ヴァイオリニストの母の影響で
    声楽の世界で生きる夢を持つものの音大の付属校に落ち、
    私立明泉女子高等学校という新設校に失意のまま入学した
    高校二年の主人公、御木元 玲(みきもと・れい)。

    ピアノを弾くことが何より好きだが
    それを認めてくれない親や
    家がうどん屋であることに引け目に感じている
    原 千夏(はら・ちなつ)。

    中学時代ソフトボール部の四番でエースだったが、肩を壊し
    自暴自棄で名泉女子高に入った
    中溝早希(なかみぞ・さき)。

    霊が見える能力に思い悩む牧野史香(まきの・ふみか)。

    恋に悩み、歌に懸ける自分たちの今をキャンバスに焼き付け
    なんとか絵で残したいと願う里中佳子。

    いつも出来のいい姉と自分を比べ
    コンプレックスを持って生きてきた
    クラス委員の佐々木ひかり。


    彼女たちが抱える苦悩や葛藤や心の機微を丁寧に丁寧に紡いだ宮下さんのあたたかな筆致に
    知らず知らずに彼女たちを応援し、
    誰もがみんな17歳だったあの頃に引き戻される構成の巧さにも唸る。


    そして本書は
    音楽が人に何を与え、
    何をもたらすのかを
    言葉の力をもってして
    これでもかと味合わせてくれる。


    音楽は不思議だ。

    何かを切り詰めなきゃならなくなった時には
    真っ先に切られてしまう儚い運命のもの。

    空気を震わせ
    いつしか消えていく『音』というものがもたらせてくれる、
    何かしらの余韻。

    それは現実を凌駕する情景を見せてくれたり、
    音楽にしか踏み込むことのできない心の領域に染み込んできて、
    そこから一歩踏み出す勇気をくれたり、
    聴く者の人生観をも左右したりする。


    東日本大震災直後すぐに
    被災地に行って自分が実際に感じたのは
    歌の持つ特別な力だった。

    ボランティアの合間、夜ギターを弾いて懐メロを歌うと、
    おじいちゃんもおばあちゃんも小さな子供たちも
    みんながくしゃくしゃな笑顔を見せてくれた。

    本当にいい音楽や自分だけの心の歌は
    人々のまぶたの裏に光を見せてくれる。

    音楽はおそらく世界を救ったりはしないけれど、
    ドン底からアナタを救う
    唯一の命綱であってくれる。


    出逢うべき時に、

    出逢うべき歌に、

    出逢える幸せを知る。


    心に歌を。


    できうるなら
    『よろこびの歌』が
    彼女たちを支える揺らぎない核となって
    未来を照らしていって欲しい。

  • 「終わらない歌」を読み終えた時「よろこびの歌」の存在を知った。
    読みたいという気持ちが素直にわきあがり手にした。

    宮下奈都さんの小説は、心のもどかしさ、素直さ、知りたくない内面を言葉にしてくれる。そして、光を感じさせる。

    「よろこびの歌」は著名なヴァイオリストの娘、御木元 怜が逃げ込んだ先の新設高校で、怜だけでなく、怜の周りの女子高生もが、自分と向き合い、自分の未来と向き合っていく小さな物語7音。

    好きな音色たち。

    「よろこびの歌」怜が歌を感じるフレーズがいい。
    「カレーうどん」千夏の”うれしい”が気持ちいい。
    「サンダーロード」史香の強さが温かい。
    「夏なんだな」ひかりがひかりを見つけようとするのがいい。
    「千年メダル」怜が「よろこびの歌」を奏でようとしていく未来がいい。

    読み終え「終わらない歌」がもっと良い物語になった。

    読み終えた時、
    言葉でもいい、表情でもいい、触れ合ってもいい。
    なんでもいい。
    大切にしているということを相手に伝えていきたい余韻が響きました。

  • 3月に入り、受験生の皆さんも長い努力からほっと息ついている時期かもしれません。志望校に入れた方も、そうでなかった方も、新しい生活に自分の道を見つけられると良いですね。

    本書に登場する玲も声楽家を目指し音大の付属高校を受験しましたが失敗。普通科高校で自分の行くべき道を見つけられず、著名な音楽家の母とも上手くいかず、クラスの中でも自ら孤立していました。

    7音階のお話しの中に登場する学生たちも皆、思春期の中それぞれの心の悩みを抱えて過ごしています。純粋に歌う事のよろこび、合唱を通じて響き合う歌声の魅力、やがて皆、自分の殻から外に出て繋がっていきます。そして玲は本来の目指すべき道へ。

    合唱コンクール「手紙 十五の君へ」をアンジェラアキと合唱部の子供たちが泣きながら歌っていたシーンを思い出します。皆の歌がつながった時、いろいろなこころの中の感情が吐露されるのでしょうか。素晴らしい経験だと思います。

    仕事を早めに切り上げて図書館に寄ると、受験生の皆さんが机で一生けん命頑張っている姿をいつも見かけす。閉館時間ぎりぎりまで、赤本と格闘する姿、ちゃんと見てましたよ。

  • 著名なバイオリニストを母に持ち、自身も音楽の道に当然進むものだと思っていた玲。しかし受験に失敗し、新設の私立女子校の普通科に進むはめになり・・・「自分がいるべき場所はここじゃない」と感じ、何事にも無関心・無気力にただ日々をやり過ごしていた彼女が、合唱の指揮者に抜擢されてしまったことをきっかけに捨てきれない情熱で空回り、他の皆も徐々に巻き込まれていく。

    それぞれ「あの子はいいよな」なんてコンプレックスを感じながら距離感を推し量っていて、最初からうち解けてる訳じゃないんだけども、つながっていく。

    合唱コンクール、懐かしいなぁ。皆で歌うことの気持ち良さ(玲みたいに上手くなくても)って本当によろこばしいものだと思う。

    ブルーハーツばっかりじゃなくて、ハイロウズも聴いてみようかな。このタイトルから広沢タダシの「喜びの歌」が脳内再生されすぎて困ります。

  • ブルーハーツは大好きだ。
    ブルーハーツが解散し、そのなかの二人が中心になって創ったグループ、ハイロウズも大好きだ。
    ボーカルの甲本ヒロト独特の渋みがかった声は耳について離れなくなる。
    作者のエッセイによると、彼女もハイロウズの大ファンらしい。

    この「よろこびの歌」は七つの章すべてが、ザ・ハイロウズの歌のタイトルからとられている。
    一人称で登場人物それぞれの目線から書かれた作品だが、見事にタイトルにマッチした内容になっている。

    主人公は音大付属高校受験に失敗し、高校生活の目的を失いつつある御木元怜。
    そして、彼女の周りの何人かの女子生徒たち。
    合唱コンクールの失敗を皮切りに、彼女たちの考えに変化が訪れる。
    卒業式で三年生を送るクラスの出し物に再び合唱をしようということがきっかけで、自分の人生や生き方、学校や他人との関わりについて深く考えるようになる。
    人をよろこばせよう、いや自分自身をよろこばせよう。そのために歌おう。
    高校二年の女子たちが一歩一歩階段を駆け上がり、大人になっていく。
    何とも爽やかな物語だ。

    それにしてもこの年頃の女子高生のなんと難しいことよ。
    僕の時代の彼女たちもこんなにいろいろなこと考えて苦しんでいたのかなあ・・・・・・。

  • これはいいなー、宮下さんでようやくしっくりくる作品に巡り会えた気がします。

    ただ、ザ・ハイロウズの歌を知らないってのが…自分が残念。
    知ってたら☆5つけたかなぁ。

    音楽をテーマにした作品だと、すごい才能を持った子が出てくるわけだけど
    御木元玲は、すでに挫折をして音楽科のない高校に入学して
    ぼんやりと無為な日々を過ごしている。
    でも、彼女がどんだけ歌が好きかということが
    その後のクラスメイトの語りで明らかになってきて
    最終章の前向きなキラキラにつながっていく。

    普通の女子高生が、それぞれ抱えているぐるぐるやどろどろやがつがつを
    きれいにラップして、人前ではさらさらだけを見せている、
    というところが、すごい本質をついていてどきっとした。
    そこからリスクを冒して先へ踏み込めるか、
    友達関係にも将来にも大きく影響しそう。
    最近、もはや延長上にいるとは言えないくらいの過去になったせいか
    青春の心の揺らぎや切実さみたいなものにとても素直に共感してしまう。
    この年になったからこそ、客観的にみられるからこそ理解るということなのかな。

  • 僕が通っていた高校も合唱コンクールがあった。コンクール前の1週間は準備期間として5、6限の授業がなくなるからラッキーなんて思ってた人が多かったと思う。まじめに練習するのは大抵女子で、男子は不毛な会話をしてたり、歌ってたとしても耳をすまさなければ聞こえないぐらいの声量で歌ってた。音楽の時間でもそんな調子だったから、先生に怒られるのはいつも男子で、「ちゃんと歌ってよ!」いきなり泣き出す女子に「うぜー」と思い、険悪な空気が充満していたあの時が懐かしい。まあでも不思議なもので、本番2日前ともなると「そろそろ本気出す!」ってことで男子の調子が急に良くなった。先生にも「やればできるじゃない」とおだてられてますます調子に乗る男子。賞をとることはできなかったけど、あの時間ってすごく青春だったなあと振り返る。

    本書『よろこびの歌』は私立の女子高を舞台にした物語だ。この高校に通う生徒はそれぞれの事情を抱えて入学してきた。世界的に有名なヴァイオリニストの娘であるが、音大付属高校の受験に失敗した怜。実家がうどん屋であることにコンプレックスを抱いている千夏。中学時代、ソフトボール部のエースで4番だった早希(本書ではあと3人の視点から描かれているが、読者の楽しみを奪わないようにここで止めておく)。

    彼女たちが通う高校は行事が多い。合唱コンクールもその一つだが、30人いる2-Bの生徒のうち数人を除いては練習に出てこず、やる気を見せなかった。指揮者に任命された怜の厳しい指導に白ける者もいる。そんなまとまらない状態で合唱コンクールに臨むも、結果は散々なものだった。歌も一本調子、伴奏者の千夏のピアノのミスもいつも以上に目立った。

    次に行われたのは初冬のマラソン大会。7キロ弱のコースを走るというものだが、運動神経が無い怜にとっては地獄のようであった。ビリを独走していた彼女だったが、その耳に歌が聞こえてくる。クラスメートがトラックに集まって歌って、怜を応援しているではないか。合唱コンクールで歌った『麗しのマドンナ』を。自分のことを言わない代わりに、相手のことを知ろうとしない。そうゆう表面だけの薄っぺらい関係を続けていくのは楽だろう。きれいな部分だけ見せて、ぐるぐるとかがつがつとか、そうゆういろんな感情を出さず、「友達」でいつづける。そこには諍いや対立は生まれない。だけど・・・。このマラソン大会での出来事をきっかけにして怜が変わり、クラスのみんなも変わっていく。

    「青春」って青い春って書くけど、この「青い」にはいろんな色が混じっているんだろうな。華やかなピンク色だったり、どろどろした黒色だったり、晴れわたった空の色だったり。そうゆう色で僕たちの青い春、青春って描かれていく気がするんだ。幸せなことに僕たち日本人は四季を感じれますよね。作品中の宮下さんの表現を少し拝借すると、人の心にも四季があると思います。夏があって、そして秋が来て。人によってはずっと冬のままの人もいるでしょう。人それぞれ好きな季節あると思いますが、春という季節はわくわくしませんか。心躍るようなわくわくする気持ち。『よろこびの歌』を読んで春を感じました。次の春はまだ先だけれども。でもおかげで、高校の頃の青春を思い出すこともできました。登場人物が成長していく姿を描いている小説は個人的に好きです。読んだ後、自分も少し成長していると感じれるから。

  • 新設されてまもない「明泉高校」に通う女子高生のお話。
    彼女たちは 何かしら悩みを抱え逃げ道を探して この明泉高校に通っているところがある。
    それぞれ人と深く関わらないように過ごしてきた彼女たちが、合唱コンクールを機に 歌うことの「よろこび」、人とつながっていく「よろこび」を感じて 前向きに進んでいくところに感動した。

    題名の「よろこびの歌」のように よろこびを感じられる本でした。

    ハイロウズの歌を知っていれば また違った感動もあじわえたのかな~

  • 私立の新設高校に様々な事情を抱えて入学してきた少女達が
    校内合唱コンクールをきっかけに、
    それぞれの間に揺蕩っていた薄いベールを
    ある者はそっとかき分けるように、ある者は半ば強引に突き破るように
    相手を覗き込み、自らを振り返り、手を差し伸べ合って
    「私たちだけの歌」が歌えるまでの存在になっていく日々を
    ザ・ハイロウズの7つの歌のタイトルに沿って書き上げた1冊。

    高名なヴァイオリニストの母と同様、
    自分も当たり前に進学できると信じ切っていた音楽高校に合格できず、
    「才能がない自分」を全否定して、誰とも交わろうとしない玲。

    おもちゃのピアノしか買ってもらえない環境だからこそ
    音楽に触れる喜びを誰よりも知っている千夏。

    ソフトボール部のエースというポジションから肩を壊して転がり落ち、
    「十六にして余生だ」と全てを諦めきっている早希。

    霊が見えるために誤解を受けたり、病院に連れていかれたりした挙句
    霊がなるべくいないであろう新設校を選んで、ひっそりと生活する史香。

    ボーイフレンドに地下の核シェルターに誘われて
    家にそんなものがあることを隠そうともしない無神経さに苛立つ佳子。

    天真爛漫で美しい姉こそ「春の光を浴びるべき人」と定義して
    春の恩恵を受けられない凡庸な自分は、地道に勉強するしかないと
    堅実なしっかり者を目指すひかり。

    最終章、みんなから遠巻きに「御木元さん」と呼ばれていた玲が
    みんなと頭を寄せ合って「今の2Bにしか歌えない歌」を模索し
    歌で「誰かのどこかに揺さぶられるものがある」ことに希望を感じながら
    指揮台へと向かっていく、そのよろこびに満ちた足どりに魂が震えます。

  • 高校生の悩みって可愛いな。
    みんな必死に悩んでるんだから、こんなこと言ったら怒られそうです。
    この頃って、私もそうだったけど、今その時が全てだった気がします。一瞬を必死過ぎるほど一生懸命生きてるから、周りから見たら青臭くて危なっかしいのかも。
    でも、それもきっと何年も経てば、忘れちゃったり笑い話になってたりするんでしょうね。
    それでも、自分も経験してきた事だから、彼女たち1人1人の心の動きがとても胸に響いてきました。

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よろこびの歌の作品紹介

御木元玲は著名なヴァイオリニストを母に持ち、声楽を志していたが、受かると思い込んでいた音大附属高校の受験に失敗、新設女子高の普通科に進む。挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。しかし、校内合唱コンクールを機に、頑なだった玲の心に変化が生まれる…。あきらめ、孤独、嫉妬…見えない未来に惑う少女たちの願いが重なりあったとき、希望の調べが高らかに奏でられる-いま最も注目すべき作家が鮮烈に描く、青春小説の記念碑。

よろこびの歌のKindle版

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