東京ネバーランド

著者 :
  • 実業之日本社
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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536064

作品紹介・あらすじ

波多野一人、通称ヒトリ。ふしぎな男。どうしようもなく恋しい男。五人の女性たちが出会ったひとときの夢物語。

感想・レビュー・書評

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  • つかみどころのない不思議な男、波多野一人。あるときはデリバリーホスト、あるときは十代相手の便利屋…定職を持たず、ヒモのように様々な女性の間をふらふら渡り歩きながら東京を漂う彼。OL、主婦、中学生…空虚さを抱える様々な世代の5人の女性によって語られる「一人」像は、正直新鮮味は感じないのだけど、何故だか妙に惹かれるのだ。きっとこのテの人たらしイケメンに昔から弱いからだとは思うのだが。
    とはいえ、小ネタいっぱいのマシンガントークが持ち味の吉川作品に慣れていた私にとっては、この展開がちょっと普通、というかベタすぎる?とも思った。のだが、読み進めるほどに謎めいていた一人のキャラが少しずつ明らかになっていき…ラスト2章、特に最後の一人による語りの章は、吉川さんらしさが詰まっている。ここは賛否両論かもしれないけど、私は好きだな。彼の本音の一部を知ったことで、腑に落ちた部分もあり。ありがちなモテ男キャラにひねりを加えていて、適度に汚れた感じがかえってすんなり受け入れられる。
    もうひとつ魅力的なのが、たうみまゆさんによる本文イラスト。え、マンガのイラスト?イメージ限定されそうな?とも思ったのだが、むしろそれがよかった。たうみさんの描く一人はイケメンでありながら、独特の倦怠感を滲ませていて絶妙。
    一人=ピーターパンと安直に絡めたくはないが…ピーターパンにしては小汚いし小狡いし、あれこれ器用にこなしちゃうところが小憎らしいのだけど、嫌いになれないのがまた悔しいのよね~。地に足付いてないところが彼の魅力なのだ。
    彼と出会って、何だかんだ振り回されつつも、結局は皆自分を取り戻し、一歩前に踏み出せるようになってる。できることならもっと一人の物語を読みたいかな。きっと、一人に会いたい!と願う人続出に違いない。妄想上等!もひとつできることなら、たうみさんによるマンガ化も希望。

  • ヒトリを唯一カズトという本名で呼ぶ母親。
    母親をどうしようもないと思いながら、嫌えない世界でただ一人の女と言うその思いは、母性の欠乏とも愛されたい欲望とも少し異なる不穏さを感じる。
    ヒトリと呼ばすのは、孤独を逆手に取っているような気配もある。
    大人になれないような、大人になりたくないような雰囲気。それがヒトリの魅力に思う。

  • 読み終わった瞬間 「しまった。うかうかとヒトリに恋しちゃたじゃないか」と思ったw。
    1章読むたびに、なんてひどい男だ。サイテーサイアク!と文句をつけていたのがいつの間にかヒトリという男が気になって気になって仕方なくなる。そして最終章でストンっ!と落ちます。そう、恋に。まっさかさまに。
    まさにトリコにトリコ、状態です、はい。
    「ヒトリ恋メン(ヒトリに恋するメンバ)」絶賛募集なう!

  • 不思議な魅力を持つヒトリと、彼に魅了されたり翻弄されたり救われたりする女性たちのオムニバス。

    私にはこのヒトリが魅力的というよりもどうにもこうにもただの胡散臭いイケメンにしか思えなくて、なんだか腑に落ちなかった。
    どこででもうまくやっていく、誰の心にも入り込める、でも本人の胸の内は誰にもわからないなんて、魅力的か?
    最終章で、ヒトリの一人称になるが、これがまた「あー、こういう男なんだな」と。
    関わってきた女の子たちのことをどこか憐んでいて、嫌いじゃないし嫌いになれないけど強い思い入れを持つわけでもない。
    みんな自分のことを利用しているって分かっていて、でもそれでいいみたいな投げやりなところがある。
    ただ、ひとつ妙にしっくりきたのが、ヒトリ自身がいつか路上生活をする日が来る自分の姿を想像して、自分らしいと評するところ。
    たしかに、そういうイメージある。

  • かずとという青年にまつわる短編。
    毎度のライトノベル感もあるけど読みやすく、共感もでき、えぐる感じもある。

  • ふしぎな男、 どうしようもなく恋しい男…5人の女性が彼と過ごしたひとときを描いた連作短編集です。

    『ヒトリVS女』。彼女等が語り手の5篇と、ヒトリ自らが語る1篇が収録されています。
    1人の男をめぐる女達の物語、たまに見かけるスタイルですね。こういうの結構好きです。
    ネバーランドという言葉がぴったり過ぎて感心します。いつまでもフワフワしてられない。見切りを付けたら、気付いたら、女は早いんですよ。

  • 何処にもない国に、住み続ける「ヒトリ」にも実は家族がささえっだったのね?って、オチで。

  • 美しく整ってはいるが、何を考えているのかわからない男。女たちを魅了しながら特定の誰にも執着できない男。

    実写化するならジャニーズの伊野尾くんでお願いします。

  • 評価は全体。
    デリバリーサンタクロース…窓の外に降る雪と部屋の中の儚い恋がシンクロしているみたいで印象的。
    漂泊シャネル…雨の中に消えていく恋。森高千里の雨(古い!)を思い出す自分に幻滅。
    東京タイガーリリー…登場するのは自由な人たちばかりだけど、サラサラした海辺の砂に似た心地よい感触が残った。
    ウェンディ、ウェンズデイ…ちょっとした火遊びを通していつまでも褪せる事のない永遠の日の想い出が蘇る。
    ティンカーベルは100万回死ぬ…兄を愛する妹の叶わぬ願い。この願いを抱えながらいつも一緒にいるのも辛そう。
    屋根裏のピーターパン…これほど女に恵まれているのに、そこにあるのは底の見えない孤独感。生涯一人の異性とも出会えない人からすれば憎たらしい話だけど。

  • トリコさんの作品はちょっぴりエロスなイメージだけどこれはあまりその辺が気にならない。野良猫のようなヒトリが魅力的。好きになるつもりがなくたって気がつけばはまってしまいそうなキケンなカオリのするオトコ。これを読めばあなたもヒトリ中毒。2013/424

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著者プロフィール

1977年生まれ。2004年「ねむりひめ」で<女による女のためのR-18文学賞>第三回大賞および読者賞を受賞、同作収録の『しゃぼん』でデビュー。著書に『グッモーエビアン!』『戦場のガールズライフ』『ミドリのミ』『ずっと名古屋』『マリー・アントワネットの日記 Rose』『女優の娘』『夢で逢えたら』『あわのまにまに』など多数。2022年『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞。エッセイ『おんなのじかん』所収「流産あるあるすごく言いたい」で第1回PEPジャーナリズム大賞2021オピニオン部門受賞。

「2023年 『コンビニエンス・ラブ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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