夜明けのカノープス

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536286

作品紹介・あらすじ

叶わぬ恋、さえない仕事、ねじれた家族と-めんどうな自分。その星を見たら、きっと私は変わることができる。その一歩を踏み出せない「こじらせ女子」の逡巡。『月のうた』『これからの誕生日』の新鋭による、ひりひり沁みる感動長編。

感想・レビュー・書評

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  • 教師を目指すも挫折し、教育関係の出版社の契約社員として、雑用に追われる映子。中学時代の部活の先輩で、現在はミュージシャンとして活躍する若田に片恋しているが、夢を叶えた彼を羨ましく思い、くすぶっている自分に情けなさを感じる日々。
    そんな映子は仕事の関係で、離婚し離れて暮らす父親と14年ぶりに再会を果たす。ぎこちない関係ながらも、その再会をきっかけに、ゆっくりと変化していく映子の歩み。
    宙ぶらりんで、夢を追う人を羨ましく思い、自分をやたら卑下する20代半ばのちっぽけな自意識が、少し懐かしく思えました。中学時代のままではない、現在の少し汚れた若田先輩の一面を垣間見てしまったとしても、思いを断ち切れずにいるジレンマも。でもねぇ、あまりに「隣の芝生は青く見える」状態だよね。契約社員とはいえ、副編集長に目をかけられて、編集の仕事にも携わり始めたのだし。お局的女性社員に多少やっかまれても、今の立ち位置を大事にしなよ。夢を追うことが全てではないよと言いたくなるのは、自分が40代だからかなぁ。
    一部展開が中途半端なところは否めなかったものの、父との心の距離がぎくしゃくしつつも縮まっていく過程は微笑ましかった。そして何より面白かったのは、「カノープス」についてのエピソードかな。自分、あまり星には詳しくなかったけど…だからこそ、プラネタリウムの番組制作の流れとか、シリウスに次いで二番目の明るさを持つ「カノープス」が歴史に於いてどういう位置づけだったのか、とても興味深く読みました。
    地味ではあるけど、ちょっと心があったかくなれるかな。冬の夜空を眺めたくなります。そして、プラネタリウムに行ってみたくなります。やっぱり星ってロマンだよね、いつの時代も。

  • 教員をめざしていた映子は、四度目の採用試験に落ちた後に、教育系出版社の契約社員として働いていた。
    とある仕事を通して再会することになったのは、忘れることのなかった14年前に別れたあの人だった。

    自分を諦め、感情を殺しながら暮らしている様子の映子。
    その心の内が丁寧に語られているため、映子には好感を持ちました。
    なので、少しずつ前を向こうとしている後半が読者として嬉しかったです。

    近所の神社の秘密を知った映子が駆けつけた安川先生の研究室で、どんな会話がなされたのでしょうか。
    その後のプラネタリウムでのシーンを思うと、大きな進展はなかったのかもしれませんが、気になります。

  • 例によって静かにジンワリと沁みる物語。
    前作につづき、装丁にも強く惹かれました。

    短めなせいか起伏や踏み込みが浅めな印象も残りましたが、裏返せば読みやすく、読む側の想像の余地が広がっているのでしょうね。

    ブクログ登録区切りの500冊目、素敵な本で通過です(^^)

  • 図書館に行ったら、「一冊は読んだことのない作者のものか、ジャケ買いしそうな装丁のものを」というのを永らく続けています。
    これはそんな一冊。星空のバックの装丁に惚れたのと、かつてのPC自作派のワタクシ「カノープス」の文字に釣られました。

    叶わぬ恋、さえない仕事、ねじれた家族と―めんどうな自分。その星を見たら、きっと私は変わることができる。その一歩を踏み出せない「こじらせ女子」の逡巡。
    幼い頃に両親の離婚で父と別れ、教師を目指すも挫折してしまい、今は教育関係の出版社の契約社員として日々に追われる映子。
    中学時代の憧れの先輩はプロのミュージシャンとして生計をたて、友人は教師の夢をあきらめず採用試験に応募し続けている。

    夢を叶えられなかった自分への敗北感からいつまでも抜け出せずに、それでいて自身の現状を肯定できずに自分を許せずにいる……色々な意味でギクリとさせられる設定ですが、別れた父親との再会をベースに、自身を肯定する過程を緩やかに描きます。

    全体的に映子の鬱々とした感情がベースになっているので、分量も少なくストーリーの起伏が小さいため、なかなか人には薦めにくい作品ですが、私も含めて色んな人の心にある感情を波立てる緩やかでありながら強い気持ちのこもった作品です。

    ラストシーンへの展開が少し性急すぎる感があって、父親との距離の詰め方がもう少し長めのエピソードで読みたいなと感じました。

  • 穂高明さん「夜明けのカノープス」読了。教師になることを諦め、出版社に勤めることになった藤井。与えられた仕事は雑用ばかり、周りは夢に向かって着実に進んでいる。「自分の存在価値って何だろう」と悩みながら、プラネタリウムの番組作成で「ある人物」と会うことになるのだが。。今回は吹奏楽、天体観測、家族の絆などが描かれてます。穂高さん特有の語りかけるような文章は健在。ページ数は少なく読みやすいが、盛り上がりに欠ける印象。「カノープス」に興味のある方は是非♪

  • 派遣社員でもいいと思って働いているのではなく、後ろめたい気持ちをもって過ごしている映子。
    あまり尊敬できない上司や同僚などに囲まれていてここにしがみつく理由はないかなら、と思ってしまった

  • こじらせっぷりがもどかしく、夢に対する熱、憧れの先輩に対する踏み込めなさ、仕事への本気度、父との関係、全部もっといけ〜と、思ってしまう私にはイマイチだった。最後は少し救われたけど。

  • 映子が若田先輩の周りにいるであろう女性を”真冬でもコートの下はノースリーブを着るような人達だ”と評しているのに笑ってしまった。東北出身の穂高さんならではの感覚かもしれない。

  • 教員試験に落ち続け、ギリギリ入った小さな出版社では契約社員として雑用を押し付けられる日々。周りにはひたすら夢に向かってひたむきな友人らがいて劣等感を抱く映子。カノープスは、めったに見ることができない、しかし、見えたならとても縁起が良いとされる2番目に明るい星。映子が自分にとっての「カノープス」を少しずつ見つけ出し、父との関係や仕事に対し不器用ながらも誠実に取り組む姿にとても好感が持てました。ジンワリとしみ込んでくるような爽やかなエンディングも最高に良かったです。

  • 装丁にひかれて。読んだのがずいぶん前なので内容を覚えていない…

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著者プロフィール

一九七五年、宮城県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。二〇〇七年『月のうた』で第二回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。同作は、傑出した筆力を書評家などから絶賛された。他の著書に『かなりや』(ポプラ社)、『これからの誕生日』『むすびや』(双葉社)、『夜明けのカノープス』(実業之日本社)がある。

「2019年 『青と白と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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