夜明けのカノープス

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536286

感想・レビュー・書評

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  • 図書館に行ったら、「一冊は読んだことのない作者のものか、ジャケ買いしそうな装丁のものを」というのを永らく続けています。
    これはそんな一冊。星空のバックの装丁に惚れたのと、かつてのPC自作派のワタクシ「カノープス」の文字に釣られました。

    叶わぬ恋、さえない仕事、ねじれた家族と―めんどうな自分。その星を見たら、きっと私は変わることができる。その一歩を踏み出せない「こじらせ女子」の逡巡。
    幼い頃に両親の離婚で父と別れ、教師を目指すも挫折してしまい、今は教育関係の出版社の契約社員として日々に追われる映子。
    中学時代の憧れの先輩はプロのミュージシャンとして生計をたて、友人は教師の夢をあきらめず採用試験に応募し続けている。

    夢を叶えられなかった自分への敗北感からいつまでも抜け出せずに、それでいて自身の現状を肯定できずに自分を許せずにいる……色々な意味でギクリとさせられる設定ですが、別れた父親との再会をベースに、自身を肯定する過程を緩やかに描きます。

    全体的に映子の鬱々とした感情がベースになっているので、分量も少なくストーリーの起伏が小さいため、なかなか人には薦めにくい作品ですが、私も含めて色んな人の心にある感情を波立てる緩やかでありながら強い気持ちのこもった作品です。

    ラストシーンへの展開が少し性急すぎる感があって、父親との距離の詰め方がもう少し長めのエピソードで読みたいなと感じました。

  • 穂高明さん「夜明けのカノープス」読了。教師になることを諦め、出版社に勤めることになった藤井。与えられた仕事は雑用ばかり、周りは夢に向かって着実に進んでいる。「自分の存在価値って何だろう」と悩みながら、プラネタリウムの番組作成で「ある人物」と会うことになるのだが。。今回は吹奏楽、天体観測、家族の絆などが描かれてます。穂高さん特有の語りかけるような文章は健在。ページ数は少なく読みやすいが、盛り上がりに欠ける印象。「カノープス」に興味のある方は是非♪

  • 映子が若田先輩の周りにいるであろう女性を”真冬でもコートの下はノースリーブを着るような人達だ”と評しているのに笑ってしまった。東北出身の穂高さんならではの感覚かもしれない。

  • 装丁にひかれて。読んだのがずいぶん前なので内容を覚えていない…

  • 叶わぬ恋、さえない仕事、ねじれた家族と―めんどうな自分。その星を見たら、きっと私は変わることができる。その一歩を踏み出せない「こじらせ女子」の逡巡。
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    ミュージシャンの先輩にあこがれるけど、教師の夢を諦めて派遣社員している自分に自信が持てず、心の重石になっていた離婚した父に久しぶりの再会するというお話。こじらせ女子、の感じがひしひしと伝わってくる。結果、父との距離を詰めていきながら、少しずつ自分を見つめなおしていくストーリーでした。

  • 蒼い時から引き摺る…父の不在に苦しんできた傷、憧れの先輩に抱く淡く不器用な恋、そして叶わなかった職種の夢、、そんな心の内をそーっと掬い上げる。"映子らしさ"と軌道修正と、カノープスの光が尾を引く優しい結末♪。

  • 宙ぶらりんな自分のポジションとか劣等感とか、共感できる部分があって、読んでてちくちく痛かった。
    父との再会や、星を絡めたストーリー展開が巧み。最後のシーンから、きっと一歩踏み出せたに違いない。

  • えっ、これで終わり?という最後でした。
    消化不良。

  • その星を見たら、きっと私は変わることができる。

    夢を諦めて契約社員として働く主人公。憧れの先輩への恋も叶いそうにない。何者にもなれていない自分。このままでいいのだろうか?
    そんな風に考えること、誰もがあるんじゃないだろうか。それでも、日常の中で起きる小さな発見や変化で自分の中の何かが変わる。そんなささやかな瞬間を描いた作品。
    冬の澄んだ冷たい空気が、すうっと肌にしみるような、そんな読後感。

  • 教師になる夢をあきらめて小さな教育系出版社で契約社員として働く映子。
    現状に満足していないのに、今いる場所から動き出す力もなく、日々を過ごしている。
    不安はあっても淡々とした毎日を送っていた映子は、仕事をきっかけに幼い頃に家を出て行ってしまった父親と再会を果たす。ぎこちない、親子とは呼べない関係を少しずつ築きながら、映子は過去を振り返り、現在を見つめなおす。
    さらりと軽い内容で、正直な感想としては少し物足りない。ラスト、この先のさまざまな人間関係は結局どうなっちゃうの、と曖昧なまま閉じてしまった物語を残念に思った。

著者プロフィール

一九七五年、宮城県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。二〇〇七年『月のうた』で第二回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。同作は、傑出した筆力を書評家などから絶賛された。他の著書に『かなりや』(ポプラ社)、『これからの誕生日』『むすびや』(双葉社)、『夜明けのカノープス』(実業之日本社)がある。

「2019年 『青と白と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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