夜明けのカノープス

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 148
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536286

感想・レビュー・書評

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  • 教師を目指すも挫折し、教育関係の出版社の契約社員として、雑用に追われる映子。中学時代の部活の先輩で、現在はミュージシャンとして活躍する若田に片恋しているが、夢を叶えた彼を羨ましく思い、くすぶっている自分に情けなさを感じる日々。
    そんな映子は仕事の関係で、離婚し離れて暮らす父親と14年ぶりに再会を果たす。ぎこちない関係ながらも、その再会をきっかけに、ゆっくりと変化していく映子の歩み。
    宙ぶらりんで、夢を追う人を羨ましく思い、自分をやたら卑下する20代半ばのちっぽけな自意識が、少し懐かしく思えました。中学時代のままではない、現在の少し汚れた若田先輩の一面を垣間見てしまったとしても、思いを断ち切れずにいるジレンマも。でもねぇ、あまりに「隣の芝生は青く見える」状態だよね。契約社員とはいえ、副編集長に目をかけられて、編集の仕事にも携わり始めたのだし。お局的女性社員に多少やっかまれても、今の立ち位置を大事にしなよ。夢を追うことが全てではないよと言いたくなるのは、自分が40代だからかなぁ。
    一部展開が中途半端なところは否めなかったものの、父との心の距離がぎくしゃくしつつも縮まっていく過程は微笑ましかった。そして何より面白かったのは、「カノープス」についてのエピソードかな。自分、あまり星には詳しくなかったけど…だからこそ、プラネタリウムの番組制作の流れとか、シリウスに次いで二番目の明るさを持つ「カノープス」が歴史に於いてどういう位置づけだったのか、とても興味深く読みました。
    地味ではあるけど、ちょっと心があったかくなれるかな。冬の夜空を眺めたくなります。そして、プラネタリウムに行ってみたくなります。やっぱり星ってロマンだよね、いつの時代も。

  • 例によって静かにジンワリと沁みる物語。
    前作につづき、装丁にも強く惹かれました。

    短めなせいか起伏や踏み込みが浅めな印象も残りましたが、裏返せば読みやすく、読む側の想像の余地が広がっているのでしょうね。

    ブクログ登録区切りの500冊目、素敵な本で通過です(^^)

  • 教員試験に落ち続け、ギリギリ入った小さな出版社では契約社員として雑用を押し付けられる日々。周りにはひたすら夢に向かってひたむきな友人らがいて劣等感を抱く映子。カノープスは、めったに見ることができない、しかし、見えたならとても縁起が良いとされる2番目に明るい星。映子が自分にとっての「カノープス」を少しずつ見つけ出し、父との関係や仕事に対し不器用ながらも誠実に取り組む姿にとても好感が持てました。ジンワリとしみ込んでくるような爽やかなエンディングも最高に良かったです。

  • 2014/08/03

  • 初読みの作家さん。大きな展開はないけれど、読みやすく、穏やかに読書の時間を楽しめた。

  • 教員を目指したけれどかなわず、教育関係の出版社で契約社員として働く主人公。親が離婚していることも、心の屈託になっている。

    出ていった父親と仕事の関係で再開した時の心の揺れ。

    憧れの先輩との学生時代のエピソードを大切に温めている半面、華やかな世界でときどき人を見下す態度をとることを冷静に見つめる目。

    職場で重用されることへのやっかみを受けたり、とりつくしまもなさそうな社員との仕事。

    身近な世界が抑えたトーンで語られながら、決して暗することなく、読み終えた先に希望の光が見える気がした。

  • 主人公をイラつかせる人ばかりでずっと落ち着かない。
    映子の抱く劣等感がそうさせるのかな。
    しかし最後はとても良かった。じわり。

著者プロフィール

一九七五年、宮城県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。二〇〇七年『月のうた』で第二回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。同作は、傑出した筆力を書評家などから絶賛された。他の著書に『かなりや』(ポプラ社)、『これからの誕生日』『むすびや』(双葉社)、『夜明けのカノープス』(実業之日本社)がある。

「2019年 『青と白と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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