桜の下で待っている

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著者 : 彩瀬まる
  • 実業之日本社 (2015年3月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536644

桜の下で待っているの感想・レビュー・書評

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  • テーマは「ふるさと」。宇都宮、郡山、仙台、花巻…東北新幹線の地を北へ、桜前線と共に描いた短編集。
    熱い想いが詰まった書店の応援ペーパーを読み、本書を読む前から感動していたというのもフライングすぎるだろうと思われるかもしれないが、彩瀬さんが東北を描いてくれたということだけでも十分にありがたく、嬉しかった。どの話も彼女らしく、心にじわりと沁みてくるけど、中でも印象的だったのは、仙台・郡山を描いた短編だ。
    「からたち香る」は、婚約者の実家である郡山を訪れる、関東在住の女性が主人公。短いページの中に、モニタリングポストのある日常、津波被害後のいわきの現状など、福島県がどんな土地で、かつ今はどうなのかを余すところなく描いている。被災地から離れて暮らす人の目線から描かれるこの短編を、東北の人間はどう受け止めたらいいかと正直おっかなびっくりだったが、戸惑いながらも福島を見つめる主人公の真摯なまなざしに、心が和らいだ。デビュー作が震災ルポだった彩瀬さんだが、きっとその後も福島を訪れているんだろう…そんなことが窺える、彩瀬さん自身の福島への想いが感じられる作品だった。
    「菜の花の家」:母の七回忌で仙台に帰省する男性が主人公だが、法事にまつわる親族との間の煩わしさということをつい最近自分も経験したもので、ものすごく共感できた。自分も仙台を10年ほど離れて関東に暮らしていたことがあるため、ローカルネタだが、「ams西武がロフトになり、仙台パルコができてお洒落になりすぎて落ち着かない気がした」のくだりは、まんま私の当時の心情にリンクした。訪れるたび景色が変わることへの寂しさ。細かいところまで丁寧に取材したんだろうということがよくわかる。過去と現在の交差。そこに家族のしがらみやわだかまりが絡み、話が進むにつれ本音が浮かび上がってくる。ドロドロしがちな愛憎を優しく爽やかに表現するところが彩瀬さんらしい。
    最終話である表題作は、新幹線の車内販売の女性の話。故郷を持たない彼女は、転勤族だったらしい彩瀬さんを投影したのだろうか。一歩引いた彼女の視点から語られる乗客の姿が印象的だった。トリにふさわしく本書をぎゅっと引き締める展開で、親の離婚を経験した彼女と弟が一歩前に踏み出そうとする過程が清々しく、万感胸に迫るエンディングであった。
    全編を通して桜の花の美しさが鮮やかで、情景描写のうまい人だなといつも思うけど、特に今回はそう感じた。いつもいいところで桜が登場するので、あの可憐な薄いピンク色の花が瞼に浮かび、色んな想いが重なって、涙が滲んでくるのだ。今回も彩瀬さんにやられましたよ。
    表紙の丸鼻の200系東北新幹線も懐かしかった。ストーリーには出てこないものの、今の新幹線との対比で、過去と現在の間で揺れる登場人物の心情を表現したのかなと勝手に思っている。
    面倒だけれど、愛おしい「ふるさと」。まったく、この帯文句には心から同意である。

  • 自分の家族。
    縁あって一緒に暮らし、血を分けた者。
    両親・祖父母をはじめとする連綿と続いている血族。

    それらをも超越する輪廻。

    生まれ、そして流れ住む場所。

    変わってしまうもの、そのまま根を生やすもの。

    震災という大きな変化を余儀なくされた
    東北新幹線の沿線の都市を舞台に、
    こんな壮大なことを感じながら読んだ短編集です。

    それぞれの題名に花の名前が入っているからか
    物語に入り込むと花の匂いに包まれます。
    時にやんわりと、時に凛とした存在感で。

    木や花も人と同じ、命が尽きる時は必ずやってくる。
    そこに存在がなくなることって
    はたして悲しいことだけなんだろうか。

    それぞれの家族の話を読んでいるはずだったのに、
    彩瀬さんの大きな深い表現の流れに乗せられてしまいました。

    仙台の瑞鳳殿、花巻の童話村。
    訪れてみたいですね。
    私にも何か感じられるかなぁ。

    それと…登場した東北の銘菓たちは私の大好物です。
    しばらく東北の物産展をチェックすると思います。

    この作品も、人の臓器や部位にちょい足しした
    表現におっ!と思いました。
    やっぱり彩瀬さんの表現、大好きですね。

  • もうね~全部良かったです♪
    全編通して、花々と桜の美しさが記憶に残る物語。
    今まで読んだ彩瀬さんの作品の中では、一番ふんわりと優しい印象でした。

    #モッコウバラのワンピース(宇都宮)
    30代で夫に先立たれ、4人の子供を女手一つで育て上げた祖母が
    親族の猛反対を押し切り再びの恋に生きた。
    「新しい、きれいなワンピースを着て誰かに見せたいなんて、もう長い間、考えたこともなかったんだ」
    あ~もう、いくつになっても恋するってほんとに素敵!

    そういえば文中にもありましたが、モッコウバラと炒り卵って似てますね。
    お弁当のおかずで炒り卵が一番好きだった自分がモッコウバラを庭に植えてることに納得です。

    #からたち香る(郡山)
    婚約者の実家に初めての挨拶をするために、
    震災後の福島を訪ねる律子。
    原発事故の後の難しい状況のみならず、
    自分とは全く違った環境で育った相手の実家を
    初めて訪ねる不安や緊張がすごく理解できました。

    #菜の花の家(仙台)
    母親の法事で帰郷した武文。
    伊達政宗の墓所瑞鳳殿で中学二年の時に初めて告白された朋子に偶然出会う。
    そこの二人の場面がとても好きです。
    朋子が武文に握手してもらって
    「初恋の人だから、一回でいいから手を握ってみたいなあって思ってた。ありがとう」って。
    それに対して武文が、
    「こちらこそお礼を言いたいくらいだ」と。
    「告白された記憶は、その後の人生の大きな自信になったんだ」と。
    こんな風に思ってもらえるなら、
    たとえ叶わなくても想いを伝えて良かったんだねって。

    #ハクモクレンが砕けるとき(花巻)
    知里がおばあちゃんと夜空を見上げて、
    ハクモクレンの散り際を見守る場面。
    花弁の一枚一枚が落ちる瞬間の音色が聞こえてくるような感じ…
    やっぱり彩瀬さんの繊細な風景の描写は素敵です。
    むうちゃん♡ふふ

    #桜の下で待っている
    東北新幹線の車内販売員のさくら。
    不仲な両親の間で育った姉弟が、
    結婚や家庭といったものに対して複雑な思いを抱きながらも、
    前に踏み出そうとする姿にぐっと来ました。

    転勤族で、故郷と言える場所のない私にとって、
    子供の頃の数年間を過ごした仙台は大切な心の故郷です。
    (本棚の名前もそこからつけたくらい)

    ”故郷”本当に人それぞれですね。

  • 故郷、家族とはなにかを問う5つの物語。
    家族と離れてまで恋を選んだお婆ちゃんのモッコウバラのワンピースに隠された真実とは…。わかる、女はいつまでもね♪ 初めて婚約者の家を訪れた時のお義母さんの何気ないひと言が耳に残る…わかる、でもこれからもっとあるよ!
    アンパンマンこどもミュージアムや瑞鳳殿、宮沢賢治童話村・宮沢賢治記念館など東北の町の事も詳しく書いてあり楽しめた。私が一番行きたいと思った所は花巻のマルカンデパートの大展望大食堂!高さ25センチのソフトクリームって本当⁉︎物語より食堂が心に残る私って…お恥ずかしい。ふわっとしたお話が多くて私にはちょっと物足りなかった。

  • やっぱり大好きだなー、彩瀬さんの描く世界、紡ぐ言葉たち。
    東北新幹線に乗って北上する5つの物語。栃木、福島、宮城、岩手、そしてその東北を行き来する新幹線車内で働く女性。
    初めのモッコウバラのワンピースがすごく好き。
    祖母が運命的な出会いをして若い男と再婚し、遺産相続の問題とかで家族間に亀裂を入れ、それでも若い男と一緒になることを選んだのに、不慮な事故で五年と持たなかった。そんな祖母が語り手の母に当たるひとに
    『新しい、きれいなワンピースを着て誰かに見せたいなんて、もう長い間、考えたこともなかったんだ』ってそう語ったシーン。めっちゃうるってきた。大人になったって、お婆さんになったって、死んでしまったって、その人たちは必ず少女だったんだよね。そしてわたしも。

  • 表題作が好きだなぁ。
    新幹線に乗って故郷に帰るとき、
    よりも、
    ふるさとから戻るときのそれぞれの表情が好き、
    というさくらさん。

    そういうシーンにはあまり出会わないし、
    私のふるさとはとても近い距離。

    だけど、なんだかわかるなぁ
    と想像できる気がした。


    列車の車内販売は廃止されていくところが多いけど、
    残してほしいな、と思った次第。

    モッコウバラのワンピースのおばあちゃんみたくなりたいな。

    歳とって恋する感覚が感じられるなんて
    なんて!!!幸せ!

  • 面倒だけれど愛おしい。「ふるさと」をめぐる5つの物語。
    桜前線が日本列島を北上する4月、新幹線で北へ向かう男女5人それぞれの行先で待つものは。
    実家との確執、地元への愛着、生をつなぐこと、喪うこと……
    複雑にからまり揺れる想いと、ふるさとでの出会いを
    あざやかな筆致で描く、「はじまり」の物語。
    (アマゾンより)
    ~~~~~~~~~~~
    東北新幹線・故郷にまつわる短編連作。
    彩瀬まる氏の本は2冊目。好みです。女性らしい文章と・・・
    R-18文学出身だからかな?いきなりセックス云々という言葉がでてきたり(苦笑。でも、もゥオバハンなので、そういうのスルーできるんで、気になりません。)

    彩瀬氏=1986年生まれということですが、イメージとしてはもっと、だいぶ年配の女性が描きそうなイメージです。読者層も、40代以降の女性がターゲット、かな。
    アマゾン紹介で「実家との確執」とありますが、確執さえも、彩瀬まる氏が描くとやさしく癒されます。




    著者の「暗い夜、星を数えて」が読みたいです。
    (図書館で予約待ち中)。

  • 彩瀬さんの本やっぱり好きやなあと思う。今回は新幹線で、それぞれのふるさとへ帰っていく5つの短編集。
    それぞれの家族があって、ストーリーがあって。最後はどこかほっとさせてくれる。終わりが明るいとやっぱりなんだか清々しくていいな。

    月一くらいで新幹線に乗ってるけど、時間帯によって乗ってるお客さんの顔つきが違うっていうのもよくわかる気がするな。

  • 新幹線で故郷へ向かう5人の男女。それぞれ違う想いを抱きつつ、それでも向かったその先での人々のいとしさに満ちた短編集です。

    ふるさとや田舎というものを美化するつもりはないけれど、日常から少し離れているその場所では、懐かしさといとしさ、そして自分が今大切な人に囲まれていることを改めて気づかせてくれる場所でもあるのではないかな、と思えたのでした。

    その場所の人たちとのささやかな交流を通して、小さな決意をしたり、あらためて恋人への想いを強くしたり。自分のいない、けれどつながりのある場所は、どこか心のよりどころとして、持っておきたいものだなあ、と思えました。

    そしてさらりと通り過ぎていた新幹線の売り子のお姉さんが最後の登場が心憎い構成。彼女こそ、ふるさとへ往来する人々の、ほんのひととき、一瞬だけのかけがえのない「ふるさと」のようなあたたかな存在…でもあるのでしょう。

  • 舞台は春、東北新幹線で故郷に帰る人たちと、乗組員の家族の連作短編。

    初読みの作家さんでした。
    ふんわり優しい話が、読みやすく、好みです。

    故郷に帰るのって、嬉しかったり、ちょっと面倒だったり、気持ちはいろいろ。
    でも、帰りには、行って良かったと思える、そんな話に共感しました。

    婚約者の親に会いに行く『からたち香る』、両親を亡くした兄弟の話『菜の花の家』が良かった。

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桜の下で待っているの作品紹介

面倒だけれど愛おしい「ふるさと」。新幹線で北へ向かう5人。その先に待つものは-凛とした光を放つ感動傑作。

桜の下で待っているのKindle版

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