からくり探偵・百栗柿三郎 (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408552064

作品紹介・あらすじ

大正時代の浅草。町のはずれにあるボロ家・百栗庵の主で発明家の柿三郎が、探偵稼業に踏み出した。冴えない風貌で発明は珍妙だが、科学的な調査や思考実験から導き出す推理は明晰!機械式招き猫の助手・お玉さんを連れ、女中の千代とともに"連続して発見されたバラバラ死体"や"幻術師の元から消えた弟子"などの謎に挑むが…。傑作"大正モダン"×本格ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • "大正モダン"ミステリ。この要素、好きですね。

    <よろず発明承り>という文言の脇に、取ってつけたように<よろず探偵、人捜しも承り>と書かれている看板を掲げる「百栗庵」の主・百栗柿三郎が、“助手”の猫型からくり機械(大正版、猫型ロボット?)・お玉さんと、押しかけ女中の千代と共に、数々の謎を解いていく連作4話が収録されています。
    “色褪せた着物、草臥れた袴、頭は鳥の巣のような蓬髪・・・”と、“モロ金〇一”な感じの風貌の柿三郎先生。
    自称発明家を自負するだけに、発明に関しては熱いのですが、探偵業にはそんなに乗り気でないご様子・・。(これに関しては、終盤で明かされる事情と繋がってくるのですが・・)
    とはいえ、抜群の推理力で、殺人や失踪の謎を見事に解明していく様を見るにつけ、“発明より探偵業で食っていけ”と思ってしまいます。
    そして、序章と幕間として、関東大震災直後の話が挟まれる構成になっているのですが、それも含めて第四話と終章での伏線回収が小気味よく、特に猫型ロボット・お玉さんの“正体”には驚きでした。
    さらに言うなら柿三郎の“お相手”も想定外でしたね。
    そして、柿三郎自身の背景もお兄さんが警察のお偉いさんらしい等、謎が多くて気になるところです。
    続編も出ているようなので、是非そちらも読んでみたいですね。

  • 百栗柿三郎が難事件を解決する物語が4篇だが,登場人物が順に関連を持ってきて最後の「惨劇に消えた少女」で解き明かされる構成は非常に楽しめる.時代は関東大震災後の大正時代だが,あまり古さを感じさせない.柿三郎と千代のコンビが軽妙な会話で事件を解析する過程が楽しめる.

  • 探偵業も営む発明家が持ち込まれた依頼を女中と共に解決して回る連作ミステリ。事件内容はオーソドックスながらホムンクルスはなぜ打ち棄てられたのか、死体がバラバラにされた理由は何かという各議題に納得できる解答を示せているのが好感触。発明家の肩書きも伊達でなく、年代設定から浮き上がったオーバーテクノロジーな発想が謎解きに機能しているのには感心させられます。終章にこそ目を奪われがちですが、多くの読者が想定するだろう展開を迎えつつ、それでもなお意外性を保った真相を用意した「惨劇に消えた少女」はまさしく作者の掌の上であり、本書の白眉でしょう。完全にナメてました、すみません。

  •  お話のテンポもいいし、謎解きもアッと言わせるものがあってよかったです。

     1冊に4つのお話が(合間に小話が挟まりますが)入っていて、1話あたりが短いせいで、柿三郎さんが推理に悩む場面にページを割かないから、あっという間に事件を解決しちゃって、ものすごい名探偵になってる気はするけど…(笑)

     4話の短編から成るものの、すべてが最終話の伏線のような感じになっていて、ラストは結構ビックリ。
     てか、この2人がこうなっちゃうんだ…ていう。

     千代さんのキャラはよいですな。
     千代さん押しで。

  • 大正ミステリー。実際にシャーロックホームズが活躍した頃の日本を舞台にしているところが面白い。
    是非シリーズ化して欲しいところだが、この作者はそんな読者の希望をぶった切ってしまう潔さがある。そこもこの作者の魅力の一つだ。

    しかし、主人公である百栗柿三郎の出自についても十分物語ができそうな気がする。大正時代そのものにロマンを感じる風潮があるので、大正ミステリーというのは一つのジャンルとして成立すると思うのだが...

  • 大正時代のシブシブ名探偵。
    最後のオチ、よめましたか?

  • 事件ひとつひとつは面白味があるのかもしれないけれど、全体のまとまりを感じないので、う~ん……。もう少し短くてテンポのよい話で全10話くらいあれば、こんなまとめもありかな…て気がするんですが。こういう雰囲気の作品、けっこう好きなので、いっそメディアミックスして1クールくらいのアニメにしてもらえたら……。
    あと、個人的に、千代さんと柿三郎さんが、お互いまったくその気がない関係であるところが好きです。

  • 読み終わったとき「うふふ」と笑ってしまう。ゲラゲラ笑いじゃなく、ニヤリとでもない。あくまでうふふ、と。そんな一冊。
    柿三郎、いいですねぇ。なんとも憎めないキャラで。まさかのお玉ちゃん!言われてみればなるほどな!と。事件自体は結構陰惨なものなのだけど柿三郎とお千代さんの軽妙なやりとりのおかげで軽やかな読み心地。その後の「三人」の物語も読みたい。ぜひとも続編を!!
    あ、でも次からはからくりは出てこない、か…

  • 読み終わった最初の感想は「う~ん微妙」。

    理由としてはトリックのリアリティの無さ。大雑把ともいえる。

    例えば、第一話に出てくるホムンクルスとそれを入れた容器。”本来は強い刺激臭のする特殊な溶液にひたされていた”と書かれているのでそれはおそらくホルマリン(ホルムアルデヒド)。

    こんなものが換気がしにくい地下で開封されたら、少なくとも残り香くらいはあると思う。ましてやそれを包んだもの(布)を持ち出す(人がいる部屋を通る)なら、気付かない人がいないと思うのだけど。これが念入りに準備されたものなら尚更。

    各話間の幕間(大正という時代設定から、おそらく東京大震災の出来事)は、この後どうなってしまったのかと先が気になり、その部分は良かった。

    全体を通して大正という時代設定のミステリーという面白い素材を生かし切れておらず、色々と惜しく感じる作品だった。

  • 連作短編風。大正時代の浅草で、発明家?が探偵をするお話。
    2021/8/27

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著者プロフィール

1972年大阪府生まれ。公務員退職後、『パチプロ・コード』で第八回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し2010年にデビュー。

「2017年 『散り行く花』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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