「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うか

  • 51人登録
  • 4.38評価
    • (4)
    • (3)
    • (1)
    • (0)
    • (0)
  • 7レビュー
著者 : 梶谷懐
  • 人文書院 (2011年10月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409230459

「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うかの感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 2011年に出版されて話題になった本書をようやく読了。もっと早く読んでおけば良かったと思わせる良書。現代中国に関する時論という体裁だが、その射程は広くて深い。日本の近現代史を考える上でも非常に参考になるというか、まさに近代中国史を考えずして日本近代史を語る勿れと感じた。とくに第6章、第9章は大事。

  • 本書は1970年生まれの中国経済の研究者が2011年に刊行した中国の社会制度・社会問題や日本からの認識など多数の話題を社会科学の視点でとりあげた中国論。

    ・人文書院 商品ページ
    http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b93709.html
    ・梶谷懐のホームページ(神戸大)
    http://www.econ.kobe-u.ac.jp/~kajitani/
    ・梶ピエールの備忘録。
    http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/

    【目次】
    第1章 自己実現的な制度と私たちの生活
     「壁と卵」の視点から現代中国をみる
     システムとしての「制度」
     現代中国社会と歴史的制度
     自己実現的な制度と中国産食品の安全性

    第2章 グローバルな正義と低賃金労働
     農民工の自殺問題と相次ぐストライキ
     「搾取工場」へのボイコットは正当化されるか
     「離脱・発言・忠誠」とボイコット運動
     労働CSRをめぐる問題
     新世代の農民工にみる労働者の意識変革

    第3章 赤い国のプレカリアート
     都市の労働力不足と「ルイスの転換点」
     労働者の待遇改善と農村問題
     マオの時代のプレカリアート=臨時工
     文革と臨時工問題

    第4章 中国とEUはどこが違うのか?――不動産バブルの政治経済学
     不動産価格の高騰と蟻族の不満
     社会主義体制下の土地公有制
     単一の金融政策と独自の財政政策
     「融資プラットフォーム」と地方政府の債務拡大
     崩壊しそうでしない「バブル」

    第5章 米中の衝突は避けられないのか?――中国の台頭と人民元問題
     「ワシントンコンセンサス」から「北京コンセンサス」へ?
     TPPをめぐる論争
     グローバル・インバランスと人民元問題
     米国の金融政策に追随する中国
     「だまし絵」のような米中関係

    第6章 歴史に学ぶ中国経済の論理
     乖離する国家と社会
     硬直的な財政と予算外資金
     中国の近代化と貨幣流通
     大恐慌から幣制改革へ
     国家をすり抜ける「民間」

    第7章 分裂する「民主」と「ビジネス」
     遅れてきた開発体制国家
     天安門事件と趙紫陽
     計画経済体制下のリベラリストたち
     ラビア・カーディルと「市場の倫理」の挫折
     「統治の倫理」を超えて

    第8章 これからの「人権」の話をしよう
     二○一○年ノーベル平和賞の衝撃
     自由権と社会権をめぐって
     「社会問題」の解決と暴力
     東アジアにおける専制と公共圏

    第9章 日本人の中国観を問いなおす――戦前・戦後・現在
     戦後の日中関係を振り返る
     右翼と左翼、そしてネオリベラリズム
     「支那統一化論争」と尾崎秀実
     現代日本人の中国観――三類型による理解

    第10章〈中国人〉の境界――民族問題を考える
     民族間衝突をめぐって
     〈中国人〉の境界
     社会主義と民族自決の理念
     戦後日本の左翼運動と民族主義
     「告発の政治」を超えて

    第11章 村上春樹から現代中国を考える
     「こちら側」の論理と「あちら側」の論理
     重層化するシステムと中国社会
     「例外状態」に生きる人々――檻の中のウイグル人
     村上春樹と竹内好――近代化する社会との葛藤
     村上作品における〈アジア〉へのまなざし

    あとがきに代えて――リスク社会化する中国とどう向き合うか

  • 公正な視点て見た中華人民共和国のあれこれ。

    話が多岐にわたるが、誠実な書き方ですらすら読める。経済がご専門のようだが守備範囲が広い。もっと深く考えたくなる。

  • 「壁と卵」といっても、本書は村上春樹を論じるものではない。もちろんわざわざタイトルに持ってくるだけあって、著者は村上春樹のファンであると著書内に記してあるが、本書が主題とするのは現代中国におけるいくつかの一般市民とシステムに関する話題 -一つ一つでも十分に大きなテーマとなりうるが、あえて「壁と卵」=「システム」と「個人」という観点から問題点を括っている‐ である。

    Twitterでフォローをしていることもあり、この本は早くから読みたいとは思っていたのだが、結局帰国するまで読むことはかなわず、2013年3月の帰国後にようやく手にとることが出来た。

    一つ一つのテーマが非常に大きな広がりをもつ話題であるだけに、全体として書評を書くというのはなかなかに難しいのが本書なのだが、一つ言えるとすれば、著者が慎重に自分の意見を一方に寄せないようにしているということに好感がもてるということだろうか。
    本書内にも、中国論はまさしく自国(この場合は日本)を映す鏡という言葉があるが、著者も自分が一方的な視点をもたないことを意識することでまさに自分のバランスを保つということを意識しているかのようである。

    中国国内の事情にある程度詳しくないと話がわからないことがあるかと思うが、単純な「対中戦略」のような切り分け型にはない深い知見を得るためのとっかかりとなる本だと思う。

  • 「壁と卵」という視点から現代中国の政治経済を分析した良書。システムと個人との関係というのは、中国だけではなく、世界中の人々が直面している問題であろう。本書は、その中国的なあり方について理解を深めさせてくれる。

  • ウェブ連載を毎回楽しみに読んでいた。中国古典を学ぶ者にとっても得るものは多い。

全7件中 1 - 7件を表示

梶谷懐の作品

「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うかに関連する談話室の質問

「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うかに関連するまとめ

「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うかを本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うかを本棚に「積読」で登録しているひと

「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うかの作品紹介

「中国」はひとつにまとまった、堅く大きなシステムではない。私たちは、それをどこまで分かっているだろうか。本書では、経済を中心に社会、歴史を横断し、多元的に変動する現代中国をリアルに、そして鮮やかに分析。気鋭の経済学者が、専門知のみならず幅広い知見と清新な視点を活かして論じる、左右のイデオロギー対立を超える、創見に満ちた現代中国(経済)論の誕生。

「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うかはこんな本です

ツイートする