老い 上 (新装版)

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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409230541

作品紹介・あらすじ

老いとか何か。老いは不意に我々を捉える。
何人もこの人生の失墜をまぬがれることはできない。老いという人生の最後の時期に我々はいかなる者となるのか?
この人間存在の真の意味を示す老いの生物学的、歴史的、哲学的、社会的、その他、あらゆる角度からの、徹底的考察!!
日野原重明氏大絶賛の書、待望の復刊。

感想・レビュー・書評

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  • ボーヴォワールの大著。100分de名著で紹介されていたのを見て挑戦してみる。
    老いを人生の凋落と捉えるか進歩と捉えるかとういう問題は、凋落、進歩の評価基準となる目標をどのように定義するかということであり、それはそれぞれの社会が創造する諸価値によって相対的に決まる。よって、目が見えなくなってきたとかの生物学的な観点だけでなく社会文化的観点から捉える必要があるという問題提起なのです。これは目から鱗なのではないでしょうか?しかも60年代に発表されているのです。

    身体的な不調の発生有無に関係なく、非生産的になった老人の境涯はその社会の財源しだいで老化は早くも遅くもなる。もっと言えば、自らの存在に付与する意味、社会の価値体系全体が老年の意味と価値を決定する。じゃぁ老後資金だけ潤沢に確保すればいいのかな?と思うとそうでもない。
    定年退職者の役割はもはや役割を持たないこと。健康を維持し金銭の余裕があっても意気阻喪を伴う屈辱感から逃れることはできない。ただ生きているだけの余生は死ぬより悪いという不条理な状況となってしまうと心理学者は分析します。
    また現役成人が自分たちの価値基準にしたがって退役者にどのような役割を与えるべきかを決定するのに、現代の技術主義的社会では知識は年月とともに集積されるのではなく、時代遅れになる。つまり高齢は失格を惹起する存在。
    さらに老齢の人々の処遇を決定するのは支配階級ですが、現役の大衆全体がこれに共謀している。私生活において子供や孫は自分たちの父母、祖父母の境涯を和らげようとは努めない。自分たちもやってきた自業自得とも言える境遇に陥る。だったら自分で生活資金も含めてなんとかすればいいんだなというのが老後資金問題の根っこだと思うのでが、それだけでは済まない。
    定年退職者の役割はもはや役割を持たないこと。健康を維持し金銭の余裕があっても意気阻喪を伴う屈辱感から逃れることはできない。ただ生きているだけの余生は死ぬより悪いという不条理な状況となってしまうと学者は分析する。
    老人は社会からすれば猶予期間中の死者にしか過ぎないとまでいうのです。なんてことだ!

    オーウェルの1984を読むまでもない八方塞がりのディストピア。この先どうなってしまうのか?まるでホラー小説を読むかのごとぐ、どきどきしながら下巻に続く!

  • 序、はじめに、第一部外部からの視点、第一章生物学からみた老い、と続きます。ちらちらと見ました。ちょっと歯が立ちません。100分de名著でよしとします。番組では原書のさわりを朗読。これがとてもよかった。訳文もいいのでしょう、その論理的な文章に圧倒されました。本で味わってみたかったのですが・・ 再度挑戦の日もあるかもしれません。

    1972年の単行本、字があまりにも小さい。生理学的老いの始まった者にはつらい! 新装版はきっと字が大きいのでしょう。

    図書館で借りた本は表紙の絵が、5,6カ所虫食いの穴のある木の葉の葉脈を模した絵。なんと装幀は真鍋博さんです。

    1970発表
    1972.6.30初版第1刷 1980.10.15初版第15刷 図書館

  • 生物学的老い、未開社会の老い、そして過去から現代の老いをそれぞれ考察。1970年に書かれた本だが、それからさらに高齢化が進んでいるから、現代の老いの考察として十分学ぶべきものがある。高齢者の層が厚くなり、当時に比べて社会的にはさまざまな問題が改善されてはきているけれど、折しも目下フランスでは年金受給年齢の引き上げ問題の渦中、日本でも高齢者施設での虐待などが問題になっていて、課題自体は時を経ても変わっていないように見える。
    仕事があり、働ける健康がある、または生きていくのに必要な経済的な貯えがあり、身体的にも他人の助けを借りずに生きていけるだけの健康があれば、老いには経験や知識の深みを感じられるポジティブな側面が十分にあるけれど、そもそもその前提条件をクリアするハードルが、この本が書かれた時と比較しても決して低くはなっていないように思う。
    フランスは、第二次大戦後少子化対策に重点が置かれ、高齢者対策が軽視されたと書かれていたが、今の日本はようやく少子化対策に着手したところ。多数の高齢者を少数の若い世代が支えるという図式は、どの程度の速度で改善されるのだろうか。

  • 記録

  • 上下コメントが逆になった。1972年の版である。性に関してもさらにその後の章においても、芸術家の例ばかりである。実証的に語られているのではない。かならずしも日本で有名な芸術家ばかりではない。

  • 老いとは生物的かつ社会的なもの。上巻では、老人のポジションを原始的な未開社会、歴史の変遷を経て現代=本書が書かれた50年前を語る。多様な哲学や文学などの参照で埋まり、ボーヴォワールの博覧強記ぶり(失礼)に感心する。フランスの文化の豊かさもすごいが、日本の楢山節考も参照される。
    老人も子供も能力がない者だが後者には未来があるから大事される、社会は孤児や障害者や老人に無関心だが、誰もが老いるという点でアプリオリに驚くべきこと、など興味深い指摘。また、ボーヴォワールだけに、女性にとっての老いと男性との違いという視点も強い。
    基本的な問題意識として、老人は苦境にあり社会の辺境に追いやられたマイノリティであるという。しかし2022年の日本では、高齢者がマジョリティで政治は老人の票を欲しがり、金がなく不安を抱えるのは若者だ。本書の老人との比較論でもう一冊書けそうなほど。とはいえ、老人を醜く衰え価値がないものとみなす価値観、老後の孤独、仕事などは現代に一層深刻さを増す。
    20代で読んでも面白くないかもしれないね(苦笑

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:367.7||B
    資料ID:95131096

  • 出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介

    ボーヴォワールの傑作。あらゆる文献や研究をたどり、老いと生を対比して捉えた本。

  • きっかけ:ビジネスに効く最強の読書/出口治明/20140823(67/241)

  • 事物の力はどこだろう?

  • 今こそ読むべき

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    「老いとはなにか。人生の究極的意味とは。哲学者として、女性として、忍び寄る「老い」について考える。待望の復刊。

    老いとか何か。老いは不意に我々を捉える。
    何人もこの人生の失墜をまぬがれることはできない。
    老いという人生の最後の時期に我々はいかなる者となるのか?
    この人間存在の真の意味を示す老いの
    生物学的、歴史的、哲学的、社会的、その他
    あらゆる角度からの、徹底的考察!!
    畢生の大作『第二の性』と双璧をなす問題の書」

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