深層心理学と新しい倫理: 悪を超える試み

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  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409330326

作品紹介・あらすじ

世界大戦とナチズム…「影」の抑圧とスケープゴート心理がもたらした人類史的悪を超える道を探る。20世紀の予言の書。

感想・レビュー・書評

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  • ユダヤ人系ドイツ人として生まれた著者ノイマンは、
    哲学と医学を修得したのちユングと出会い、以後、
    終生ユング派の深層心理学研究グループに属する。
    ナチの手の伸びる大戦前にイスラエルへ移って開業し、そこで没する。

    自らの出自もあり、彼は、戦争をはじめとする人類史的悪が、
    いかにして生まれるのかを研究した。
    そして、「古い倫理」と彼の言う、先進国の思想基盤に
    端を発した、人間の「影」(深層心理の抑圧)と、
    スケープゴート心理を見いだし、論じている。
    ユングとフロイトの思想に基づいて独自の理論を展開し、
    「古い倫理」がもたらす社会の歪みに警鐘を鳴らし、
    もはや社会には「新しい倫理」が求められていると主張する。

    彼はここで重要なキーワード、「深層心理=無意識」に光を当てる。
    区分や分離ではなく、対立し合う要素をひとつの構造に結びつける
    社会の流れへ移行すべきだと、力説するのだ。
    その「新しい倫理」がめざすものは、意識と無意識を統合させた
    全体的人格、「自己」であるとし、近現代の抑圧と抑制を強いられてきた生を、
    解放してゆくことを呼びかけている。

    思想の書はまだ多くを読んでいないが、世界の危機を
    倫理という観点から分析した、古典に当たる書だろう。
    しかし憂うべきは、この書が発行されてから60年を経た今も、
    依然「古い倫理」がまかり通っていることだ。
    年齢を問わず、現在の世界に疑問を投げかける人には是非推薦したい名著。

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著者プロフィール

1905年、ベルリン生まれ。1927年哲学の博士号取得。1933年医師資格試験合格。その後、ドイツを離れチューリッヒのユングのもとで研究に従事。1934年以後、テルアビブに居を定め、ユング派の分析家として活躍。ユング研究所、エラノス会議で毎年のように講義、講演を行う。1960年没。邦訳に『アモールとプシケー』『女性の深層』『意識の起源史』(以上、紀伊國屋書店)、『グレート・マザー』(ナツメ社)、『深層心理学と新しい倫理』(人文書院)などがある。ユング派随一の俊才で、深層心理学に人類史的な視野を導入した画期的な研究を始め、女性的心性の発達、創造や芸術の心理について多くの重要な仕事を残した。

「2021年 『芸術と創造的無意識』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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