カブラの冬: 第一次世界大戦期ドイツの飢饉と民衆 (レクチャー第一次世界大戦を考える)
- 人文書院 (2011年1月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (154ページ)
- / ISBN・EAN: 9784409511121
感想・レビュー・書評
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第一次大戦中にドイツでは6780万人の人口に対して70万人以上の餓死者が出たとされる。前線での戦死者の4割以上に及ぶ。直接の引き金はイギリスの海上封鎖およびロシアが交戦国になったことによる輸入途絶。戦前は食料のおよそ三分の一を輸入に頼っていたが、短期決戦で終わらせるつもりだったので有効な備えがなかった。徴発による畜力および人力不足(機械化も進んでいなかった)、これまた輸入途絶による肥料不足で国内生産も伸びなかった。また、穀物価格統制策のまずさで穀物やジャガイモなどが飼料用にまわってしまったかと思えば、その反動か「豚殺し」と呼ばれる豚の大量処分に走るドタバタも生じた。気候が寒かった1916-17年の冬は、カブラ(ルタバガ、日本のカブラとは別もの)くらいしか食べられなかったという意で「カブラの冬」と呼ぶ。日本で言えばサツマイモにあたるか。やっぱりドイツでも戦後になってルタバガの消費量が落ちたそう。もう顔も見たくないってやつ。
この飢餓はドイツ国民の記憶に刻み込まれ、ナチス台頭の素地になったというのが著者の見立て。ナチスは子供や女性を飢餓から救う「パンのための闘争」をアピールし、さらには「背後からの一突き伝説」として、責任の所在をイギリスの海上封鎖からユダヤ人の裏切りにすり替えた。責任を求めやすいところに求めてしまう人間心理、無理が通れば道理が引っ込む。
第二次大戦ではドイツの食料政策はまあまあ機能したようだ。しかし何が差だったのかはいまひとつ明らかにならない。事前準備に加え、統制がよくとれていたということになるのだろうか。日本も本格的な食糧難は終戦後の混乱期であったと聞く。
簡明で読みやすい本だが、いまひとつ物足りない感じが残る。特に食糧安全保障面をもう少し掘り下げて知りたかった。この薄さ(割りに高いけれど。。。)なので仕方がないですが。
ひとつ興味深かったのが、対応策としての自家農園−クラインガルテンに関する記述。
ベルリンのクラインガルテン
1914 44,000箇所 1,540ha(0.035ha/1箇所) → 1924 168,000箇所 6,239ha(0.037ha/1箇所)
クラインガルテンの1haあたり収量 250kg 4人家族の需要の約半分
→クラインガルテンを持っている家族は需要の1.8%=約1週間分をまかなっていた計算。そんなものかな?しかし0.036haで約100坪(追記:計算間違えてた。10坪でした)、相当広いが。
ちなみに日本の耕地面積(≠作付面積と思われる)は460万ha。クラインガルテン並み収量だと920万人分の需要しか満たさない。食料自給率40%で5000万人を自前で養っている(漁業無視)とするとだいぶ差がある。プロの農業とは全然ちがうのだろうが、数字が少し怪しいかも。詳細をみるコメント0件をすべて表示